「2023年度鮮度保持フィルム包装食肉のJAS規格化検討会」開催、2024年度に規格案提出へ、フィルムの条件とPCでの包装を第三者認証で保証、信頼性の向上に寄与
神戸大学はこのほど、東京都港区のアジミックビル会議室で「2023年度鮮度保持フィルム包装食肉のJAS規格化に向けた検討会」を開いた。
海外では鮮度保持フィルム、いわゆるスキンパック包装による食肉が広く流通されているが、トレーパックが主流の日本ではこうした鮮度保持フィルム包装食肉に関する鮮度保持効果などの定義がない。
この検討会は、鮮度保持フィルム包装食肉の保存や管理の状態を定めたJAS(日本農林規格)規格化に向けて、業界関係者や有識者から意見を聞き、規格案を作成するために設立されたもので、今後も検討を重ね、2024年度中に規格案を農水省へ提出する予定だ。
この日は、オブザーバーとして参加した農林水産消費安全技術センター神戸センター(FAMIC神戸)規格検査課の安藤峰央主任調査官がJAS制度の概要と鮮度保持フィルム包装食肉のJASについて説明した。
安藤調査官によると、国内でのスキンパック包装食肉の現状について「消費期限の延長が可能な方法もあるものの、フィルムの性能に基準がなく、包装の特性から肉色が悪く見え、この包装方法の普及が進んでいない」と指摘した。
そのうえで、鮮度保持フィルム包装食肉のJASの概要として、
〈1〉鮮度保持フィルムの条件(=酸素バリア性および水蒸気バリア性が一定水準以上のフィルムを使用して真空包装した食肉)
〈2〉一定水準の衛生管理がなされたパックセンターでの包装(=HACCPに基づく衛生管理と、管理状況の確認のための検査の実施)
――を第三者認証で保証するものとした。
これにより、「スキンパック包装の信頼性の向上に寄与するほか、保存期間の延長効果によるフードロス削減に寄与する」といった利点があると説明した。さらに、輸出面の利点としては、期限延長効果によって輸送時間が短い東南アジア圏にはチルドでの輸出が可能になるほか、輸出相手国でカット施設が不要になるという。
国内向けについても、JASマークによる安心感の付与や、ミールキットに組み込むことで食肉の保存期間に縛られることなく期限の設定が可能といったことなどを挙げた。
また、神戸大学農学研究科の上田修司教授は、「鮮度保持フィルム包装食肉のJAS規格化提案」と題して、JAS化による利点と課題、欠点を説明した。
このうち、小売り側の利点としては、「賞味期限切れによる廃棄ロスの削減」「商品の品出し、パック作業の省力化」など、食肉メーカー側の利点では「衛生管理の向上に向けた取組みのPR」「季節的な需要供給のアンバランスの平準化」などを挙げた。
その一方で、畜種ごとの課題として、牛肉・羊肉・鯨肉は「酸素を遮断することによる赤身肉の暗褐色化」、豚肉は「導入コストの増加による利益率の低下、豚熱による輸出停止」、鶏肉は「嫌気性細菌(サルモネラ、カンピロバクター)の影響」が考えられると説明した。
さらに、製造側の欠点として、「スキンパック包装用機械(単発機、連続機)の導入が必要」「フィルム材質と台素材の組み合わせによって複数のスキンパック包装が存在する(トレーによるスキンパック包装、フラットスキンパック包装、疑似スキンパック包装=従来の真空包装機で紙の台紙を使用)」ことを指摘した。
上田教授はこのほか、スキンパック包装による賞味期限の延長効果として、牛肉ロースの場合は22日(4℃保存、トレーパック5日、真空包装11日)、牛肉ももは16日(4℃保存、トレーパック5日、真空包装8日)、豚肉ロースは26日(4℃保存、トレーパック6日、真空包装12日)になると紹介した。
このほか、検討会ではノンバリア包装フィルムとハイバリア包装フィルムで冷凍保管された牛肉(ロース)の食べ比べも行われ、それぞれのうま味やコク味、脂の風味の違いを確認した。
〈畜産日報2023年12月26日付〉