【令和6年2月の需給展望 牛肉】需要低迷期で好転材料少なく相場は弱もちあいの予想、和牛・国産牛ともにスソ物は堅調、高価格部位厳しく

年末年始の牛肉市場は、新型コロナウイルス感染症の5類移行によって、焼肉をはじめ外食業界は前年実績を上回る売上げとなるなど、外食需要の回復がみられた。しかし、小売関係が振るわず、カニ、イクラなど水産品へのシフトや、暖冬の影響で鍋物需要が伸び悩んだ。このため、1月の枝肉相場(東京市場)は、補充買いなどで前半までは概ね横ばいで推移し、後半は出回りが少ない和牛の下位等級を除いて緩んだものの、月間平均では和牛、交雑ともに前年価格をやや上回った。

2月は2つの3連休と、うるう年の関係で「肉の日」が2回あるほか、流通企業の決算セールも展開される。しかし、節約志向の強まりから単価の高い牛肉にとって、これらイベントがどこまでプラスになるか不透明だ。部位については、切り落としや煮込み用のスソ物は堅調だが、暖冬の影響で引続き鍋物需要が弱く、スライス商品の需要は苦戦を強いられそうだ。このため、2月の枝肉市況(東京市場)も全体的に弱保合となり、和牛去勢A5で2,550円前後、交雑去勢B3で1,500円前後とみられる。

〈供給見通し〉

農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、2月の出荷頭数は前年同月比2%増の8万5,000頭で、このうち和牛は同6%増の3万8,100頭、交雑種が同6%増の2万700頭、乳用種が同5%減の2万4,900頭としている。乳用種のうち去勢について、家畜改良センターの牛個体識別情報から予測すると、2月は同7%減の1万頭とみられる。また、和牛は春先需要に向けて出荷控えの動きが強まる可能性が高い。

一方、機構の需給予測によると、2月の牛肉の輸入量は、チルドが前年同月比2%増の1万3,500t、フローズンが同16%減の2万800tと予想している。豪州農水林業省によると、豪州産チルドの1月の日本向け船積み数量は34%増の6,605tに上っているが、現地の港湾労働争議による入船遅れと工場のクリスマス休暇の影響で、ここにきて在庫がタイトになっている。

〈需要見通し〉

1月下旬から2月上旬は一年で最も寒い時期だが、全国的に暖冬の影響で鍋物需要が伸び悩んでいる。複数の流通企業にヒアリングしたところ、1月の精肉部門の売上げは前年割れとなったところが多く、牛肉の場合、スライス関係の動きが不振だったという。ただ、鍋商材が苦戦する半面、ステーキや焼肉関係は比較的よく動いたという企業もある。

気象庁の季節予報によると、2月は全国的に平年よりも高い気温が見込まれているため、スライス需要は厳しいと予想される。今後、流通企業では決算セールが行われるが、牛肉の場合、牛小間や切り落とし、煮込み用が品揃えの中心と予想される。このため、和牛・国産ともにウデ・モモ、スネのスソ物中心の動きとなり、ロインやカタロースの高級部位の動きは苦戦を強いられそうだ。また、輸入牛もコスト高で販促を打ち難いとされ、利益を取るため末端からの引合いは交雑の下位等級やホルスにシフトする可能性もある。

〈価格見通し〉

1月後半の枝肉相場は、補充買いが一巡したことと不需要期入りで下げ基調となり、和牛去勢A5の場合、上旬の2,600円台から、下旬には2,500円台にまで値下がりした。2月は需要とともに相場も低迷するため、基本は和牛の高級物を中心に弱含むとみられる。出荷頭数の少ないホルスは輸入牛との兼ね合いで引合いが強まる可能性もあるが、交雑種の下位等級も安値にあるため、枝肉・パーツ相場を押し上げるかは微妙なところといえる。このため、月間平均相場は、和去A5で2,550円前後、同A4が2,200円前後、同A3が2,000円前後、交雑去勢B3が1,500円前後、B2は1,300円前後、乳去B2(搬入)が880円程度と予想される。

〈畜産日報2024年2月8日付〉

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