“おつまみ”冷食が本格化 家飲み増加に対応、酒に合う味付けに先鋭化も
家庭用冷凍食品の市場拡大が続いている。
この2年ほど、炒飯、唐揚げといった、喫食頻度の高い冷食の代表メニューに大手各社が技術革新を伴った新商品を投入し、同時にテレビCMなどプロモーションにも力を入れたことで市場が底上げされた。今春の新商品数は3年前に比べて減少したが、メーカーが守りに入ったわけではない。基幹品目のテコ入れが成功し拡大した市場に対し、新たな切り口で新規需要の開拓に乗り出している。当季、図ったように複数社が照準を合わせたのが“おつまみ”冷食だ。
日本水産は17年秋から「おうちおつまみ」シリーズとして、弁当商品とは一線を画し、縦型パッケージでの展開を始めた。当季はニチレイフーズが「パクチキ」を、日本ハム冷凍食品が「今夜は家飲み!」を、同じく縦型包装で提案。インパクトの強いパッケージデザインに、中身のメニューも辛みを効かせるなど、お酒に合う味付けに先鋭化させている。
おつまみに特化した形ではないが、縦型包装はテーブルマークが新シリーズ「今日のもう逸品」で、マルハニチロが新奇性の高いメニュー「牛肉とトマトのパイ包み」で、それぞれ採用した。
小売店の冷食売り場では扉付き陳列ケースが増えているが、棚を有効に活用できる、縦型包装に対する要望はかねてより強かった。
包装形態を変えるとともに、中身も食卓やおつまみに特化することで、新しい売り場を演出することが期待できる。
おつまみで注目されているのが、味の素冷凍食品の「夜九時のひとり呑み」だ。グルメ雑誌「dancyu(ダンチュウ)」との共同開発で、お酒に合う味付けにこだわった。
味の素冷凍食品「夜九時のひとり呑み 揚げ茄子の煮浸し」
一般的に冷食は完全調理品が多いが、この商品では調味液と具材を別々に凍結し、電子レンジで加熱するとキューブ状の調味液が溶けて具材と絡み合う設計を採用している。これによってタレが浸み込み過ぎず、野菜は食感良く仕上がる。
おつまみ商品の開発背景には当然、家飲みの増加など社会変化があるが、冷食業界では従来型の弁当商品をおつまみに利用するという、利用方法が広がっていた実態がある。本格化、品質向上によって成長してきた冷食業界にとって、おつまみの本格化も当然の流れといえる。
冷食への好感度が高まっているいま、従来の弁当・おつまみ兼用型から、弁当商品とは包装形態も、味付けも峻別したかたちで、新市場を開けるか注目される。
〈食品産業新聞 2018年3月22日付より〉
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