【令和5年11月の需給展望 鶏肉】モモ動き始めるも、相場は緩やかな上昇にとどまる、ムネは年間通じて高値推移か、輸入品は一部アイテムで不足感
2023年10月は例年に比べて気温が高い日が多かったものの、そうは言っても朝晩は秋めいた気候となり、量販店などでは鍋物提案が目立ち始めた。ただ、ことしは野菜価格が高値なこともあって、鍋物需要の盛り上がりはいまひとつだったようだ。このため、モモの動きも比較的落ち着いていた。
本来であれば荷動きが活発化するのに伴い、相場も大きく上向く展開となるが、ことしは上げ基調となるも、10月第1週の640円(日経加重平均)から最終週で657円と、月間を通して緩やかな上げ幅にとどまった。一方で、他畜種が相場高となり、相次ぐ食品の値上げで消費者の生活防衛意識が高まるなか、ムネやササミといったアイテムは、その価格優位性から堅調な荷動きとなり、ムネ相場は概ね横ばいとなった。
この結果、10月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが650円(前月644円)、ムネが370円(前月373円)となり、正肉合計で1,020円(前月1,017円)と小幅な上げとなった。前年比ではモモが48円安、ムネで7円安と引続き前年価格には届かなかった。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラー生産・処理動向調査によると、11月の生体処理羽数は前年同月比2.3%増、処理重量が0.4%増と予測、12月も羽数が1.6%増、重量が0.2%増と年内は増加基調で推移すると予測している。
地区別にみると、11月は北海道・東北地区は羽数(4.0%増)、重量(2.4%増)ともに増加を見込む半面、南九州地区では羽数(1.2%増)は増加するものの、重量(0.9%減)はわずかに前年を下回るとしている。ただ、昨シーズンは過去最悪の発生件数に上った高病原性鳥インフルエンザも、今シーズンは家きんでの発生はまだ確認されておらず、基本的には順調な生産体制が続くものとみられる。
農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によると、11月の鶏肉輸入量は21.1%減の3万9,300tと2割減少すると予測。ブラジルのサンタカタリーナ州における鳥フル発生の影響で同国の輸入量減が予想され、日本食肉輸出入協会の予測によれば、11月のブラジルの輸入量は30.2%減・2万5,200tにとどまる見通しだ。しかし、すでに輸入停止措置が解除されていることもあり、12月の需要期に向けて、輸入量は回復していくことが予測される。
〈需要見通し〉
11月に入り、「文化の日」を含む3連休は、全国各地で夏日を記録するなど異例の暑さとなった。ただ、来週以降は気温低下が予想され、モモ、手羽元の動きはいっそう強まっていきそうだ。一方で、「現状、モモは特売に使われるケースが多い」(関東の荷受筋)との声に加え、各社、荷動きが鈍かった夏場に固めた凍結品在庫が多いことから、相場を押し上げるほどの勢いはないようだ。
また、このまま生産が順調に続き、年末に向けて凍結品在庫の消化を進める動きが強まれば、生鮮で余剰感が出てくる可能性もありそうだ。ムネは凍結品在庫が少ないなかで、相場が若干下がったタイミングで固める動きもみられる。輸入品については、ブラジルの輸入量減でモモ角切りなどアイテムによっては不足感が強まっており、タイ産にシフトする動きも。
〈価格見通し〉
11月は日経加重平均でモモ662円、ムネ371円でスタートした。モモはここから年末に向けて上げてくるものとみられるが、前述の通り、大きく上向く可能性は低く、基本的にはジリ上げ展開が予想される。これらを勘案すると、月間平均では、日経加重平均でモモが670~680円(農水省市況680~690円)、ムネで370前後(380円前後)と予測する。ムネは引続き横ばいで推移し、ことしは年間を通じて高値水準を維持するものとみられる。
〈畜産日報2023年11月7日付〉