「欧州・スペイン産牛肉と羊肉」ネットワーキングレセプション開催、“世界でオンリーワン”な牛肉やラム肉・ヤギ肉アピール、伝統料理調理デモも
スペインの牛肉専門農業団体PROVACUNO(プロバクーノ)とINTEROVIC(インターオビック)は3月6日、日本の食品業界関係者を対象にしたスペイン産ビーフとラムを使った料理の試食、スペインの生産者との交流を行うネットワーキングレセプションを開催した。
開催にあたり、ビーフ&ラム業界を代表してラウール・ブニス氏が参加企業や来日したスペイン企業に感謝の意を述べつつあいさつした。
また、「スペインの畜産業は何千年にもわたる歴史と伝統を持つため、日本の消費者のし好に合致するのではと確信しており、スペインと日本は地理的には離れているものの、肉質が柔らかく、繊細な味でジューシーな肉という共通点があるのではないかと思う」と述べた。
ショートセミナーでは、PROVACUNO国際部長ホセ・ラモン・ゴドイ氏が、スペイン産の牛肉の特徴、畜産業などについて説明した。
それによると、スペインの畜産業の規模は、畜産農場が約15万カ所、と畜場が約240カ所、食肉処理施設が140カ所あると述べた。飼養頭数は約650万頭で、生産量は年間約82万t、うち30万tを輸出している。2020年1月に日本市場へのスペイン産牛肉の輸出が解禁となり、21年の対日輸出量は2,150tとなっているという。
スペインが日本市場に注目する理由は、〈1〉人口密度が高く、総人口1億2,500万人以上〈2〉購買力が高い〈3〉高級牛肉を消費する文化があり、消費がさらに伸びている〈4〉若年層に健康志向がある〈5〉日本の牛肉消費量が増加している〈6〉スペイン、西洋に対しての習慣や文化への関心が非常に高く、プレステージを感じている――と述べた。
牛肉輸出解禁以来、スペインは、EUの中では第3位、世界レベルでは第10位の日本の輸入相手国となった。日本のEUからの輸入量のうち7%をスペインが占め、2021年の輸出額は1,340万ユーロ(前年比556%)だった。2022年2月時点で、43カ所の対日輸出認定施設があり、生後30カ月齢以上の牛肉および加工品の輸出解禁(月齢制限撤廃)を待っている状況だとした。
また、ゴドイ氏は、日本は牛肉消費量に対して国内生産が追い付かず、各国から牛肉を輸入する必要性を述べ、スペイン産の牛肉をプロモーション、アピールしたいとの考えを示した。スペイン産牛肉は世界でオンリーワンなプレミアムだと強調した。
その他の牛肉輸出国と比べて大きく差別化できる点として、〈1〉世界で最も厳しい食品安全基準と規格を持つヨーロッパ生産モデルに準拠している〈2〉牛肉は穀物飼料で肥育されている〈3〉仔牛から成牛に至るまで幅広い種類の豊富な肉が提供可能なこと――を挙げた。
とくに若牛(12~24カ月齢)が日本への輸出の70%を占めているという。このほか、映像を通じて、スペインの牛肉生産は動物へのケア、環境保護、欧州生産モデルを遵守していることや、ジューシーで柔らかい肉というスペイン産牛肉の特徴もアピールし、農場から食卓に至るまでの工程を紹介した。
INTEROVICのディレクターのトマス・ロドリゲス氏は、スペイン産の羊肉とヤギ肉の特徴、畜産業などについて説明した。
EUは世界第4位の羊肉の生産・輸出地域で、羊は5,950万頭、ヤギは1,050万頭の飼養頭数、羊・ヤギ肉の生産量は年間57万6,000t 、輸出量は年間15万7,911t。一方、スペインでの羊肉・ヤギ肉産業は、世界第5位の輸出国で、EU内第1位の生産国になっている。
15万戸以上の羊・ヤギの畜産農家があり、羊・ヤギの飼養頭数は合計1,800万頭(羊1,650万頭、ヤギ260万頭)、羊・ヤギ肉の生産量は年間12万6,810t、輸出量は年間4万9,089t。羊肉・ヤギ肉についてもヨーロッパ生産モデルに準拠し、〈1〉動物の品質、環境への配慮した家畜の飼育と管理〈2〉穀物メインの飼料の管理〈3〉食肉加工施設から店頭までの一貫した管理――という3本柱があると述べた。
さらにスペインでは、農場から店頭に至るまでトレーサビリティを確保し、ホルモン剤や成長促進剤、抗生物質などを一切使わないことで、食品安全性を保障していると付け加えた。また、〈1〉地中海性気候の中で飼育されている〈2〉穀物肥育で若月齢の家畜〈2〉スペイン土着の羊・ヤギの品種を使用――という特徴もあるという。
さまざまな月齢の羊肉を扱っており、とくに、母乳でのみで育てられたベビーラム(ミルクフェッドラム)はスペインでしか生産されておらず、世界に他にはない味と柔らかさを持つとアピールした。さらに、プロモーションツールとして「Exclusive Lamb&Goatfrom Europe」のロゴなどを紹介し、食品安全性やアニマルウェルフェアなどの点においても他国と差別化できると述べた。
調理デモでは、ミシュランの星を持つシェフ2人が、牛のほほ肉を使った伝統的な煮込み料理のエストファーラ、ラムネックを使った伝統的でスペインでなじみのあるハンバーガー、パキートデコルテーロを披露した。
その後、質疑応答では、〈1〉パンデミック後で、観光大国でもあるため、スペインが牛肉を他国に輸出することが難しい状況になることはあるか〈2〉飼料の穀物はウクライナとロシアから輸入しているが、両国の紛争の影響はどうなっているのか――と質問が挙がった。
これに対して、ゴドイ氏は、〈1〉について「スペインの牛肉消費は安定しており、常に多めに生産をしているため、第三国への輸出は問題ない」との見解を示し、「パンデミック期間でも輸出は若干増加しており、観光国であることは影響しない」と回答した。〈2〉については、紛争によって穀物価格に影響があるとし、「これは一時的な状況で、すみやかに解決するようにと願いつつ、牛肉価格への影響が大きくならないように政府対策も期待している」と述べた。
〈畜産日報2023年3月13日付〉