スイーツ系アイスに新局面、「自分へのご褒美」から「家族や仲間と」への流れ顕著に
2015年に「冬アイス」という言葉が登場。その後メーカーが本格的に仕掛け、コンビニエンスストア(CVS)最大手のセブン-イレブンも“冬アイス発表会”を行うなど社会的な話題となった。その中で、濃厚なスイーツ系アイスはけん引役を担い販売を押し上げてきたが、3年経ち、「冬アイス」の伸び率が鈍化傾向になってきていることが理由だ。
ただ、「伸長余地はある。単価が税込200円を超えると商品がよくても消費者の支持を得るのは難しく、購入単価アップによる伸長はもう厳しいが、購入個数のアップはまだ進められる」(メーカー)との見方があり、安定成長に向けて今年は購入個数・回数を増やしていく取り組みが重要になっている。
「食べたくなるシーンを増やす」個数・回数アップの課題は、アイスに限らず他の食品分野でも共通のテーマであり、ここにマイナス温度帯のアイスが、いかなる手法で挑んでいくのか関心が集まる。
〈TV番組で「冬アイス」に注目、プレミアムアイス・スイーツ系アイスが伸長〉
「冬アイス」は、2015年12月にマツコデラックスのテレビ番組で取り上げられたことを機に注目。その年の2月に衝撃デビューしたハーゲンダッツジャパン「華もち」の効果が大きく、プレミアムアイスの冬場(11~2月)の急激な伸びが、冬アイス盛り上がりの数字的根拠となった。
2016年に「11月15日冬アイスの日」を日本アイスマニア協会が制定し、2017年にメーカーが本格的に仕掛けに着手、同年12月にはセブン-イレブンが行った冬アイス発表会で、小売りからの期待値も高い商材となった。アイス市場の冬期の伸びについては2015年から高くなっており、09年比で15年~17年がいずれも30%強伸長、このうちプレミアム品とスイーツ系の個食が3年とも40%近い伸びを維持し、CVSオリジナルの中間・高価格商品の貢献もあり、単価アップによる市場規模の伸長が顕著に表れた。
〈「自分へのご褒美」から「家族や仲間と」へ〉
ただ、3年経つと伸び率縮小は避けられず、単価アップも200円のボーダーラインが見え始め、冬アイスをさらに伸ばしていくためには新しい視点が必要になっている。
冬の売上比率が高いプレミアム代表のハーゲンダッツは、消費者コミュニケーションを、これまでの「自分へのご褒美、癒し」から、家族や恋人など「大切な人と食べる」へ切り替え、盆や正月、季節行事、記念日など人が集まる時に食べる「機会を増やす」マーケティングにいち早く取り組んでいる。
この成果はフレーバー品の当たり外れによるところが大きいものの、「一人だけのシチュエーションだけでなく家族、友人、仲間と幸せな時間を過ごす場面へ広がりを見せている」(同社)と、誰かと食べる=個数アップへ、地道につながっているようだ。
今年は他社も、商品サンプリング時に家族向けイベントを各地で予定するなど、食べる機会、購入個数を増やすことを意識した取り組みがみられる。この間冬アイスの伸びを支えてきたスイーツ系アイスはCVSが主戦場であり、CVSオリジナルで完成度が高い商品が既に多数あることから、各メーカーのブランド商品は定番品のリピート率を上げることと、「1回買ってみよう」という気持ちにさせる話題の新商品でのトライアル購入獲得が必要になってきている。
「大切な人と食べる」は「大切な人へあげる」も同様で、シニアが家に遊びに来る孫のための「買い置き需要」にも似ており、冬場においてはスイーツとして満足感の高いアイスや世間で話題のアイスを、家族や仲間の手土産にしたり、みんなで食べるシーンを作ることを今以上に進めれば、購入個数のアップにつながりそうだ。
また、冬に暖かい部屋で食べるチョココーティングバニラアイスには、「冷たさによる覚醒効果もあれば、カカオポリフェノールによるリラックス効果もあり、副交感神経の働き過ぎを整えるのに最適」というメーカー調査データもあり、冷凍菓子ならではの機能的価値を発信することで、今まで冬に食べていなかった人も新たに取り込み、購入個数・回数アップを実現することができそうだ。