冷食産業に高まる成長期待 国内生産体制の増強投資続く

ヤオコー川越南古谷店の冷食売場(2017年3月開店時)
〈適正価格実現の機運も〉
冷凍食品産業は今年も着実な成長が見込まれている。業界団体の日本冷凍食品協会は昨年12月、2017年(1~12月)の国内生産量について、過去最高だった16年を3%上回る160万tに達するとの予想を明らかにしたが、同時に伊藤滋会長(マルハニチロ社長)は「国内生産体制の増強投資が続く」ことから、冷食市場は今後も同程度の拡大局面が続くとの認識を示している。

同協会は昨年、大テーマとして「ネガティブイメージの払しょく」を掲げていた。おいしくない、手抜き料理と感じるなどのイメージのほか、誤った認識として「栄養素が損なわれるのではないか」「長期保存のために保存料が使われているのではないか」など冷食の利用の妨げとなっている負のイメージを取り除いていこうという目標だ。

今はこの課題を感じさせないほど冷食市場に順風が吹いている。メーカーをはじめとする業界の努力に社会環境の変化も相まって、冷食に対するポジティブイメージが広がっていることは確かだろう。

家庭用冷食は炒飯や餃子、唐揚げをけん引役として市場規模が底上げされた。メーカー各社が得意分野に新たな製造技術を導入するとともに、テレビCMなどプロモーションに積極的に取り組んだ成果だ。

販売チャネルとしても食品スーパーのほか、コンビニエンスストアやドラッグストアが成長している。あらゆる業界が消費者との接点を創出することに腐心しているが、買い場の多様化は強力なツールといえる。

他方、外食や中食に利用される業務用冷食は食の外部化という大きな流れに加え、サービス産業の人手不足が深刻さを増す中、需要拡大が今後さらに見込める。調理現場の負担を軽減しつつ、鮮度感が高く多彩なメニューを展開できる点で、冷食に勝る産業技術は今のところ見当たらない。

このように順風満帆に見える冷食業界だが、今年の課題は何か。まず原料・資材価格、人件費、物流費といったあらゆるコスト上昇への対応だ。対策として第一は生産性の向上だが、内部努力で吸収しきれなければ価格改定が選択肢になる。

テーブルマークは主力商品である冷凍うどんとお好み焼き、たこ焼きを今年3月に値上げすることを発表した。これに追随して値上げを発表するメーカーは現れていないが、事業環境の厳しさは各社とも表明しているところだ。

価格改定を広く適正価格の実現ととらえれば、さらに根深い課題が浮かぶ。冷食は商品価値に対して価格が安すぎる、という関係者の多くが感じている問題だ。長年苛烈な価格競争を繰り返してきたことが大きな要因だが、市場に追い風が吹いている今が手を打つチャンスだ。

冷食の夕食シーンへの利用が増えていることを受けて、これまでの弁当商品にはなかった、高質なおかずの提案も近年は複数見られるようになった。大手流通でもプライベートブランドで冷食の高質商品を開発する取り組みが目立ち始めた。この流れを今年も進めていきたい。

今後2020年の東京五輪に向けて、旺盛な需要は強まっていく。これに応える生産体制の整備も大きな課題だ。

昨年はマルハニチロが新石巻工場(宮城)を、キンレイが大阪工場をそれぞれ新設した。今年は3月にテーブルマークが冷凍うどんの新工場(新潟)を竣工する。日本水産やヤヨイサンフーズ、サンマルコ食品も投資案件を進めている。

新工場では省人化のためロボットの導入が既定路線。特に大手メーカーは主要品目の製造ラインについては完全自動化を追求している。自動化が進めば、稼働時間の拡大が可能となり、量の需要に応える要素が整う。

継続的な成長のためには質の要請に応える体制も求められるところだ。冷食にはあらゆる食材を提供できる無限の可能性がある。いかに効率的にニーズに合わせた商品を開発し続けられるか。社内外との連携など戦略的な取り組みを見据えた生産体制の構築に期待したい。

〈食品産業新聞 2018年1月11日付より〉

味の素冷凍食品が昨年9月に赤坂へ開店した日本式餃子レストラン「GYOZA IT.」

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日本ホビーショー 首都圏市販冷食連絡協議会の市販冷食試食ブースに約3000人来場

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冷食協の消費者イベントで参加者と直接対話する伊藤会長(中央)

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