政府、23年度補正で和牛肉インバウンド消費喚起支援事業、訪日外国人向けフェアやツアー、海外での広報宣伝などの取組みを支援
物価高騰による消費者の生活防衛意識の高まりで和牛肉の需要が低迷するなか、農水省はインバウンド(訪日外国人)を対象にした消費拡大を支援する「和牛肉インバウンド消費喚起支援事業」(2023年度~24年度)を実施する。23年度補正予算で措置した「和牛肉需要拡大緊急対策事業」(50億円)の3本柱のひとつで、旅行会社等と連携し、訪日外国人を対象とした、企画旅行(ツアー)をはじめ、ホテルや飲食店でのフェア、体験イベントなどの企画で和牛肉を提供する場合や、海外での広報宣伝の取組みに対して助成する。前述の緊急対策事業で実施する▽和牛肉新規需要開拓支援緊急対策事業▽和牛肉消費拡大・理解醸成緊急対策事業――で主に一般消費者向けの需要喚起を図りつつ、この事業を通じてインバウンド向けの需要喚起策を講じ、ひいては輸出拡大につなげるねらいだ。
事業実施主体は(一社)日本畜産物輸出促進協会(井出道雄会長)が担う。現在、事業に参画する旅行会社などの募集に向けて準備している。
和牛肉インバウンド消費喚起支援事業は、〈1〉インバウンド等向け和牛肉需要拡大〈2〉帰国後の和牛肉消費機会の創出――の2つの柱で実施する。〈1〉では、旅行会社などが、インバウンドを対象に和牛肉を提供するツアーや体験イベントなどを計画する際に、その計画策定や広告宣伝にかかった経費に定額補助を行う。計画はツアーやレストランのフェア、ホテルの宿泊プランなどさまざまな企画が想定されるが、和牛肉を1人当たり1回、もしくは1泊当たり100g以上を提供することが要件となる。そして、実際にツアーなどで和牛肉を提供する場合、「割引費用」として2千円が補助される(150g以上の提供は3千円、ツアー代総額の20%が上限)。
一方、〈2〉では、訪日外国人が帰国した後も現地での和牛肉の消費拡大を図るため、ホームページ、スマートフォンアプリなど広報コンテンツを制作するための経費に定額補助を行う。ここで制作した資材は、〈1〉のツアー等で展開するなど、〈1〉と連携することを要件としている。
農水省によると、これら事業の効果測定に当たっては、ツアーの予約システムなどを通じて、訪日外国人の参加人数を把握するという。これまで外国人観光客向けに和牛肉100g以上を提供するような企画のツアーもほとんどなかったという。全国各地の銘柄牛などを上手くプランに組み入れることで、和牛肉の需要拡大とともに、地方誘客や観光消費につながることが期待できそうだ。
〈畜産日報2024年2月27日付〉