無人販売所「食肉ホルモンセンター」拡大へ、“エイジングシート”で発酵熟成肉の製造を迅速に、ポップな店づくりでホルモンを気軽に/ミートエポック
発酵熟成肉の製造技術「エイジングシート」を製造・販売する(株)ミートエポック(本社:川崎市多摩区、跡部美樹雄社長)。同社は2017年9月に安全でかつ迅速な発酵熟成肉を製造することができる日本初の「エイジングシート」を実用化させ、食肉にとどまらず、鮮魚の熟成にまで領域を拡げ、安全な発酵熟成食品を提供してきた。
こうしたなか、この夏には「エイジングシート」で熟成させたホルモンを販売する無人販売所「食肉ホルモンセンター」を東京都新宿区西早稲田にオープンさせた。24時間営業で牛・豚レバやハツ、牛サガリ、豚ハラミなどの発酵熟成肉が全品1,000円均一で購入できるとあって、8月27日のオープンから1カ月が過ぎたいまでは地元の人々から人気を博している。跡部社長に出店の背景や今後の展開を聞いた。
跡部社長は、専門学校を卒業後、10年板前として従事し、フードコンサルタントを経て、2009年に餃子とワインの専門店「KITCHENTACHIKICHI(キッチンタチキチ)」を開業。その後、熟成肉レストラン「旬熟成」や、熟成肉の専門販売店「AGING MEAT & DELICATESSEN 旬熟成」を運営する傍ら、16年にミートエポックを設立した。2012年には「KITCHEN TACHIKICHI」を「立吉餃子」に改名。餃子の百名店にも選出される人気店となっている。
こうしたなか、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響で、跡部社長の飲食店経営も大きな打撃を被ることに。「新型コロナを機に飲食店の経営はかなり不安定な業種であることを痛感した」と跡部社長。だが、悲観するばかりではいられない。跡部社長は、コロナ過の新たな挑戦として、「エイジングシート」を使ったホルモンの発酵熟成の開発に成功させた。
「牛豚内臓は鮮度の劣化が早いが、通常熟成日数の3分の1以下で製造可能な『エイジングシート』を使い、これらホルモンを5~7日熟成させることが可能となった」という。この発酵熟成させたホルモンを家庭でリーズナブルに楽しんでもらうよう、近年、コロナ禍を機にコンビニなどで店舗数が増えている無人店舗で販売することを決断した。「無人型店舗とすることで、昨今の非対面・非接触のニーズに対応するだけでなく、人件費の削減でよりリーズナブルな価格で熟成肉を販売することが可能となる。ここ数年で餃子の無人販売所が全国規模で急拡大しているが、我々は強みである発酵熟成したホルモンで勝負したい」と意気込む。
店内のリーチイン冷凍ショーケースには、牛レバをはじめ、牛サガリ、牛ハツ、豚レバ、豚ハツ、豚ハラミ、豚トロ、鶏ムネ肉など、鶏・豚・牛の発酵熟成肉各種を100g 個食パックで1,000円(税込)で販売している。これら商品は、5日間熟成させたものだ(牛サガリ、豚ハラミ、豚ロースは7日間熟成)。
このほか、10日間熟成した骨付き丸鶏から煮出した「熟成スープ」や、「立吉餃子」(10個入り)も品揃えされ、餃子は売上げの約20%を占めるなど人気を博しているという。「ハツや豚ハラミなど一般的なスーパーではほとんど見かけない商品を揃えている。『エイジングシート』によってアミノ酸が約3倍になるため、旨味がよりアップし、解凍しても美味しさが保たれている。とくに豚レバは臭みがなく、パサつきもない」(跡部社長)と自信を込める。
メインターゲットの主婦が入りやすいよう、店舗はガラス扉で内部は明るくポップなカラーでデザインされている。初めての人でも家庭で気軽にホルモンを楽しむことができるよう、ショーケースのドアにはそれぞれの商品のお勧めの調理例を提案している。
そして、支払いは「賽銭箱スタイル」だ。店内には防犯対策とお客からの問い合わせに対応するためリモートカメラが備え付けられているが、開店以来、トラブルは生じていないという。店内の照明はコンビニと同レベルの700lmに設定しているため非常に明るい。そして、毎朝、スタッフが商品の補充を行うとともに店舗内を念入りに清掃しているという。前述のポップなカラーに加えて、明るく生活感のある店構えが、主婦だけでなく、地元の住人を中心にお年寄りから若い女性まで気軽に足を運んでもらえている秘けつだという。そのため、10坪の店内ながら、多い時には7~8人のお客でひしめき合うこともあるという。
「食肉ホルモンセンター」は、ここ西早稲田店を皮切りに、向こう3年以内に10店舗の出店を目指していく方針だ。「一般的な都心部のスーパーの商圏(半径500~700m)よりも、より地元の方々に日常買いができるお店を目指したい。都心部のファミリー層が多いエリアで展開していく」と跡部社長。商品も発酵熟成したホルモンのほか、「熟成鶏スープ」の鍋セットなど季節メニュー、ニラレバなど豚レバに特化した品揃えもチャレンジしたいと意欲を示す。
〈畜産日報2022年10月13日付〉