ラーメン通じ“昆虫食の門戸開放”へ 完売続出の新時代グルメ「コオロギラーメン」
記者は今年3月、表参道のスパイラルで行われた展覧会「クマ・エキシビジョン」で、人生で初めて昆虫食を体験しました。
同展はアプリ開発などを行う(株)コロプラの馬場功淳社長が設立したクマ財団による、1年に1度の成果展で、展示物は美術・工芸・デザイン・彫刻・写真・メディアアート・音楽・映画・演劇・食文化と多岐にわたり、作家は50人にも及びます。
展示作品は目を見張る技術と努力の結晶の数々で、とても面白く鑑賞したのですが、2時間も会場内を歩き回ると疲れもたまります。ほっと一息つきたいな♪と思っていた矢先、見つけたオアシスが、“地球少年”こと篠原祐太さんが作る「昆虫ラーメン」のお店でした。
〈世界初の「コオロギラーメン」が話題に 人気店とコラボ、完売も続出〉
篠原さんは1994年の“地球生まれ”。今年3月に慶應義塾大商学部商学科を卒業しています。4歳の頃から様々な昆虫を食べ、その中で、食べることの原点や面白さ、命をいただくありがたみ、未知に挑むワクワク感、自然の美しさや命の循環等、多くの喜びや気付きを得たため、その魅力を発信しようと、虫料理の販売から、ケータリング、ワークショップ、授業まで幅広く手掛けています。
“出汁をとる”手法で新しい昆虫食のあり方を提案
中でも、世界初の「コオロギラーメン」は大きな話題を呼び、人気ラーメン店「凪」とコラボしたり、赤坂サカスのイベントでも販売し、完売が続出しています。 私が食べたのも「コオロギラーメン」でした。昆虫食というと、素揚げや佃煮がメジャーですが、見た目に抵抗がある人も多いため、篠原さんは「出汁をとる」という今までにない手法を用い、新しい昆虫食のあり方を提案。国民食のラーメンで、昆虫食への門戸開放を狙いました。
澄んだ濃厚なスープは、凝縮されたコオロギの風味と独特な香ばしい味わい
〈“カップ麺にコオロギが入る時代”を目指し挑戦 「食は作業ではない。冒険だ」 〉
篠原さんに今後を聞くと、大学卒業後にラーメン店をオープンするのに適した場所を探しているとのことでした。ぐるナビなど彼を求める企業も少しずつ出てきているそうですが、あいにく食用コオロギの価格は依然高く、ビジネスで大量生産するのは今のところ難しいそうです。しかし、彼は負けません。「カップラーメンにチキンでもポークでもなく、コオロギが入る時代を作っていく。食は作業ではない。冒険だ」と大志を掲げ、これからも挑戦を続けていくそうです。
毎日の食事風景を考えてみると、我々は食事をしながら、テレビを見て、会話をし、仕事をし、携帯を触り、思考を巡らせており、果たして目の前にある食をじっくり味わっているのでしょうか。見ただけで味を予想できて、手を動かせばそれを口に運べて器官が勝手に消化・吸収してくれるから、脳は違う方向を向いています。そのような「食」は作業と言っても過言ではありません。篠原さんのラーメンには、味覚に集中して「食べる」という行為と向き合うことの大切さと、その喜びを再発見する気付きがあります。機会があれば、ぜひ、皆さんも食べてみて下さい。
食用コオロギ 価格が高く大量生産は難しいが、「時代を作る」と篠原氏は語る
食べた人:三浦。給食専門誌「月刊メニューアイディア」担当。アートをこよなく愛する敏腕記者(自称)。奈良出身の愛犬家。
〈月刊 麺業界2018年5月号より〉
【関連サイト】
・篠原祐太さんのFacebook=https://www.facebook.com/y.shino.earth
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