「スーパードライ」初の業務用専用、苦味・渋みを抑えた新商品の狙いとは/アサヒビール「スーパードライ・ザ・クール」
アサヒビールは4月9日から、「アサヒスーパードライ・ザ・クール」(334ml瓶/オープン価格)を業務用専用で発売する。「スーパードライ」ブランド初の業務用市場向け商品。
“さらりとした飲み口、キレ味さえる辛口の生ビール”など「スーパードライ」ブランドの味の骨格はそのままに、苦味や渋みを抑えることで、よりすっきりした味わいを楽しめるビール。同社はこの味を「洗練された、シャープな新辛口」と表現している。若年層コアユーザーの獲得を目指した商品として発売し、取扱店舗もダーツバーやプールバー、パブなど、若いユーザーが集まりやすい場所に焦点を当てて展開する。
〈「お酒離れ」ではなく「家飲み離れ」〉
商品の発売に先立ち、3日には東京都渋谷区のダーツバー「Bee 渋谷店」で発表会を開催。同社ビールマーケティング部商品開発担当の松橋裕介氏が発売に至るまでの経緯や商品特徴を説明した。
アサヒビール 松橋氏
「ブランドの永続的な発展には、ロイヤルユーザー(コアなリピーター)の拡大が必要な一方、飲用機会を拡大し、これからビールを飲む若い方や、まだ“スーパードライ”に馴染みのない女性など、新規顧客を継続的に獲得することも大切」(松橋氏)。
「スーパードライ・ザ・クール」は新規顧客の獲得を狙う商品として市場に投入。既存品の「スーパードライ」による取り組みと合わせ、ロイヤルユーザーの拡大と新規顧客獲得の両輪を回し、継続的な発展を図るという。
若年層や女性を取り巻く酒類市場の環境については、「お酒離れが叫ばれて久しいが、確かに家庭用市場の調査において客層分析を行うと20~30代は購入機会も数量も全体から比べて低めの値となっている」とする。
一方で、「そういった層は外ではよく飲むことが判明しており、一緒に飲む人も会社の先輩や上司ではなく、大学時代の友人や、バーで知り合った方などといった、本音で腹を割って話ができる人と飲む傾向が多い」とも。
若年層の飲酒に対する認識については、「実は20~30代の若者はかなりストレスを貯めている。というのも、個人の感性や個性を非常に大切にする世代ではあるが、一歩社会に出るとそれが認められなかったりうまく行かなかったりということも多々ある。だからこそ自己研鑽に意欲的で、認めてほしいという願望も大きい。また、若年層では一般的なSNSでもどういう情報を発信するのか、どういうことに“いいね!”をつけるのかを考え、気を使っている世代。そうしたつながりよりもむしろ気のおけない仲間とリアルでストレートにストレスを発散できる場として、飲酒の機会を設けている」と述べた。
〈ビールは開放感を味わうための「スイッチ」〉
松橋氏は、「同じものを乾杯することで一体感を感じ、自分たちの時間を始める、いわばスイッチのようなものとしてビールを捉えているという分析結果もある」という。
「飲む人は減っているかもしれないが、それでもビールの価値を感じてくれている。また、お酒は酔うために飲むのではなく、むしろ仲間との場を楽しみ、距離を縮めるコミュニケーションツールという認識もあるようで、そういう機会にスタイリッシュにかっこよく、そして親しんでもらう商品が必要と考え、“スーパードライ・ザ・クール”の開発を行った」。
“スーパードライ・ザ・クール”を機に“スーパードライ”ブランドに親しみを持ってもらい、「今後のロイヤルユーザーになってもらえるようなブランドとして育てていきたい」という。
〈カルピスのビアカクテル「ダブルカルチャード」提案も〉
中味については、同じく清涼感が特徴の“スーパードライ瞬冷辛口”で培ったノウハウを用いて商品開発を実施。同社の調査では若年層は苦味が苦手とする傾向が強いという結果が出たため、苦味をなくしつつもビールとしてのコク、キレ、旨味はある味わいに仕上げるべく、試行錯誤を経て商品が完成したという。
「飲み方もグラスに注ぐというよりも、若年層には一般的な飲み方である瓶から直接飲むスタイルを想定した味覚設計としている」。
また、女性を意識した提案として、カルピスを入れたビアカクテルも勧めている。同商品に直接カルピスの原液を投入することで、「ほんのり甘みが感じられとにかく飲みやすい味わいとなる」と、カルピスをビールで割ったカクテル“ダブルカルチャード”を新たな形で提案する。
「スーパードライ・ザ・クール」
〈酒類飲料日報 2019年4月5日付〉