中食市場の拡大は輸入鶏肉・調製品の利用増につながる—食肉流通センター研修会

〈国産食肉拡大には牛・豚肉の惣菜・調理品開発を、精肉との併売でシナジーも〉
中食市場の拡大は輸入鶏肉の利用につながっており、今後は国産の牛肉・豚肉を使った惣菜・調理品の開発促進が必要だ――。日本食肉流通センターは15日、川崎市東扇島の同センター管理棟で17年度第3回研修会を開いた。今回は、「中食(調理品・惣菜)の市場拡大下における食肉流通関連業者の取組みに関する調査研究」と題して広島大学学術院農学ユニットの戴容秦思(だい ようしんし)特任助教が講演した。

食肉の内食・中食需要が増加するなかで、外食とは違う中食分野の食肉マーケットの実態を把握するとともに、中食に焦点を絞った消費者像と購買行動を試みた。戴氏は、肉惣菜が拡大するなかでも調理向けの食肉の消費頻度は変わらず、むしろそれぞれが促進し合う関係にあると指摘。中食市場は、畜種では鶏肉、産地では輸入品を利用する傾向が強く、国産牛肉を使用する惣菜・調理品の開発の促進が必要との見方を示した。

今回、講師を務めた戴特任助教は、同センターの15年度食肉流通関係委託調査研究で今回のテーマの研究調査を行った。調査によると、量販店の売上構成比を15年と05年で比べた結果、水産は96%と減少した半面、畜産は118%、惣菜は116%と伸び、畜産と惣菜の売上貢献度が上昇している。ある量販店の店頭調査では、牛肉・豚肉が合計8アイテム、鶏肉は10アイテムだった。鶏肉では輸入調製品の利用も多く、原料原価率が比較的低く、中食食品の製造に積極的に利用され、逆に牛・豚肉の利用は消極的となっている。つまり、中食の拡大の中身は、畜種では鶏肉、しかも輸入鶏肉を利用する傾向が高く、必ずしも国産食肉、とりわけ牛・豚肉の需要拡大にはつながっていないと指摘する。

精肉消費と食肉加工品・肉惣菜消費の関係をみると、中食が拡大しても食肉の調理頻度は変わらず、「食肉加工品や惣菜の消費頻度が高いからと言って、別に精肉の利用を減少させているわけではない。データ解析結果から、むしろ促進し合う関係になる」と指摘した。

これらの結果、国産食肉の需要拡大には、国産牛肉や豚肉を使用する惣菜・調理品開発の促進と、精肉と惣菜のシナジー効果を利用した販売方法の工夫などが必要だと指摘した。そのうえで、「量販店では対面販売コーナーを設ける、しかも専門店の誘致ではなく、自前でコーナーを設ける例が増えている。結果、国産牛肉の販売を増やしているが、銘柄牛ではなく、むしろ牛肉を使った惣菜が売れる。惣菜コーナーだけではなく、精肉を対面販売することでシナジー効果が産まれている」と具体例を示した。

〈畜産日報 2018年3月20日付より〉