機能性表示食品、制度発足から4年で2000億円市場に拡大 課題は認知度
2015年4月にスタートした機能性表示食品は今年4月で制度開始から5年目を迎えた。4月17日現在の届出件数は1785件となっており、特定保健用食品の許可件数1068件を抜き、この4年間で飛躍的な成長を遂げた。18年の市場規模も2000億円近くに到達する見込みで、健康食品市場の一大勢力として存在感を高めている。
特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品に続く第三の保健機能表示制度として始まった機能性表示食品は、トクホと比べた場合の参入障壁の低さで、制度開始以来、右肩上がりで拡大を続けている。
〈トクホとの違いは?〉
トクホは表示されている効果や安全性について国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可するため発売まで数年がかかる商品もある。一方、機能性表示食品は、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示しており、販売前に消費者庁に届出し受理されれば販売が可能となる。機能性表示食品は「最終製品を用いた臨床試験」または「最終製品または機能性関与成分に関する研究レビュー」が提出されれば表示可能なため、最終製品を用いたヒト試験による臨床試験が必須となり多額の資金を要するトクホと比較し、開発費を抑えられる点も新規参入が進んだ理由だ。
〈「消費者、行政、企業『三方よし』の制度」とも〉
会員の半数が何らかの形で健康食品を販売している日本通信販売協会は去る4月23日に都内で開いた「機能性表示食品4周年祝賀会」で、同制度を「消費者、行政、企業『三方よし』の制度」と評価した。
機能性に関する科学的根拠の届け出は必須であるため、消費者にとっては「いわゆる健康食品」とは次元が違う、高いレベルの商品を選択でき、また、行政には販売者の情報を保有しているためトラブルの際、迅速な対応が可能などのメリットがある。
一方、企業には、わかりやすい表示で差別化、収益の拡大に寄与できるといった利点がある。ファンケルがいわゆる健康食品として販売していた「えんきん」は、機能性表示食品としてリニューアル以降、売上が4.3倍に拡大しており、ヒット商品も複数生まれているという。
届出数・市場規模ともに順調に拡大した同制度だが、“未完の制度”と揶揄されるなどスタート時から課題も多い。消費者庁はこれまで、届出資料の簡素化や届出確認の迅速化、対象となる機能性関与成分の拡大など改善を進めてきた。昨年は軽症者データの取扱範囲の拡大について検討がなされアレルギー、尿酸、認知機能の3領域の一部で取り扱い可能となった。また今年3月には「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の第4次改正を実施。データベースも改善し、さらなる届出資料の簡素化(入力項目3割削減)や届出確認の迅速化を図った。
〈今春は飲料で新商品が多数〉
18年度の市場規模は前年度比6%増と、17年が前年から3割増と大きく伸びたのに対し、成長はやや緩やかになった。18年度は一時、新規届数が低迷していたため大きな伸びにつながらなかったが、今春、ボリュームの大きい飲料で機能性表示食品を冠した新商品が多数発売されるなど、再び活況を見せている。
さらなる成長に向けた喫緊の課題として挙がるのが「一般消費者に理解されていない」といった認知度の低さだ。トクホ・機能性表示食品・健康食品の区別がつかない消費者も多く、普及に向けては行政、企業を挙げた啓蒙(けいもう)活動が必要となる。また広告表示のあり方も課題としてあり、直近では「歩行能力の改善」をうたう機能性表示食品の届け出撤回が相次いだ。前述の日本通販協会によれば「表現規制が厳しく、制度の利便性を上回っている」「販売部署が広告規制に縛られ、販促に消極的」といった声もあるという。
〈消費者庁はトクホとの棲み分けに向け検討〉
一方、健康食品全般にわたっては、トクホの表示許可数を機能性表示食品の届出数が上回ったため、トクホとの重複感も浮上。消費者庁では、トクホと機能性表示食品との棲み分けに向け、今年度事業で「特定保健用食品制度の運用拡大の検討」を行う。トクホについては、新たな保健の用途に関する表示の実現に対応するため、疾病リスク低減型トクホに関する調査事業を実施する。“疾病リスク低減”は、機能性表示では決して届け出ることのできない領域。調査事業によってトクホの拡充、ひいては健康食品市場全体の拡大につながるか注目だ。