〈第47回食品産業技術功労賞〉キユーピー「よいとき」
それにより、2粒に酢酸菌1億個分の酢酸菌酵素をもつサプリメント「よいとき」を開発、飲酒ケア市場における新コンセプト商品として、販売店舗も拡大している。
商品はドリンクタイプではなく、持ち運びや摂取場所に気を遣わない、「ソフトカプセル」を採用。従来は30代の働く女性がターゲットだったが、40~50代のビジネスマンも加えるターゲット拡大を機に、今年9月にお求めやすい価格(2粒、+230円→180円)への変更とパッケージの刷新を行った。
エタノールから酢酸を作る酢酸菌の酵素を工業生産することで新しい価値を提供できると考え、酢酸菌大量生産に取り組んだ。しかし、酢酸菌はその性質上培養が難しく、工業的に大量生産が難しい。培養方法の工夫と、大量生産に適した酢酸菌の発見(酵素の安定化)で工業生産を可能にした(特許出願中)。
年間販売予定額は3億円。社員からのビジネスモデル公募制度の第1号商品でもある。
キユーピー 商品開発研究所・奥山洋平氏(左)、マーケティング本部・立花雄一氏(右)
〈最も適した菌の選定に苦労〉
奥山氏 この商品は酢酸菌から得た酵素を原料とする。これらの酵素がアルコールをアセトアルデヒドに分解する。新規ビジネスの社内公募制度である「トライキユーピー」に応募して採用された。
まず、強い酵素を生成する酢酸菌のグループの中から100種類ほどを候補として、その中から最も適した菌を選定し「グルコノアセトバクター」と名付けた。この選定に苦労した。
次に製品とするためには1年間持つようにすることが必要だが、酵素は熱に弱いので、普通は1週間で失活する。そこでいろいろ試した結果、カプセルに入れることで18カ月の有効期間を実現した。
立花氏 こうした飲酒ケア市場用のサプリメントを当社がうまく販売できるのかというのが、最初の難問だった。その時、社内アンケートでつらいことは何かという質問をしたところ、ワインが好きだけどたくさん飲めない、などお酒に関する要望があった。そこで、思い切ってトライすることにした。
製品の性質上、販売ルートはCVSが中心となるが、主力商品の販売ルートは確立されているが、相手先のバイヤーは全く初めて。棚替えの時期や商談のタイミングも分からず最初は苦労した。
また、薬事法の関係もあって効能がうたえないばかりでなく、お酒をイメージする宣伝もできないので、積極的な表現方法ができないのがつらいところ。それでも最近はクチコミなどで愛用者が増えている。
〈食品産業新聞2017年12月4日付より〉