ヨーグルト市場で“プレーン”復調、機能性商品からユーザー戻る

ヤオコー小田原ダイナシティ店 新規オープン日(9月11日)のプレーンヨーグルト売場
〈18年下期は「プレーンの細分化」に注目、“自分向け”選ぶステージへ〉
プレーンヨーグルトの18年4~8月の販売状況は、金額ベースで前年比3%~4%増で推移(ヨーグルト全体は前年並み=当社推計)、昨年度は踊り場だったが復調が顕著になっている。機能性ヨーグルトのヘビーユーザーの一部が、価格的に継続しやすいプレーンへ戻っていることなどで、カテゴリー内でのスイッチが進み、体に良いものの位置付け自体は変わっていないプレーンが受け皿となっている状況。

下期は機能性の急成長に押され道半ばだった「プレーンの細分化」に、最大手の明治が再びテコ入れすることで、業界の長年の課題であるプレーンの同質競争(価格競争の悪循環)からの脱出への道が開けるか注目だ。ひと昔前と違うのは、機能性を買っていた人が自分なりのこだわりを、プレーンの中でも持ち始めたことで、細分化によって中身の違い、価値に改めて関心を集め、自分向けプレーン探しの購買行動につなげることができるか、下期は各社踏ん張りどころとなる。

「機能性ヨーグルトを買っていた人は中身の違いを理解しており、プレーンでもその人のこだわり・価値軸に触れるようなことをやれば、価格重視だけではないプレーン市場の広がりへつなげられる」(メーカー)。

プレーン市場は、ヨーグルトトップの明治(ヨーグルト事業規模は17年度2035億円)の「明治ブルガリア」、森永乳業(同557億円)の「ビヒダス」、雪印メグミルク(同561億円)の「ナチュレ恵」の3大ブランドで8割のシェアを占めており、17年度市場はヨーグルト全体(乳酸菌飲料除く)約4000億円(メーカー出荷ベース)のうち、プレーンは約1000億円。マスコミが乳酸菌のエビデンスを追うほどメーカーの個別の商品を持ち上げる格好になるため、ヨーグルト全体の活性化には結び付かず、またテレビ局が根拠性のないものは放映しないスタンスへ変わってきたことなどから、マスコミでのヨーグルトの露出が減り、前年割れ、踊り場となった。

今期は4月に「明治ブルガリア」が450gから400g化に踏み切り、その動向と他社への影響が注目だったが、「直接的な影響は軽微」(森永)で、4~8月プレーン市況は前年比3%増で推移、カテゴリー内で機能性からプレーンへのスイッチが進んでいる。「機能性ヨーグルトのライトユーザーが、他の食品カテゴリーへ流れたのが17年度。今期はヘビーユーザーの一部が、一個単価が安く続けやすい、アレンジしやすいプレーンへ戻ってきており、身体に良いもの、食べるべき食材というプレーンの位置付けは変わっていないので需要は底固く、成長余力はまだあると見ている」(メーカー)。

〈機能別コーナーに売場作りを変える提案も〉
機能性にいったん流れた人たちが戻ってくる中で、注目すべきは「中身に関心を持つ人が増えてきている」(同)こと。“○○症予防”といった目的のために機能性ヨーグルトを買っていた人が、プレーンについても中身の価値に関心を持ち、価格ありきで判断しない消費行動にじわじわ移行していると思われ、この数年、大手商品より価格の高い小岩井乳業やフジッコの商品の販売が好調なことも、こうした背景が後押しとなっているようだ。

「“あなたに合ったヨーグルト”をテーマに、機能別コーナーに売り場を作り替えることを提案。今のところ機能性ヨーグルトだけでの展開だが、流通や最終消費者から評価を得ている」(乳業大手)。食品スーパーの都内一部店舗で実施されている「見つかる、あなたのヨーグルト」機能別コーナーでは、機能性ヨーグルトを「腸内環境」「生活習慣」「体調管理」の3つのコーナーに区分し、各社商品を陳列。これまでのブランド別陳列から、消費者の目的別陳列へ様変わりさせ、これをプレーン売り場でも同様に展開できれば、自分に合ったプレーン選びにつながるのでないかと同社は期待している。

そしてこの秋、自分に合ったプレーン選びを商品で実現しようと、プレーンの細分化に改めて注力するのが明治。細分化とは、基幹の「スタンダード」「脂肪0」に対し、江崎グリコBifiXなどの「加糖」、小岩井乳業やフジッコなどの「高価格帯」、明治320gなどの「中容量」、各量販店の「98円PB」を指す。明治は10月に鉄分入りの400gを投入し、新たに「栄養素強化」の枝葉を追加、不足しがちな栄養素を大容量ヨーグルトで継続的に摂る提案を進める。また「無糖ドリンク」も10月に投入する。プレーンの目的別(食べるか飲むかの)提案にもつながり、プレーンの細分化の一つと位置づけることができそうだ。 多くの食品と同じように長期下落トレンドの始まりかと思われた17年度から一転、今年の下期は明治がプレーンの細分化をテコ入れすることで、自分向けプレーンを選ぶ一段上の成長ステージへ上がることができるか、関心が集まる。

プレーンのメーンユーザーは40~60代、今後は若者の取り込みもさらに重要となっており、細分化による自分に合ったプレーン選び、例えば明治の鉄分入り400gを妊娠や授乳中の女性に「自分用」と意識させる取り組み、若い女性の価値軸にふれる提案と商品投入で、新しい購入者を取り込み、確かな成長につなげることができるか注目だ。

〈食品産業新聞 2018年9月20日付より〉