ドラッグストアの拡大続く “食と健康”市場創造でスーパー・コンビニを猛追

旺盛な出店を続けるコスモス薬品の店舗
〈店舗数は前年比5.0%増 焼きたてパンや生鮮品の提供が増加〉
ドラッグストアの勢いが止まらない。

経済産業省の2017年商業動態統計によると、ドラッグストアの店舗数は前年比5.0%増の1万5049店、販売額は5.4%増の6兆580億円と拡大した。このうち食品は8.4%増の1兆6206億円となり、販売増に大きく寄与した。

集客力を強化するため、加工食品の焼きたてパンなどの店内調理食品や生鮮品を提供するところも増えてきた。食品の存在感を高めながら、食品を主力に扱う食品スーパー、コンビニエンスストアを猛追している。

同統計によると、ドラッグストアの販売額が5.4%と伸長している一方で、スーパーは0.4%増の13兆497億円と停滞し、コンビニエンスストアは2.4%増の11兆7451億円にとどまり、伸びが鈍化している。

〈食品の売り上げ構成比55%、“ドラッグストアに食品は不可欠”/コスモス薬品〉
ドラッグストア業界5位のコスモス薬品(福岡市)は、食品の売り上げ構成比が業界内で最も高い55%を占める。

食品売上高は大手食品スーパー並みの3000億円超に達し、もはや食品量販店の大手企業と言える。柴田太社長は、「消耗品を便利に安く購入できる店を目指す。その中に薬も化粧品も食品もある」とし、ドラッグストアに食品は不可欠なカテゴリーだと話す。

日本国内約20兆円の食品市場を担う主な業態は、総合スーパーや食品スーパー、コンビニエンスストア。そんな中で柴田社長は、「当社より食品を高く販売している店は多い。徹底したローコストオペレーションで質と安さを追求する。食品市場を取りに行き、食品業界内でのポジションを高める」と宣言する。

同社は大手ドラッグストアで唯一、調剤部門へ参入していない。その理由について柴田社長は、「今後、処方箋の単価はどんどん下がり、処方箋は枚数を稼がないと利益が出なくなる。ドラッグストアの生き残りは客数がカギだ。今は食品の強化などで店舗の集客力を高める時期。そしてしかるべき時期に来たら、調剤に参入する」と話す。

ドラッグストア最大手・ウエルシア店舗

ドラッグストア最大手・ウエルシア店舗

〈精肉・野菜など生鮮品の取扱を開始/ウエルシア〉
ドラッグストア最大手のウエルシアホールディングスは、「調剤併設」「深夜営業」
「カウンセリング」「介護(在宅医療)」の4つの方針を軸にしたビジネスモデルを展開する。

水野秀晴社長は、「当社はヘルス&ビューティーを軸に、食品は便利性で品揃えしている。今まではドライグロサリー(冷蔵を要しない食品)と日配の扱いが多かったが、精肉や野菜など生鮮品も扱い始めた」とする。

同社には24時間営業の店舗が135店あり(2018年2月期末現在)、そこに生鮮や中食の導入を進める方針だ。

ゲンキーの生鮮食品売場 毎日激安!

ゲンキーの生鮮食品売場 毎日激安!

〈ドラッグストア初、生鮮を全店導入へ/ゲンキー〉
ゲンキー(福井県坂井市)は昨年6月から生鮮食品の取り扱いを始めた。

今期(2018年6月期)は新規出店を抑制し、生鮮品を導入するための既存店改装を優先し、約220店中、100店舗超へ導入した。来年度中に、ドラッグストア初となる全店導入を目指す。

生鮮品導入の理由について、藤永賢一社長は「今まで当社と食品スーパーの両方で買い物をしていた顧客が1カ所で済めば時間の節約になる」とする。同社はこれを機に、コーポレートカラーも従来の濃紺から緑と青の生鮮食品をイメージしたものに一新した。

競合となる食品スーパーへの対策としては、青果が戦略部門となり、“EDLP”(エブリデーロープライス)を実施している。

「食と健康」の新しい食品マーケット分類(日本チェーンドラッグストア協会)

「食と健康」の新しい食品マーケット分類(日本チェーンドラッグストア協会)

〈“自分に合った商品”を探せる売場づくりで新たな市場開拓へ〉
業界団体の動きを見ると、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、2017年のドラッグストア店舗数1万9534店、総売上高6兆8504億円(同協会調べ)から、2025年には3万店、10兆円に拡大することを目指している。

同協会では、専門的な知識を持つドラッグストアこそが、「食と健康」の市場を創造できると提言。今年、「食と健康」の新しいマーケット分類を作った。いわゆる「機能」による分類で、これを既存のカテゴリー分類に落とし込む売り場を提案する。

例えば飲料売り場には、普通の飲料とともに、トクホや栄養機能食品、エナジードリンクなど、それぞれの機能を持つ商品を、わかりやすい表示で陳列することで、顧客は自分に合ったものを選択できる。これまでは商品を知っている人にしか売れなかったが、顧客が知らなかった機能や商品を見つけられる売り場にすることで、「食と健康」の新たな市場が広がっていくと見ている。

〈食品産業新聞 2018年5月17日付記事を元に再構成〉

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