大阪のインバウンド拡大が継続 G20サミット、ラグビーW杯、万博など世界的イベント続々、「食」で世界を魅了へ
観光庁によると、国内全体の訪日外国人観光客は前年比8.7%増の3119万2000人となり、6年連続で過去最高を更新した。一見すると、大阪は全国平均を下回り、伸びが鈍化したように見える。しかし、前年の2017年が2ケタ増だったこと、2018年は大阪北部地震(6月)、台風21号(9月)による関西空港被災という大きなマイナス要因があったことを考慮すると、インバウンド拡大の勢いは継続中と言える。
大阪のインバウンドの増加は、関西国際空港でのLCC(格安航空会社)の便数増や、USJ、あべのハルカス、梅田スカイビル・空中庭園、海遊館、大阪城などの人気スポット、京都など関西の観光地へのアクセスの良さ、公衆無線LAN(Wi-Fi)環境の拡充などが背景にある。ニューヨーク・タイムズ紙では一昨年、「2017年に訪れるべき52の場所」という記事内で、大阪を「究極のごちそうが待っている」などと紹介。昨年中は大阪市内でホテルの建設ラッシュもあり、業務用食品卸各社の宿泊施設向けの売り上げが急増、各社はさらに提案を強化している。先進諸国に比べ物価が安い日本の中でも“コスパ”のいいおいしい食を堪能できることや、気さくでサービス精神にあふれた県民性も、外国人客の心をつかんでいるようだ。
外国人客に人気のある街は、ミナミ(道頓堀から心斎橋周辺)、キタ(大阪駅・梅田周辺)、あべのハルカスのある天王寺・阿倍野など。キタ周辺には、大阪駅・梅田だけでなく、天満、福島、中崎町など梅田より割安で楽しめるおもしろい街もある。食と気さくな大阪らしさを味わえるスポットとして人気が出そうだ。
東京オリンピック・パラリンピックに先立ち、大阪でも世界的なイベントが続々と控えている。直近では、6月27、28日開催の「G20大阪サミット」がある。企業は大規模な交通規制(27~30日)とそれに伴う物流対応を強いられ、開催地周辺にある企業の中には休業を決めているところもある。また、大阪市立小中学校および幼稚園、府立校の休校(27~28日)なども決まっている。経済効果に関しては、短期的にはマイナスと見られる。一方で、大阪の知名度・存在感を高める機会でもあり、中長期的にはプラス効果を期待する見方が多い。続く9~11月には、ラグビーワールドカップ日本大会が予定され、関西(大阪・神戸)も開催地となる。
人口減の中、インバウンド消費は重要だが、急増は手放しに喜べない。世界の観光地で問題になっているオーバーツーリズム・観光公害に、関西では特に京都が直面しており、対策が急務だ。対策を講じた上で、2025大阪・関西万博に向けて、大阪、関西が一段と盛り上がることを期待したい。
〈食品産業新聞 2019年6月20日号〉