「低温製法米のおいしいご飯」でパックご飯市場に参入=アイリスオーヤマ

アイリスオーヤマ㈱(大山健太郎社長)はこのほど、パックご飯「低温製法米のおいしいご飯」シリーズを発売、加工米飯市場に参入した。6月下旬には切餅の新商品を発売するなど、今後、米関連商品をさらに拡充、積極展開する予定だ。同社の砂田敏之営業本部長(写真)は本紙の取材に以下の通り述べた。
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弊社が米事業に参入するきっかけになったのは、東日本大震災だ。本社が仙台にあり、会社も社員も甚大な被害を受けた。創業は東大阪だが、宮城、東北の地で育てていただいた会社で、震災のあと、社長の大山が、なんとか東北を元気にしていきたいと言い、我々の強みと東北の強みを活かしてどういった支援ができるか考え、米にたどり着いた。それまで食品は扱ってきていなかったが、耐久消費財では、マーケティング力や商品開発力と、全国の営業プラットフォームがあった。それを使い、全国においしい米を届けられないかと考えた。そんなとき、仙台の農業生産法人、㈱舞台ファームとの出会いがあった。舞台ファームもだいぶ震災の被害を受けていて、そんな縁で、一緒に事業を行うことになった。共同出資で舞台アグリイノベーション㈱を設立し、昨年7月、宮城県亘理町に精米工場を竣工した。津波が10mくらいのところまで来た地域で、そこを造成して企業を誘致していた、ある意味震災のシンボリックな場所だ。
亘理の精米工場は全体を低温管理している低温工場だ。米に最適な環境で、美味しさを引き出すための精米をするというコンセプト。これはおそらく日本初、ということは世界でも初だ。逆にいうと、一般に、精米を温度管理する発想は無い。我々が異業種だったからこそできた発想だと思う。
東北にはおいしい米がある。しかし、新米はうまいが、年が変わり、春、夏と経つと、どんどん味が落ちていく。米をお腹いっぱい食べられるようになり、食も多様化したこの時代に、美味しさを維持する発想がなくていいのか。他の食品、例えばパンなら、スーパーに一斤98円で出されるパンもある一方で、専門店では小さなパンが200~300円で売られている。パン業界は努力をしたということだと思う。それと比べると、米業界には付加価値を付ける努力が少なかったのではないか。我々はそこに着眼した。最近は10万円近い炊飯器も売れていて、おいしいご飯を求めるニーズが顕在化しつつある。米が選ばれる基準はまだ、産地、銘柄、価格が中心だ。特栽米など栽培の工夫はあるが、精米技術でおいしさを保証するという発想はあまりない。春や夏が来たとき、本当においしい米か。我々が努力すべきところだと思う。
米の販売は、元々取引が多かったホームセンターと、消費者にとって一番の購買先である食品スーパーの2本柱で展開している。店頭売価は高めだが、スーパーにはコンセプトに賛同していただける担当者もいる。従来の食品スーパーは、生鮮や惣菜には力を入れているが、それに比べると米売場は放ったらかしだ。月一の特売で7割くらい売ってしまうスーパーもあるという。米は小さくても2㎏袋で、5㎏や10㎏の袋もある。かごに入れると他のものが買えなくなるため、スーパーが積極的に売りにくいという面もある。米も鮮度は大事だが、色が変わったり異臭が出るわけではなく、農産品なのにグロサリー寄りに扱われている。かといって、他のグロサリーのように全国的な規模のマスプロモーションも少ない。我々は皆さんと一緒になって、業界を変えたいと思っている。今、コメの店頭価格は「製品」の発想で決まっている。たくさんできたから、残っているから安くなるというのは生産側、プロダクトアウトの発想だ。しかし、弊社の基本はユーザーインの発想。もちろん消費者にとっては同じ商品なら安いに越したことはなく、それなりの企業努力はする。特売することもあるが、基本は一定の価格で販売する。消費者に、一年を通じて新米の味を味わっていただくという付加価値を支持していただくためには、「商品」にしたい。

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