即席麺の出荷、金額・数量ともに過去最高を更新 カップ麺がけん引

麺関連の品目別POSデータ総体(2017年1~12月、KSP‐SP社提供)
〈麺類総体のボリュームは減少も、存在感を示す商品を投入〉
「少子高齢化」、「世帯構成人数の減少」といった外部環境の変化は、家庭用の麺類の市場環境にも変化を与えている。麺類と大きく括ると、食数ベースでの減少が続く。これまで、ボリュームゾーンだったファミリーユース向けの商品は減少しており、家計調査やPOSデータからも、2017年は麺類の市場が縮小したように見える。ただ、個食化や2人世帯のニーズに沿った商品開発、健康志向に応える商品開発があり、総体のボリュームが減少していても、存在感を示す商品が投入されている。
17年の家計調査(麺関連を抜粋)

2017年の家計調査(麺関連を抜粋)

〈即席麺/2017年総需要も過去最高を更新〉
中でも元気なのは即席麺だ。日本即席食品工業協会がまとめた2017年の即席麺出荷額総需要は5826億5300万円で、食数ベースでは56億6131万食。どちらも微増ではあったが、過去最高を更新している。全体をけん引するのはカップ麺。手軽さ、コストパフォーマンスの良さに加え、減塩や低糖質といった健康志向に応える商品開発が進む。

また、食シーン提案も盛んに行う。2018年は世界初の即席麺「チキンラーメン」の誕生60周年であり、即席麺の60周年でもある。平均すると、誕生から毎年約100億円ペースで市場規模を伸ばしてきた。引きつづき成長が期待される。

〈チルド麺/「2食パック」が市場の中心に、”簡便”拡大〉
チルド麺は1パック当たりの食数を減らし、本格感や手軽さを付与している。これまでは「3食パック」が市場の中心だったが、2015年に「2食パック」が3食パックの数量を抜いた。2食パックでは「名店の味」や「ご当地メニュー」といった本格感のある付加価値提案も受け入れられている。また、シマダヤの「流水麺」といった簡便性のあるチルド麺が拡大を続ける。2018年には東洋水産が「つるやか」を発売。「水でほぐすだけ」という商品設計は同じだが、30年以上続く「流水麺」ブランドが作った市場に、「つるやか」がどのように影響を与えるかが注視されている。

〈乾麺/生産量ベースで減少続く 輸出拡大に期待〉
乾麺は生産量ベースでは減少が続く。特に、うどん、そうめん、ひやむぎといった、商品の見た目だけでは製品価値の違いが分かりにくい商品では、価格競争に陥りがちで、結果として数量が減少している。一方、そばは国産原材料を使用した不可価値タイプの商品が受け入れられるケースもある。小麦粉、そば粉ともに「国産」が優位性を持つが、安定した原材料調達は各社の課題でもある。また、麺類では唯一、「常温保存が可能でかさが小さい」ため、輸出の拡大が期待されるカテゴリだ。東日本大震災後の原発事故の影響で輸出は大きく足踏みしたが、他の麺類にはない市場開拓の余地がある。

〈スパゲッティ/2014年以来の28万t台 輸入シェアが過半だが”低糖質”の新提案も〉
スパゲッティは2017年の国内供給量が28万3603tとなり、2014年以来となる28万t台に達した。現在、国産の生産量は13万t前半で安定しており、輸入パスタが15万t弱と、輸入品シェアが半数以上を占める。その中、昭和産業の「蒟蒻効果」やはごろもフーズの「カーボフ」といった、低糖質という新しい切り口の提案も出てきた。

冷凍麺は具付タイプが引きつづき伸長している。個食タイプの増加も指摘される。

カップ麺や冷凍麺の具付タイプという、「ワンタッチで1食が完成する」ものへの需要は引きつづき高まると見られている。素材に近い麺はレシピ提案、食シーン提案をいかに進めるかが課題だ。総体のボリュームは減少するという前提に立ち、差別化を図る動きが加速している。

〈食品産業新聞 2018年3月12日付より〉

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