【令和6年7月の需給展望 鶏肉】夏本番に向けムネ需要高まる、価格優位性から底堅い需要つづく

〈モモは季節なりに下げ基調、ムネ横ばいで反転の可能性も〉

6月の鶏肉需給は、全国的に梅雨入りが遅れ、気温が高い日が続いたことで、月間を通してムネの引合いが強まった。副産物関係も手羽先を中心に堅調な荷動きとなった。一方で、モモは相場が下落し始めたことで量販店の特売用などスポットでの動きはあったものの、基本的には不需要期にあたることから、落ち着いた商いとなった。相場展開をみると、ムネは概ね350円台で推移し、大きな上げ下げはなかった。モモは中旬以降、620円を下回る日が多くみられ、最終日(29日)には611円まで下落した。この結果、6月の月間平均は日経加重平均でモモが618円(前月630円)で一段下げ、ムネは354円(354円)で前月並みとなり、正肉合計では972円(984円)だった。前年同月比では、モモが126円安、ムネが51円安となった。とくにモモは、前年が3～7月まで700円を超える高値だったこともあり、前年価格を大きく下回っている。

［供給見通し］

日本食鳥協会がまとめたブロイラー生産･処理動向調査によると、7月の生体処理羽数、処理重量はともに前年同月比で0.8%減少すると予測している。地区別にみると、北海道･東北地区は羽数4.6%増、重量3.4%増とする半面、南九州地区は羽数5.3%減、重量3.7%減と見込んでいる。地区によって増減にバラつきはあるものの、全体では微減にとどまりそうだ。だた、8月も羽数4.5%減、重量2.5%減と予想されており、夏場の天候によっては増体への影響も懸念されるところ。

一方、農畜産業振興機構の需給予測によると、7月の鶏肉輸入量は5.1%増の4万9,100tと予測している。ことしに入ってから5万tを超える輸入量で推移していたが、7月は5万tをわずかに割り込む見通しだ。それでも国内の底堅い需要を背景に、引続き安定したボリュームが入ってくるものとみられる。

ただ、円安の進行など為替の影響で調達価格は上昇しており、とくにタイ産モモ角切り(BLK)は500円を超える高値を付けている。こうしたなか、先物についてもコスト高が続く見通しで、このまま国産との値差が縮まれば、国産へシフトする流れがさらに加速することも予想される。

［需要見通し］

6月は全国的に気温が高く、夏場に向けて需要が高まるムネや手羽先の引合いが強まった。7月も引続きムネ中心の荷動きとなることが予想されるが、関東甲信でも梅雨入りしたことで、「一時期に比べ勢いが失速した感がある」(関東の荷受け筋)との声も。そうはいっても牛肉や豚肉の価格が高騰するなか、食肉のなかでも価格優位性のある鶏肉の需要は、底堅く推移するものとみられる。モモは月初に入っても依然として停滞感があるものの、ムネや副産物などのパーツ在庫が少ないため、フルセットで仕入れる動きもみられるようだ。

凍結品については、ムネは輸入品からのシフトもあって引合い自体は強いものの、モノが出難くタイトな状況にある。モモは年末に向けて凍結品在庫を確保する動きよりも、いまは生鮮で売り切る向きが多いようだ。

［価格見通し］

1日の相場は日経加重平均でモモ615円、ムネ353円でスタートし、翌2日にはモモ609円(前市比6円安)、ムネ352円(1円安)となった。モモはこのまま季節なりに下げていくと見込まれ、瞬間的には600円を割る展開も考えられる。ムネはいまの需要環境をみても下げ要因は少なく、基本的には横ばいで推移することが予想される。ただこの先、輸入品からのシフトが強まれば、反転に向かう可能性も高い。

これらを勘案すると、7月の月間平均は日経加重平均でモモが600～610円(農水省市況620～630円)、ムネが350～360円(360～370円)と予想する。

〈畜産日報2024年7月4日付〉