日清食品「チキンラーメン」60周年ブランドマネージャーインタビュー「愛され続ける存在でありたい」
同社は「100年ブランドカンパニー」をビジョンに掲げており、今年は「チキンラーメン」を100年ブランドへ成長させるための礎の年とし、様々な施策を展開する。また、「チキンラーメン」60周年は、インスタントラーメン発明60周年でもあることから、インスタントラーメン市場全体を盛り上げていく考えだ。同社マーケティング部第3グループのブランドマネージャー・田淵義章氏に、今後の商品・プロモーション展開の考えを伺った。
「しろたま安全ビデオ」の1シーン
――100年ブランドに向けての施策について教えて下さい。
60周年を迎える今年に達成したいことは、喫食ユーザーを拡大させることだ。特に若年層へのアプローチを強化し、唯一無二の「チキンラーメン」が今後も沢山の方に愛され続ける存在でありたい。
2017年度はあらゆる角度からプロモーションを行った。第一弾のテレビCMでは、メインキャラクターに女優の新垣結衣さんを起用した「しろたま講座篇」を放映し、チキンラーメンのたまごポケットにのせる「たまご」をCMのパッケージのようにきれいに白くする”しろたま”を訴求した。一方、若年層向けにはWEB施策「裏しろたま動画」を展開。”しろたま”を訴求するため、飛行機の機内安全ビデオにそっくりな「しろたま安全ビデオ」や、「警察24時」のパロディ「しろたま警察24時」を制作した。SNSやYahooトップニュースで話題となり、非常に手応えを感じたプロモーションとなった。動画を見たSNSユーザーからは「試してみたい」という声が多数あがり、新たな喫食ユーザーの獲得へと繋がった。このような喫食まで繋がる施策を今後も展開していきたい。
以前、チキンラーメンを「そのまま食べたことがあるか」という自社調査をしたところ、シニアユーザーよりも、20代のユーザーの方がそのまま食べた経験率が高い傾向にあった。そこで、新垣結衣さん出演のCM「0秒チキンラーメン」を企画し放映。新垣さんがYouTuberになりきって、そのままチキンラーメンを食べるという内容。話題になるとともに、「美味しい」「はまる」との共感の反応が多く寄せられた。
店頭施策としては、今年2月から創業者・安藤百福のイラストをあしらった「ありがとう!インスタントラーメン発明60周年」ロゴ(クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏デザイン)と、60周年バージョンの「ひよこちゃん」をデザインしたパッケージで展開し、活性化を図る。
60周年バージョンの「ひよこちゃん」をデザインしたパッケージ
また今年は、「出前一丁」50周年、「日清焼そば」55周年の年でもある。そこで、共通で「ありがとう!インスタントラーメン発明60周年」ロゴを記載することで、インスタントラーメンの60周年を祝い、市場全体を盛り上げていく施策。さらに「出前一丁」の「出前坊や」、「日清焼そば」の「ロボットコンロチリチリ」といったキャラクターも、たまごを割りながら周年を祝っているデザインを採用した。
〈袋とカップの強み活かす〉
――若年層強化が今年の注力ポイントですか。
即席麺の消費動向を深く調査すると、袋麺とカップ麺の両方を食べている方が多い。男子高校生で7割、女子高校生で6割にのぼる。家庭では袋麺を食べる傾向にあるが、大学生、社会人になって一人暮らしを始めるとカップ麺に移行する。
若年層が袋麺を買う必然性を創出するために、ターゲットを主に20代男性に絞って、袋麺とカップ麺両方の強みを活かした新たな商品を展開する。それが今年4月発売の「チキンラーメン具付き3食パックアクマのキムラー」。
袋麺でありながら、お湯をかけるだけで具付きのチキンラーメンが出来上がる新提案の袋麺だ。具材にはキムチ、かきたま、ニラを加え、特製オイルを入れることでやみつきな味わいの旨辛スープに仕上がる。「アクマのキムラー」は、SNSやネットニュースで話題の、チキンラーメンとキムチを組み合わせたアレンジレシピで、「試してみて美味しかった」との書き込みが相次ぎ、テレビでも取り上げられるほど話題化した。2017年5月にはカップ麺としても発売してヒット。LINEニュースなどでも取り上げられた。
お湯をかけるだけで具付きのチキンラーメンが出来上がる新提案の袋麺「チキンラーメン具付き3食パック アクマのキムラー」(18年4月発売)
来期は、安藤百福と妻・仁子(まさこ)を題材にしたNHK朝ドラ「まんぷく」が放映される。この機会をしっかり活用してブランド強化し、「チキンラーメン」が100年ブランドとして成長できるよう取り組んでいきたい。
――「チキンラーメン」は5食パックのファミリー向けというイメージがあります。袋麺には必ずしも拘らないということでしょうか。
袋麺に固執してはブランドが廃れてしまう危険性がある。世帯人数が減少し、食シーンも多様化している。様々なシーンを想定し、ブランドを強化していくことを考えている。具体的には、先程紹介した「アクマのキムラー」がその一つ。エッジを利かせたスープ、具付きという特徴で、若者以外のコアユーザーにも楽しんでもらえる商品だ。
袋麺とカップ麺の売場は隣り合っているが、若者は袋麺売場に立ち寄らない。そこで「アクマのキムラー」をカップ麺売場に置き、存在感を高めたい。店頭では「袋麺」と「カップ麺」で分けるが、以前当社で「チキンラーメン」のリフィル(詰め替え用、電子レンジ調理すれば煮込み風の食感、湯かけ調理ではいつものチキンラーメンが楽しめるというもの)を発売した。同商品は当社のカテゴリー分けでは袋麺だったが、お客様にとっては普段カップ麺を買っている人の購買が多かった。家庭で用意したカップに中身を入れ替えて食べて頂いているようだ。このように、お客様の視点で流通の皆さまとも協力しながら商品を展開していきたい。
〈「不変」「変化」見極める〉
――ブランドマネージャーが考える「チキンラーメン」とは。
創業者・安藤百福が開発したブランドの重みと責任を強く感じている。100年ブランドを目指すために、「変わってはいけないところ」と「変わっていくべきところ」を間違えないように、ブランドを磨いていくことが重要だと考えている。「変わってはいけないところ」というのは、「すぐおいしい、すごくおいしい」チキンラーメンであること。この基本は変えず、プロモーションを通じ、ヤングファミリー層の主婦に向けては”ほんわか”とした温かいメッセージを投げかけ、加えて「0秒チキンラーメン」などインパクトのある施策で若年層にもしっかり届ける。
今年8月25日で60周年。唯一無二の価値を失うことなく、商品展開、プロモーション、お客様とのタッチポイントとなる店頭で、より愛していただける施策を今まで以上に展開していきたい。流通の方々には拡販して頂き、お客様にはもっと「チキンラーメン」に出会ってもらい、食べてもらい、ブランドに触れていただきたい。
〈食品産業新聞 2018年2月19日付より〉
【関連記事】
・今期のカップヌードル・どん兵衛の売上げ過去最高更新見通し=日清食品
・【食育ルポ】日清食品・チキンラーメン 小麦粉からチキンラーメン手作り体験、食事のバランスを考える機会も
・“年明けうどん”全国で徐々に認知度高まる 「どん兵衛年明けうどん」は定着、外食も好調
・IT賞最上位の「IT総合賞」受賞、情報企画部の経費を半減=日清食品HD