訪日客増加で農水省“動植物検疫広報キャンペーン”羽田空港で実施、日本養豚協会など連携、肉製品の持込禁止など注意喚起
2022年10月に入国制限が撤廃され、外国人観光客の受け入れが緩和されたことにより、国際線の再開とともに訪日客が戻りつつあるなか、これから中国の旧正月にあたる春節期を迎えることから、アジア圏内からの入国者数が増加することが予想される。
これを受け、農林水産省は1月20日、羽田空港国際線ターミナルで、動物検疫所および植物防疫所、東京都産業労働局農林水産部、日本養豚協会(JPPA)合同で広報キャンペーンを実施した。
動物検疫では、アフリカ豚熱(ASF)が中国をはじめとしたアジア諸国においてまん延しており、東アジアでASFが発生していないのは日本と台湾のみとなっている。一方で、植物防疫では、かんきつなどの生果実の重大な害虫であるミカンコミバエ種群がアフリカや中東地域で発生地域を拡大するなど、海外において病害虫の発生地域・被害が拡大している。
アジア圏からの入国者が増加する時期に、これらの入国者が持参する畜産物、果実などを介して、日本に家畜の伝染病やミカンコミバエ種群などの植物の病害虫が侵入することが危ぐされる。こうしたなか、春節期に空港を利用する外国人などに対し、違法な畜産物、果実などの持込みを未然に防止することを目的に、広報活動を行った。
当日は、リーフレット入り広報用ティッシュ400セット(日本語・英語表記200セット/日本語・中国語表記200セット)を用意。動物検疫所・植物防疫所の職員をはじめ、法被を着たJPPA会員らが、海外渡航者や入国者などに対して広報用ティッシュを配布しながら声掛けし、肉製品や輸入禁止の植物などの持込禁止について注意喚起を行った。
さらに、動植物検疫探知犬として活躍するビーグル犬の「ロック号」に加え、イメージキャラクター「クンくん」と「ぴーきゅん」も登場し、広報活動が行われた。
検疫探知犬は、2005年に成田国際空港に2頭の動物検疫探知犬を初めて導入して以降、12年からは畜産物などの動物検疫の対象品だけでなく、果物などの植物防疫の対象品を探知する動植物検疫探知犬を導入。現在は、全国の国際空港・海港、国際郵便物を扱う郵便局など23カ所で140頭の探知犬が活動している。
キャンペーンの実施にあたり、小原健児動物検疫所長は次のように述べている。
〈小原健児動物検疫所長〉
2022年6月のキャンペーン実施時と比べて入国者が増加している。2022年7月には(上限2万人という規制緩和のもと)1日当たりの入国者は1万人ちょっとだったのに対し、12月には1日当たり6万人に上っている。コロナ以前のピーク時に比べると、まだ4割程度にとどまってはいるものの、6月以降、増加傾向にある。
このため、動物検疫所としてはフェーズを変えてしっかりと取り組んでいく必要がある。アフリカ豚熱の侵入が危ぐされるなか、生産者の皆様のご心配を受け止め、動物検疫や水際防疫について『やれることは何でもやる』という気持ちで取り組んでいる。
春節前など入国者が増えてくる時期や、地方においては国際便の就航が再開するタイミングなどで同キャンペーンを全国的に実施している。こうした活動を通じて、国民への理解醸成を図るとともに、生産者の皆様と一体となって取り組むことが強いアピールになると考えている。我われの最大のミッションであるアフリカ豚熱の侵入防止にしっかりと取り組んでまいりたい。
〈畜産日報2023年1月24日付〉