ウーバーイーツ、上陸2年強で配達エリアは11都市に 中食需要の拡大がけん引

スターバックスもウーバーイーツによるデリバリーを導入
東京で約150のレストランパートナーとともにスタートしたフードデリバリーサービス「Uber Eats」(以下、ウーバーイーツ)」が今秋、日本上陸3年目を迎えた。レストランパートナーは4000件以上に増え、配達エリアも都市部を中心11都市まで拡大している。

Uber Japan(東京都渋谷区)執行役員で「ウーバーイーツ」日本代表を務める武藤友木子氏は、「ウーバーイーツは好きなときに好きな料理を確実にお届けする、便利で信頼できるサービス。出前の文化が浸透しており、60万件以上のレストランが存在する世界的に見ても有望な日本市場に魅力を感じ2016年に進出したもので、拡大する中食需要を掴み順調に配達エリアを増やしてきた。今後も日本市場のさらなる開拓に挑んでいきたい」と意気込みを語る。弊紙の単独インタビューに応じた武藤氏に、ウーバーイーツの日本市場における動向、今後の展望を聞いた。

Uber Japan 執行役員・武藤友木子氏

Uber Japan 執行役員・武藤友木子氏

――「ウーバーイーツ」の概要は
 
「ウーバーイーツ」とは、ヒトやモノの移動をテクノジーで支えるウーバー・テクノロジーズ(本社・米国カリフォルニア州)が、ユーザーとレストラン、配達パートナーの三者をリアルタイムでマッチングさせて様々な料理を届けるサービス。
 
手軽に様々な料理を食べてみたいユーザーと、より多くの人に料理を食べてもらいたいレストランパートナー、空いた時間を有効活用したい配達パートナーの三者を結ぶフードデリバリーサービスだ。配車サービスで創業したウーバーが15年12月にカナダのトロントでサービスを開始し、18年11月現在、36以上の国と地域、350以上の都市で展開。世界各地で10万以上のレストランパートナーがウーバーイーツでデリバリーを行っている。日本では16年9月、東京を皮切りに事業を開始した。
 
ウーバーイーツの仕組みは簡単だ。ユーザーがスマートフォンのアプリ上で配達先を指定し、レストランパートナーが提供する料理を選択して注文すると指定住所に料理が届く。アプリに登録したクレジットカードで自動的に支払いが完了するため、現金のやり取りは発生しない。1杯のコーヒーから注文可能で、配達状況や配達予定時間もリアルタイムで確認できるため、忙しい人にぴったりのサービスとなっている。アプリ上には30分前後で届くレストランのみが表示される仕組みで、レストランパートナーの売上の一部がウーバーイーツの収益となり、ウーバーイーツは距離や時間帯に応じて配達手数料を配達パートナーに支払う。
 
レストランパートナーは、初期投資なしでデリバリーサービスを開始できるため、既存の固定費を変えずに売上を向上させることができる。専用アプリやアカウントを活用し、注文を受けるだけでなく、日々の売り上げやメニューごとの評価、利用客からのフィードバックなどを確認できるため、サービス向上にも繋がっている。マクドナルドやガスト、スシロー、大戸屋といった大手チェーンから、話題の高級バーガーやスイーツ、老舗のそば屋までレストランパートナーには多種多様な店舗が登録している。
 
一方、配達パートナーの雇用においては、年齢や性別、職務経験とは関係なく、アプリのボタンを押すと仕事ができる、シェアリングエコノミーの概念に基づいた働き方を提案している。個人事業主として各人とも活動しており、日本では副業目的の会社員や子育て中の主婦、学生、急に仕事が入るためシフトを組みたくないアーティストや役者など自分のライフスタイルに合ったフレキシブルな収入を得たい様々な人が働いている。“クールな仕事”として若者に人気で、30代以下の男性が配達パートナーの半数以上を占める。
 
――ローンチ(サービス開始)から約2年間で日本の10以上の都市で利用が可能になった
 
配達エリアは東京に加え、横浜、川崎、さいたま、大阪、京都、神戸、名古屋、福岡まで拡大し、12月4日より、初の千葉県進出となる市川市、船橋市が新たに加わった。今年に入ってから立て続けに9都市が新たに加わっており、レストランパートナーもローンチ時の150から約26倍の4000まで増加した。
 
レストランの数が世界トップクラスの日本市場に魅力を感じ進出したが、和洋中からエスニック、カレーや焼肉、ラーメン、最新スイーツなど、ここまでバラエティに富んだ外食メニューが楽しめる国は他には存在しない。日本人の食に対する飽くなき探求心と、自宅や職場にいながら手軽に様々な料理が食べられるというウーバーイーツの利点が上手く結びついたため、ここまで成長できた。ウーバーが上陸した国の多くは配車サービスの「ウーバー」が先行して市場に浸透しているが真逆の現状で推移しているのが、日本市場の特長だ。好きな時に好きなだけ働けるこれまで日本には無かったフレキシブルな働き方を提案できたことも日本市場に受け入れられた理由だ。
 
――今後の展望を
 
具体的な数字は公開していないが、今後も配達エリアは地方都市を中心に順次拡大していきたい。先月には、スターバックスがウーバーイーツの試験的導入を発表したが、選ばれるフードデリバリーサービスを目指すためレストランパートナーも増やしていく。
 
日本市場では長期的な人手不足が課題として挙げられるが、広告を投下するなど宣伝を強化し“フレキシブルな働き方”を武器に配達パートナーの拡大に注力する。ローンチ当初はユーザーが負担する配達料を380円に統一していたが、込み合う時間帯や雨の日、配達パートナーが不足している地域では、配達料を引き上げることで、配達パートナーの収入をアップさせ、人材確保にもつなげていく。
 
ウーバーが誇る独自のテクノロジーを駆使し、ユーザー、レストラン、配達パートナーの三者の均衡が保てる地域を中心にエリアを拡大し、近い将来、都市部ではウーバーイーツのアイコンである大きな緑色のバッグが街中にあふれる状態を作りたい。少子高齢化や人手不足、中食市場の拡大で競争激化が進むなど、日本の飲食店が抱える利益構造の改善にも貢献していく意向だ。
 
〈食品産業新聞 2018年12月10日付より〉