【令和5年10月の需給展望 牛肉】スライス需要へのシフトも、物価高で消費は弱いか、相場上げ要因乏しく、前月からほぼ横ばいの予想
9月は全国的に気温がかなり高く、東日本、西日本では記録的な高温となった。
このため、量販店の棚替えとともに強まり出すスライス需要も、残暑の影響であまり動かず、伸び悩んだ。末端も盆休み期間に向けて手当てした在庫を抱えており、在庫消化に注力するため月間通して引合いは弱かった。
9月後半になり、彼岸を境に朝晩の気温が低下、スライス系の動きが少しずつ出てきた。とはいえ、やはり例年よりは静かな商いとなっている。この結果、9月の月間平均相場(東京市場)は、和牛は5等級を除き前月から10~30円程度値上がりしたものの、各畜種・等級で前年実績を100~200円程度下回った。
10月は、日中の気温も徐々に過ごし易くなることでようやく鍋物需要が本格化するとみられる。しかし、物価高による生活防衛意識の高まりや、3連休明け以降はこれといったイベントがないため、単価の高い牛肉にとっては、我慢の時期がもう少し続きそうだ。この時期は共励会も多いため、枝肉相場は上向くものの、小幅止まりとみられる。和牛去勢A5で2,550円前後、和牛去勢A4で2,100円前後と前月からほぼ横ばいと予想する。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、10月の出荷頭数は前年同月比3.7%増の9万5,600頭と予想している。このうち、和牛は前年同月比3.1%増の4万1,700頭、交雑種が3.6%増の2万2,600頭、乳用種が5.4%増の2万9,900頭と見込んでいる。
乳雄に関しては家畜改良センターの個体識別情報から予測すると、前年同月比4%減の1万200頭程度と少ない見通しだ。一方、機構の需給予測によると、10月の牛肉の輸入量はチルドが10.8%増の1万6,100t、フローズンが36.6%減の2万1,600t、合計で22.4%減の3万7,700tとしている。チルドは豪州産の増加によって、昨対比で1割増となるが、外貨高や円安要因で一段とコスト高となる方向だ。
〈需要見通し〉
9月に入って末端の棚替えが進んだものの、残暑の影響でスライス系の需要は弱く、切り落とし関係や単価の安い煮込み系が動く程度だった。外食関係も、夜の客足が戻ってきているが、消費の二極化などで牛肉自体への消費は大きく伸びていないようだ。9月後半になって徐々にスライス系の動きが少しずつみられるものの、例年よりも弱いようだ。
10月は7~9日の3連休のほか、量販店では北海道フェアなどの催事が開かれているものの、引続き生活防衛意識の強まりが重しとなりそうだ。気象庁の季節予報によれば、10月も全国的に気温の高い日が多いとされており、スライス系よりも切り落とし、小間材の動きが先行しそうだ。パーツでは、ヒレはホテル需要で締まっている。これに対して、カタロースやロースは、スライス需要で徐々に動きが出てきても、単価は上がり切れず、横バイとなりそう。ローストビーフ用やギフト関係の仕込みが本格化するのも来月以降となりそうだ。
〈価格見通し〉
末端サイドでは在庫消化が進んでいるが、前述の通り、見込みによる発注を避ける傾向にある。昨年末やことしの春の大型連休もそうだったように、本番ギリギリになって発注が入るようになっている。このため、今月はすでに3連休の手当ては大方終わっているため、来週以降は中だるみが予想される。枝肉相場に関しては、全国肉用牛枝肉共励会をはじめ各地で共励会が開かれるため、10月の月間平均は前月とほぼ横ばいとみられる。和牛去勢A5で2,550円前後、和牛去勢A4で2,100円前後、和牛去勢A3で1,900円前後とみられる。交雑は去勢B3で1,500~1,550円、去勢B2で1,300~1,350円、乳雄B2で850円前後と予想される。
〈畜産日報2023年10月4日付〉