【アメリカンポークの45年】日本市場を意識した商品開発でチルド中心に飛躍的に拡大
米国食肉輸出連合会(USMEF)日本事務所は1977年12月に開設され、今年で開設45周年を迎える。以来、45年にわたって日米の食肉業界の緊密な関係づくりに注力し、日本の消費者にアメリカンミートの魅力を伝えてきた。キャンペーンやプロモーション、メニュー提案などの活動は、日本市場でのアメリカンビーフ、ポークの需要拡大に貢献するだけなく、「赤身肉」「かたまり肉」「熟成」といった昨今の肉ブームをけん引するなど、日本の食肉消費の拡大、日本の食文化の発展にも大きく貢献してきた。
次の50周年、60周年に向けて、USMEFはどのような役割を担っていくのか、山庄司岳道ジャパンディレクターに聞いた。
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日本市場のアメリカンポークの輸入は1970年に約7,589t(ほか豚くず肉657t)とすでに50年もの輸入実績があり、71年の輸入自由化(差額関税制度の導入)を経て、日本事務所が発足した77年は2.4万tだった(ほか豚の臓器1,035t、くず肉974t)。その後、80年代からトライアル輸入が増え、90年代半ば以降、飛躍的に伸長した。
80年代までは大部分が加工原料向けのフローズンだったが、80年代後半からチルドポークの輸入が始まった。その後、テーブルミートとしての需要が高まり、90年代以降は一気にチルドポークの輸入量が拡大し、2000年代に入るとBSEや鳥インフルエンザによる豚肉需要の増加を背景に、08年の輸入量は34.2万t(チルド・フローズン)とピークを迎えた。
45年にわたる日本市場でのアメリカンポークの歴史にとって大きな契機となったのが、97年の台湾での口蹄疫だ。それまで日本にとって最大の輸入先だった台湾からの供給が途絶えたことで、一気に米国への依存度が高まった。同時に、日本企業が米国豚肉産業に進出またはパッカーとの提携を強化。日本市場に適した品種や飼料の改良を進めるとともに、日本式の4/5ブレイクの採用をはじめ、シングルリブベリー、MMロイン、CCロイン、テンダーロインのスキンオフなど、日本市場を意識した様々なスペックが開発された。
差額関税制度のもと、米国の大規模な生産力を背景に、ロイン系の単品供給が可能だったことから、チルド中心にスーパーや生協、外食チェーンからの需要が拡大していった。近年は、日本市場向けに数多くのブランドポークが開発される一方、バックリブ、スペアリブといった新しいアイテムも輸入され、いまではアメリカンポークの骨付き肉の美味しさも日本の消費者に親しまれ、浸透している。
〈積極的なメニュー提案に注力、毎日の食卓のメニューとして、日常生活に親しみのある存在に〉
日本市場でのアメリカンポークが目指してきた姿は、毎日の食卓のメニューとして、日々の生活に親しみのある存在といえる。キャンペーンの変遷をたどると、「おいしいアメリカン・ミートを、よろしく」(1984年)、「うちらお肉は、アメリカよ」(87年)と、80年代はアメリカンビーフとの合同で実施したほか、「アメリカンポーク・ボナンザ」(88年)では、「アメリカンポークをおいしくヘルシーに」をテーマに、テクニカルセミナーや消費者セミナーを開催した。とくに消費者セミナーには300人が参加し、アメリカンポークならではの美味しさ、日本人の嗜好に合うことなどを訴求した。
90年に入ると、USMEF初の懸賞キャンペーンとなる「アメリカンポークづくし」キャンペーン(99年)を開始。2002年の「このやわらかさ、アメリカ育ち。おいしい.ワケです。アメリカンポーク」キャンペーンでは、アメリカンポークのロゴをカタカナに変更するともに、ローストポークを提案、月別推奨メニューのレシピも開発提案した。その後は「毎日おいしい!」キャンペーン(07年)、「選ばれてNo.1アメリカンポーク」キャンペーン(09年)を展開することで、毎日の食卓の美味しさを訴求した。
その当時からUSMEFではトレードプッシュ型の取組みを強化してきた。08年には「アメリカが日本に教えたくなかった極旨ポーク バックリブ上陸」を掲げたPOSツールを開発したほか、「ぐるなび」にも特設ページを開設、その効果もあり、大手スーパーや外食店で骨付き肉の需要が急拡大した。さらに10年には「アメリカンポーク骨太なおいしさ」をテーマに、バックリブ、スペアリブ、骨付きロースをプロモーションした。これらの取組みを機に、スーパーの精肉コーナーでも日常的に骨付き肉が品揃えされるようになったといえる。
15年には、「ごちポ」(ごちそうアメリカンポーク)をスタートさせ、親しみあるキャラクター「ごちポくん」が誕生し、スーパーの販促をはじめ様々な活動の場に登場するなどして、子どもたちをはじめ消費者にとってアメリカンポークが日常生活に親しみのある存在であることを確立した。その後も、「三ツ星アメリカンポーク」(17年)、豚肉の祭典「Porktober(ポークトーバー)」(21年)などのキャンペーンを実施した。
この45年間のアメリカンポークのマーケティングは、数多くのメニュー提案・レシピ開発にとどまらず、バックリブなどの新しい部位の紹介、低温調理による美味しい食べ方、そしてポークトーバーなど新しい食シーンの提案と多岐に及んでいる。
日本市場でのマーケットシェアNo.1の地位を長年にわたって維持しているアメリカンポーク。これからも輸入ポーク市場の活性化に向け、マーケティングの“新たな一手“が期待される。
〈畜産日報2022年9月14日付〉