【米穀VIEW890】漂流する米政策 Ⅴ 第3次安倍内閣「信任」④

食料・農業・農村政策審議会の会長である名古屋大の生源寺眞一教授は12日、jaja(農政ジャーナリストの会)で「二度目の政権交代と農政」と題して講演した。このなかで生源寺教授は、「10年で農業・農村所得倍増計画」が食料・農業・農村基本計画に馴染まないにもかかわらず、法制度とは別に「再興戦略」に盛り込まれた点などを「ゆるいシステム」と表現。「今や『農政』が農業のリスクファクターになった感がある」と指摘した。米の生産調整見直しについて「政府の公式文書に曖昧な表現が残るなど、現時点で道筋が明示されているとは言い難い」とも。
〈農政の基本課題〉(基本計画を論議している)企画部会では、要素ごとに積み上げていって自給率目標を掲げる、言わば原点に戻る方針。というのも現在の供給熱量50%という目標は、数字が先行し、結果的に無理をした側面があると、検証の過程でも議論されたため。この漠然とした数字が先行するという轍を踏まない、のだとすれば、基本計画に「農業・農村所得倍増計画」を盛り込むことは避けたほうがいいと、再三申し上げてきた。もともと選挙公約だったこともあって、「倍増」という数字に全く根拠がない。しかも「農業所得」はともかく、「農村所得」という単語は存在しない。そもそも、ここからここまでが農村で、それ以外は違うという「農村」の定義も存在しない。故に現実の目標に盛り込むには馴染まない。ただ農林水産省のなかには何とかこれを盛り込みたいと考える向きもあって、最終的にどうなるかまだ分からない。
なぜ盛り込みたいかというと、「農業・農村所得倍増計画」が「活力創造プラン」や「再興戦略」に書き込まれているから。これがかなり面倒な問題。閣議なり内閣なり、その時々の政府が決めたことの正当性をどう考えればいいか。漠然とした決定ならいいが、それが具体的で、しかも法律と矛盾している場合、どこに正当性があるのか。こうしたことは、特に担い手を支える制度をめぐって、フレが大きすぎる。数年に一度、あるいは毎年といっていいほどブレる。今や「農政」自体がリスクファクターになってしまっている。法律があるにもかかわらず、予算や行政措置などで、なかには法律と矛盾する施策も実施されてきた。これを我々は当たり前だと思っているが、考えてみれば法治国家の先進国としてあるまじき「ゆるいシステム」だ。即脱却は難しいが、さしあたり少なくとも、農政がちぐはぐを生みかねない「ゆるいシステム」の下にあるのだという「自覚」が必要。

 詳細は本紙をご覧ください。