カナダポーク プレスカンファレンスにトレバー・シアーズ プレジデント&CEOが来日、今後の方針を説明
カナダポークは3月17日、東京都港区の在日カナダ大使館でプレスカンファレンスを開いた。
野村昇司日本マーケティングディレクターからは、3月1日付で新たに日本事務所のマーケティングマネージャーに就任した木村憲氏氏が紹介された。また、このほど来日したトレバー・シアーズプレジデント&CEOも登壇し、現地の最新状況や今後の方針などが説明された。
トレバー氏は「おかげさまでカナダポークの対日向け輸出量は増加傾向となっているが、ここ数年はさまざまな外的要因を受け、そのボリュームは若干滞っている。日本はカナダポークにとって重要な市場であることに変わりなく、我々は高品質で安全な豚肉を引続き日本に供給していく心構えだ。そして、過去10年間、カナダポークが増加してきたことは、日本の消費者の皆さまがカナダポークの品質や安全性を理解していただいているものだと認識している。野村氏が尽力してきた13年間においても、カナダポークは非常に良い結果が出せたと考えている。今回、マーケティングマネージャーに就任した木村氏には、カナダポークに新しいスキルや考え方、業界の見方を持ち込んでくれると期待している」と述べた。
新たにマーケティングマネージャーに就任した木村氏は「これまで25年以上、食品業界に携わり、とくに小売り産業に従事してきた。消費者の声を聞きながら、中小のスーパーマーケットの方々と商品開発をしながら、自ら海外から商品を仕入れるなど、消費者の声を反映した商品を販売してきた。
また、直近では大手スーパーマーケットチェーンで商品開発を行ってきた」とこれまでの経歴を紹介したうえで、「今後は、お客様に近いポジションにいた経験を生かし、どのような商品を消費者が求めているか、また非常に高品質なカナダポークをいかに認知していただき、喜んで買っていただくか、こうした点においてこれまでのキャリアを生かしながら、野村氏やカナダポークの方々が行ってきた活動を尊重しつつ、進めて参りたい」と意気込みを述べた。
〈いま一度良いスタートを切るため、業界に向けてメッセージを発信/トレバー氏〉
また、現地の状況について、トレバー氏によると、近年は工場のワーカー不足などコロナ禍の影響に加え、ブリティッシュコロンビア州での大雨による洪水被害、ロシアによるウクライナ侵攻など多くの天変地異に見舞われた。さらに、海上輸送の乱れによって、日本の顧客のもとに商品がオンタイムで届かないといった状況になるなど大きなダメージを受けたと振り返った。一方で、日本は過度な円安となり、これは豚肉価格にすると20~30%の価格上昇となり、リテールとの価格交渉で苦戦を強いられた。また、穀物高や生産コスト上昇などの影響で、カナダ国内の相場も上昇した。「こうしたさまざまな課題を克服していくことが、今後の大きなチャレンジであると考えている」とした。
アジア全体のマーケットについては、「対日向けはロースやミドルパーツなど高価格なアイテムを輸出しており、日本は信頼し得る重要な市場である。現在、カナダにとって日本、米国、中国が主要な輸出先国となるが、中国は政治的要因も含め不安定なマーケットだ。カナダの豚肉産業は全体の70%を輸出に依存しているため、常に多様性を求めており、東南アジアなどまだまだ市場開拓の余地があると考えている」。
アフリカ豚熱(ASF)のゾーニングの問題では、「カナダでは、輸出依存度が高いこともあって従前からASFに対して脅威を感じている。日本とはゾーニング適用をめぐる協議を進めており、このほど農水省で諮問されることとなり、できれば今年中にもソーニング適用されることを期待している」と述べた。
その他、カナダポークの取組みでは、群馬県の全国食肉学校でベンチマークテストを実施するなど、メンバー企業とともに他国産を含め、各々の豚肉の歩留まりなど品質をチェックする体制を整えるといった独自のプログラムを行うほか、メンバー企業と顧客のもとに出向く「カナダポーク勉強会」を実施しており、コロナ禍で中断されていたものの、これから積極的に実施していく方針だとした。
また、「価格だけではないカナダポークの良さを改めて認識してもらうべく、今秋にはカナダビーフ国際機構と共催してイベントの開催を計画している。日本経済が混沌とした状況が続くなか、いま一度良いスタートを切るため、業界に向けてメッセージを発信していきたい」と話した。
〈商品のバックグラウンド、ストーリー性を伝えることが重要/木村氏〉
木村氏は大学卒業後、CGCグループ、イオングループで海外食品調達を担当し、前職はイオントップバリュ商品開発本部海外商品開発部部長代行兼デイリー・生鮮グループマネージャー。3月1日付でカナダポーク日本マーケティングマネージャーに就任した。
木村氏は日本市場でのさらなるカナダポークの拡大に向けて、「小売りにおいては、カナダポークはコモディティ商品であり、値上げがし難い状況下にあるなか、価格だけではなく、商品のバックグラウンド、ストーリー性を伝えていくことが重要だと考えている。価格一辺倒ではなく、商品の背景を伝えながら、日本の輸入業者の方々とより消費者に近い目線で商品開発を行っていきたい。また、カナダポークを販売している小売店の方を現地に招待し、どんな場所で誰が生産しているかを実際に理解してもらったうえで販売につなげてもらえるよう、取り組んでいきたい」と今後の方針を示した。
また、消費者に対しては、コロナの対策・認識が変わるなか、スーパーでは試食などを通じて、消費者と直接接する機会が増えてくることが予想される。そのため、「カナダポークの良さを再認識してもらうためにも、単なる試食だけではなく、なぜおいしいのかといった品質面や、SDGs、アニマルウェルフェアなど環境に配慮した取り組みなど、商品の背景を伝えるアプローチでリスタートを図っていきたい」と述べた。
〈畜産日報2023年3月22日付〉