〈豚肉 令和6年9月の需給展望〉出荷増加で豚価は前年下回るも気温次第

〈秋冬商材は来月以降 前半は600円台維持も、その後は500円台後半の見込み〉

8月後半の豚肉の需給は、学校給食の再開で再びスソ物中心に引合いが強まることで枝肉相場も上昇に転じるとみられていた。しかし、猛暑や南海トラフ地震臨時情報、台風などの影響で末端消費が振るわず、中間流通・末端ともに一定の在庫を抱えることとなった。この結果、8月下旬は台風の影響で出荷頭数が5万頭を割ったにも関わらず、枝肉相場はこれまでの700円台(上物税抜き、以下同)から600円台前半まで下げ、前年価格を下回った。

9月は例年、前半は残暑の影響で出荷頭数が少なく、後半は気温の低下に伴って頭数が増えてくる流れにある。しかし、前年と同様、猛暑や台風などが出荷にどう影響を及ぼすか不透明にある。2回の3連休で1日当たりの出荷頭数が多くなることも相場を読み難くしている。少なくとも、安定した出荷が続けば、来週末までは600円台前半を維持するものの、後半は500円台半ばまで下がりし、月間平均としては税抜きで570円前後と予想する。

〈供給見通し〉

農水省が8月21日に発表した肉豚出荷予測によると、9月の全国出荷頭数は前年同月比2%増の132.3万頭と予想している。ことしは稼働日が19日間のため、1日当たりの平均出荷頭数は6万9,632頭(前年6万4,640頭)に上る計算だ。一部の産地ではこの時期に起こりやすい豚丹毒の発生がみられているが、市場関係者によると、夏場前にみられた暑熱による増体不良も少しずつ改善がみられているという。しかも、月後半は稼働日が少ないため、後の出荷がつかえないよう、なるべく早出しする出荷者もあるという。

農畜産業振興機構の豚肉需給予測によると、9月のチルド豚肉の輸入量は同14.3%増の3万500t、フローズンが同48.8%増の5万2,100tとしている。チルドの8月生産玉については買付けをやや増やしたとみられているうえに、台風による入船遅れで先月末の入荷分が9月にズレ込むなどして、この予想量を上回る可能性もある。

〈需要見通し〉

現状、末端需要は好調とまではいかないものの、夏場にかけてほとんど動いていなかったバラ、カタロースの荷動きは悪くはないようだ。対照的にウデ・モモのスソ物については、盆休み期間中の在庫を持ち越した企業が多く、学校給食が再開した後も思った以上に玉が動いていないもようだ。

気象庁の8月31日から9月30日までの1カ予報によると、全国的に気温が平年よりも高くなる見込みとしている。また、スーパーでは9月から日配品とともに秋冬向けの棚替えが行われるが、昨年と同様、残暑が長引く見込みから、とりあえず秋冬商材の“顔出し”をしても、本格的なコーナー化は10月中旬からを予定している企業が多いようだ。このため、当面は焼肉や切り落とし、小間材、ひき肉といった「季節商材を問わず、売れるものをしっかりと売り込む」(北関東のスーパーのバイヤー)など、それなりの実需が期待される。スソ物・ひき材だけでなく、バラ、カタロース、スペアリブなどの引合いも継続しそうだ。

〈価格見通し〉

昨年9月前半は残暑の影響で1日当たり5万頭台の出荷となった日もみられた。この影響で、相場は税抜きで700円を上回る異例の高値相場が継続した。しかし、下旬になると6万頭台半ばまで出荷頭数が回復したことと、この間の高値相場疲れから、500円台後半まで急落した。ことしも気温や台風など天候次第だが、生産者サイドの在庫は多いため、出荷が順調に増えてくれば、前年のような高騰はないとみられる。結果、9月前半は多少の増体不良があったとしても税抜きで600円台前半を維持するとみられる。そして、後半には出荷頭数の増加で600円を下回るとみられるが、緩んだとしても500円台を維持するとみられる。月間平均としては税抜きで570円前後(税込み620円前後)と予想する。

〈畜産日報2024年9月4日付〉