〈令和6年1月の需給展望 牛肉〉年末年始の末端需要は期待値に届かず、今後は切り落としにシフト、上旬はご祝儀相場も中旬以降は下げ局面に、価格は前年並みか
新型コロナウイルス感染症が5類に移行してから初めての年末年始となったが、肝心の牛肉の末端需要は期待したほどではなかったようだ。
本紙・畜産日報のヒアリングによると、量販店では地方でも苦戦した店舗があったほか、都心部は1月1日から営業した企業では福袋のついで買いや、競合他店が休業していた影響で年始の売上げは昨対で1割弱増加したところもあったという。
一方、業務用筋によると、忘年会やインバウンドの回復もあり外食関係の需要は前年実績を上回ったようだが、期待したほどの伸びではなかったとの声が多い。また、小売り・外食ともに海産物に需要がシフトしたことを指摘する声も多く、「カニやイクラなど、ロシアのウクライナ侵攻や中国の禁輸などで安売りがあり、消費が流れた」(関東の量販店バイヤー)としている。
1月は3連休を過ぎると、正月休みの出費増の反動で節約ムードが一層強まる流れにある。これに、前年からの生活防衛意識の強まりも相まって、その傾向は一段と強まりそう。末端需要はロース、カタロースのスライス系よりも、スソ物を中心とした切り落とし系にシフトするとみられる。
そのため、1月2週目まではご祝儀相場で前月末の水準を維持するものの、3週目以降は下げ基調となり、前年価格を下回る可能性もある。月間加重平均では和牛去勢A5で2,500~2,600円、同A3で2,000円とみられる。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、1月の成牛出荷頭数は8万3,400頭(前年同月比2.2%減)で、このうち和牛は3万6,000頭(0.1%減)、交雑種は2万500頭(2.3%増)、乳用種が2万5,600頭(4.4%減)と予測している。牛個体識別情報から予測すると、乳用種去勢の出荷は9,800頭と1万頭を割る可能性がある。
また、和牛はほぼ前年並み、交雑はやや多めの出荷だが、足元の消費動向からみると、供給は過剰気味ともいえる。一方、機構の予測によると、1月の牛肉の輸入量はチルドが1万5,600t(2.9%減)、フローズンが2万1,000t(11.8%減)としている。
いずれも前年割れの見込みだが、豪州産チルドの場合、現地港湾ストの影響で入船遅れが続いており、先月後半に通関する予定だった貨物が年明けに入荷してくるため、モノによっては在庫がダブついてくる懸念もある。
〈需要見通し〉
1月前半は初荷の関係で多少の手当てが見込まれるものの、総じて年末年始と3連休の需要が期待したほどではなかったため、短期的なものに留まるとみられる。実際に年初の末端からの引合いは弱いもよう。
パーツも、カタロースの荷動きは前月の反動もあり、全畜種で落ち込んでおり、ロースやモモ系は切り落とし関係で交雑とホルスの動きがマズマズで唱えも小確りしているが、和牛は弱い。今後は不需要期に入るうえに物価高で節約ムードがさらに強まることから、単価の安い切り落とし用のスソ物やスネなどが需要の中心となり、高級部位の需要は一段と冷え込みそう。ただ、一方で政府が2023年度補正予算で措置した「和牛肉需要拡大緊急対策事業」の関係で枝を集める動きもあるという。
〈価格見通し〉
和牛の一部銘柄や特定評価のあるメス、モモ抜けが良い個体などは前月並みの価格を維持するとみられるが、少なくとも年度末までは、需要面で明るい材料は見当たらないため、来週以降は和牛中心に弱気の展開となりそうだ。
また、東京市場の場合、1月から10月にかけて大動物ライン(Cライン)の改修工事の影響でと畜頭数が減るものの、その分、搬入物が増えるとみられ、全体の取引相場には特段の影響はなさそうだ。したがって、月間加重平均では和牛去勢A5で2,500~2,600円、同A3で2,000円、交雑種去勢B3で1,550円前後、同B2で1,400円前後、乳用種去勢B2で800円前後とみられる。
〈畜産日報2024年1月12日付〉