〈新春インタビュー2018〉ヤオコー代表取締役社長・川野澄人氏 機械化・IT化で人手不足に対応
17年度は生鮮・デリカセンターの2期稼働、新物流センター稼働など将来に備えた投資を積極的に行った。センター活用で店舗作業の省力化も進め、人手不足にも備える。首都圏20km圏へ都市型小型店の1号店も出店し、新たな成長への種まきも行った。
18年度からの新中計では、投資をいかに効果につなげるかが課題になる。これらにより、2020年以降も生き残れる基盤構築を目指す。
〈生鮮のネットワークを強みに〉
――2017年は第8次中期経営計画(2014年度~17年度)の最終年度。3年間の成果は
中計では「スーパーではなく“ヤオコー”と呼ばれる存在へ」をメーンテーマに、いかに独自化できるかに取り組んだ。また、パートの採用に苦戦した。いかに少ないマンナワーで、よい売り場、よい商品、よいサービスを提供できるかに着手した。オペレーションの効率化に力を注いだ3年間だった。
店舗作業の軽減のための大型投資として、17年7月にデリカ・生鮮センター(埼玉県東松山市)の2期センター、10月にグロサリーとチルドの両機能を備える熊谷物流センター(同熊谷市)がそれぞれ稼働した。中期目標の250店舗、売上高5000億円のための体制もできてきた。18年夏には新システムも稼働する。次期3カ年は、これらインフラ投資の効果をいかにあげるかが最大の課題だ。
――2017年度を振り返って
4つの柱で進めた。運営戦略は機械化・IT化を推進した。デリカ・生鮮センターの2期稼働でいなりずしや巻き寿司、ベーカリーの生産性は相当向上している。デリカのキット化も進めており、この部門は合格点だと思う。
商品・販売戦略は、本来の売り方提案に時間をかけられなかった。商品はPB(プライベートブランド)で、上質ラインの「プレミアム」、ライフコーポレーションと共同開発しているスケールメリットを生かした「スターセレクト」の開発は順調に進んだ。デリカセンターの2期稼働で惣菜の名物商品も出てきている。
育成戦略ではノー残業デーの設置、長時間労働の削減など働きやすい環境づくりに取り組んだ。人事部と店舗が連携し、パート従業員が定着するしくみづくりも行った。学生アルバイトは育成を通じて働きがいを感じてもらい、新卒採用に繋げるようにしている。出店・成長戦略では今期6店の新店のうち、年末までに5店を出店した。当社は首都圏の20~40kmが重点出店エリアで、今後も継続出店していく。今期は11月に20km圏内に都市型小型店1号店「八百幸成城店」(東京都調布市)を出店した。まだ認知度が低く、予算には達していないが、将来の出店の可能性を広げる種は撒いた。次の中計で都市型小型店を育成していく。
〈独自商品を強化、来店動機高める〉
――第9次中期経営計画の内容は
19年に消費税の増税、20年に東京五輪がある。増税で2極化し、節約志向が進むだろう。また、新たな競争環境へ移行する。着実にEC(電子商取引)へ移行する。今まで以上の来店動機が必要だ。ヤオコーでしか買えない、味わえないものを強化していく。個店経営を他社には真似のできないレベルに引き上げていく。顧客ニーズを拾って自分たちで考え、自分たちで売り場を作り、自分たちで売っていく。自分も買い物をしたくなる店にしていく。
しかし、十分な人手はかけられない。そこはチェーンストアとしてのしくみ作りで、いかに生産性を上げ、魅力ある職場にしていくのかが次期中計の重要な課題になる。構造改革なくしては、20年以降は生き残れない。
やることは増やさない。4つの柱を深めていく。ヤオコーでしか買えないオリジナル商品の開発が重要だ。原料にまで踏み込んで、商品開発をしていく。デリカ・生鮮センターでデリカの商品づくりを強化する。センターはスペースにまだ余裕があるので、店の省力化のために生かす。
20年変えていなかった基幹システムを刷新し、店舗の業務量を減らす。出店・成長戦略では、現中計で種を撒いた農業への参入、ネットスーパー、都市型SMを次期中計で事業化できる形にまで持っていく。
――今期から神奈川県を中心にディスカウントスーパー10店を展開するエイヴィ(神奈川県横須賀市)が連結子会社になった。エイブィの成長戦略、グループ内での位置づけは
次期中計でエイヴィの新規出店も計画している。売り場が広く、商圏も広いまとめ買いの店なので、1店舗ずつ増やす。PC(プロセスセンター)を活用して圧倒的な安さを提供する業態で、エイブィのPCは機能が高く、今後の生産性向上ではヤオコーも学ぶべき部分が多い。デリカ・生鮮センターのスペースにまだ余裕があるので、エイブィの専用PCを設けて、埼玉での出店も考えている。ドミナント地域の埼玉では、エイブィとヤオコーの両業態でシェアを固めていく。
――アマゾンが生鮮販売に参入してきた。ネット通販の影響は
ECの方向は間違いないが、生鮮食品のEC化がどんな時間軸で進むかはわからない。米国では食のEC化率が10%を超えているが、日本が今後3年でそこまで進むとは思えない。しかし10年後はどうか。当社のメーンカスタマーは50代以降。65歳以上で3分の1を占め、この人たちは素材から作る伝統的なライフスタイルを維持している。しかし、75歳になった時もそうなのか。生鮮の構成比が下がって、デリカの構成比が高まるのではないか。来店頻度も下がる。
ただ、当面は生鮮で支持される今のやり方でいいと思う。今後はよい生鮮素材の惣菜化も重要になってくる。よい生鮮素材を確保できるネットワークも、大きな強みになってくる。
〈食品産業新聞 2018年1月1日付より〉