“茶畑から茶殻まで”一貫体制、「茶産地育成事業」を拡大 伊藤園〈サステナビリティの取り組み〉
同事業は、社員が茶産地の人とともに茶葉の品質向上に取り組む「契約栽培」とともに、01年からは耕作放棄地などを活用し、大規模茶園を造成し、畑づくりから茶葉を育成する「新産地事業」の2つから構成されている。その規模は、15年に茶園面積1034ha、生産量3630tだったが、18年は1609haで5906tになる見通し。長期目標では2000ha、6200tを目指す。
特徴は、九州5県に拡大しているほか、オーストラリアでも展開するなど、普遍性が高く応用可能なビジネスモデルであること。そして、地域での女性活躍・後継者・新規就農者・高齢者の活用など挙げられる。また、同社としては、原料調達コストの低減、高品質茶葉の安定的な確保のほか、IT活用による摘採時期の最適化などが期待できる。
耕作放棄地対策や肥料・農薬の適正な使用などによる環境保全型農業の推進、および地域雇用の創出にもつながっており、経済・環境・社会の要素を統合した取り組みだ。
〈持続可能な資源利用「茶殻リサイクルシステム」〉
「お~いお茶」をはじめとする日本茶飲料の販売拡大に伴い、製造過程で排出される茶殻の量も年々増加している(17年度の排出量は約5万9200t)。
その中で、同社は独自の技術「茶殻リサイクルシステム」を確立し、茶殻を原材料の一部に使用し、畳や建材、樹脂製品、「お~いお茶」のペットボトル用段ボールまで、これまでに約100種類の茶殻リサイクル製品を関係会社と共同開発している。昨年は、「茶殻配合紙ノート」の発売や、表面温度上昇抑制効果があるFieldChip「Greentea」(フィールドチップ グリーンティー)をミズノと共同開発した。身近な茶殻配合製品の開発に積極的に取り組み、「茶畑から茶殻まで」の一貫した環境経営を行うことで本業を通じた社会貢献活動を推進するもの。
もともと、工場から排出される茶殻の水分含有率は85~95%と高く、温度も高いため、そのままでは腐敗しやすいという問題点があり、リサイクル素材として使うには乾燥などの前処理が必要だった。一方、茶殻は昔から家庭で、消臭効果やお茶の香りを生かしながら無駄なく利用されてきた。
そこで、伊藤園は、茶殻に残存する緑茶ポリフェノールなどの有効成分に着目しながら、その活用法を長年模索してきたという。
茶殻をリサイクルして生まれたベンチ
その結果、水分を含んだ茶殻をそのまま製造工程に投入するシステムの開発に成功し、茶殻のもつ効果を、生活空間に有効利用できるようになった。例えば、茶殻を木質ボードに配合した茶配合ボードは、消臭効果をもつ畳床として活用され、プラスチック樹脂に茶殻を配合した茶配合樹脂は、抗菌効果がある日用品に加工されている。茶殻に“有効資源”としての新しい生命を与える取り組みだ。
〈食品産業新聞 2018年10月15日付より〉