札幌市・北一ミート、生ハム製造など多様な展開で業績アップ、タナベコンサルティング「食品価値創造研究会」で視察講演会開催
株式会社タナベコンサルティング(本社:東京都千代田区・大阪市淀川区、若松孝彦代表取締役社長)はこのほど、北海道札幌市で「食品価値創造研究会(視察・講演会)」を開いた。
同研究会は、「新しいEAT(イート)マーケットをつくろう!~食品業界の最新事例に学ぶ新市場の創造~」をテーマに、全国の食品市場をターゲットとする企業・食品企業の取り組みから、先進事例を学ぶもの。今期は全6回を予定し、今回はその第4回目の開催となり、次世代の経営者を中心に18人が参加した。
当日は、札幌市に本社を構える北一ミート株式会社(田村健一代表取締役社長)を視察。北一ミートは1979年の創業以来、「札幌から全国へ、そして世界へ。」を目標に掲げ、食肉の加工卸販売を中心に、独自のブランド豚の開発や食品加工、飲食店経営など、「食」に関わる分野でさまざまな展開を試み、業績を伸ばしている。今回は、北一ミートの加工工場、本社工場で札幌の気候を生かした食肉加工(生ハム製造)の現場を見ることができた。
〈サッポロクラフト生ハムを生産、最新設備を取り揃えた本社工場〉
北一ミートでは、札幌の特徴ある気候を生かし、余市産の北島ワインポークを原料に使った「サッポロクラフト生ハム」をはじめ、サルシチョン、パンチェッタ、グアンチャーレ、セシーナ(牛の生ハム)といった食肉製品の生産に取り組んでいる。加工工場内に設置された乾燥室や熟成庫に生ハムが吊るされている光景は、まさに本場スペインを思わせる。
生ハムの製造工程では、ウチモモの血管中の血抜きを行った後、塩漬け・塩抜きの工程は専用の室内で行い、いずれの工程も肉の温度を3.5℃以下の状態に保つことで安全性を確保し、HACCPも取得しているという。
塩抜き後は、室温が20℃弱に保たれた乾燥室に生ハムを吊るし、サーキュレーターで風を当てながら、生ハムで53日間、セシーナで90~100日間、表面を乾燥させる。表面が乾いたらパテを塗って保湿しつつ、さらなる乾燥と熟成を進ませるための加工を施し、熟成庫(ボデガ)で保湿しながらゆっくりと乾燥・熟成させる。
田村健一代表取締役社長によると、夏は生ハムの熟成において重要な期間となるが、暑すぎても、湿度が高くても、生ハムにとっては害虫などのリスクとなる。そうしたなかで、札幌という地は、夏は暑すぎず、湿度もそれほど高くなく、生ハムを熟成させるのに適した気候だという。北一ミートでは、1~4月に仕込みを行い、夏(1回目)を経験させた後、翌年の夏(2回目)に出荷と、夏を2回経験させるという、札幌の気候を 最大限に生かした生産を行っている。
一方、2018年に新設した本社・食肉工場は、スライサーや高速チョップカッター、X線検査機などの最新設備を取り揃えている。加工室内は換気設備技術を駆使し、室内の気圧を制御することで建物の外へ空気の流れを作り、外部からの虫や埃などの異物侵入を防いでいる。また室温、湿度の管理によって、静電気による異物付着を防止するほか、ホース(エアー:オレンジ色、ぬるま湯:青色)は、床に触れないよう天井に設置するなど、衛生環境を整えている。
そのほか、サンテツ技研社製のオーダーメイド解凍庫を導入し、高電圧静電誘導発生装置システムによる特殊な電気エネルギーを与えながら解凍することで、食肉を酸化劣化から守り、変色もなくドリップも少量で抑える、高品質な解凍を実現している。同社では、よりおいしい肉を届けたいとの思いから、この解凍庫を利用し、レストランなどの顧客に解凍品を提供するサービスも行っているという。
このほか、工場内には食肉専用冷凍庫や副産物専用冷凍庫を設置。食肉専用冷凍庫は、内部を2つのゾーンに区切って管理しており、「ダーティーゾーンサイド」では、仕入業者から届いた枝肉や部分肉を段ボールで保管。この際、部分肉などはスライサーにかけやすいよう、適度な温度に調整しているという。一方、「クリーンゾーンサイド」では部分肉を小割・整形・スライス加工した商品を洗浄消毒した専用コンテナで保管している。
〈畜産日報2023年9月12日付〉