伸び率鈍化もプラス推移-家庭用冷凍パスタ市場

家庭用冷凍パスタ市場に変調が見られる。日本冷凍食品協会の14年国内生産量で、冷凍スパゲッティ(業務用含む)は前年比2.6%増と、依然プラスであるが3割伸びた前年からは鈍化した。データのとり方によって見方も違うが、5~10%前後の伸びだったものと見られる。

すでに市場規模は500億円を超えたと見られ、規模が拡大する中、伸び率鈍化はやむをえない面もある。「市場が踊り場にあるのは確かだが、伸び率鈍化は分母が拡大したことによるもので、伸長幅で見れば決して悪くない」(日本製粉・宮田一正執行役員冷凍食品部長)という声もある一方で、「今年になって前年を下回る月も見られる」(メーカー)という声も聞く。今年4~6月の市場は3~5%増という見方が多い。

近年の家庭用冷凍パスタ市場は、景気低迷による内食志向の高まりや、単身世帯の増加による一食完結型・個食パスタの需要の高まりもあって、市場拡大が続いていた。家庭用冷凍パスタ市場のほとんどをけん引する日清フーズ、日清食品冷凍、日本製粉の3社が多彩なラインナップを次々と投入し、売場が拡大。かつて「カテゴリーで1品あればよい」とまで言われた冷食市場にあって、多くのブランド、メニューの“面”で売場が形成され、消費者の選ぶ楽しみが拡がったのも拡大の要因だ。生パスタブームも追い風となった。

一方、パスタに限らず冷食全般の話だが、一昨年4月の消費者庁の価格表示指導から販売手法をハイ&ローの一律割引販売からEDLPに改める企業が多く、昨年はそれが冷食売上を引き下げる方向にも働いた。ある業界関係者からは「イトーヨーカドーが昨年末EDLP化したところ、冷食売上高がなんと半分以下に落ち、EDLPから2割引を始めた。それでも前年の8割くらいまでしか戻していない」というにわかには信じられないような話も聞いた。

そこに昨年4月の消費税増税があり、家計がじわじわと低価格なものにシフトしていく動きがある。「EDLP化により、仮に以前と同じ価格、もしくはより安い価格でも“全品半額”という強力なプロモーションがなくなったことが影響していると見る。また、2~3月に価格改定があり、概ね完了したが、平均売価は変わっておらず、より安いものにシフトしている可能性がある」(日清食品冷凍・荒木英明取締役マーケティング部長)と言う。

そうした中、すでに各社は手を打ち始めている。日清食品冷凍と日清フーズは、通常春秋2回の新商品投入が通例となっている冷食では珍しい「夏の新商品」を投入。新商品効果で棚を活性化するのみならず、新商品と絡めたプロモーションも提案する。「棚の変化の意味でも新商品が求められる中、反応が非常によく、お褒めの言葉までもいただいた」「何年か前は、このタイミングで発売されたものは採用されないのが定説だったが、それが求められ売場に並ぶことを再認識した」(同)といい、小売店側の反応もよいようだ。

また、日本製粉は今春、軽めの容量で求めやすい価格とした「オーマイライトミール」、たっぷり味わうプレミアムの「オーマイプレミアムグランデ」の2ブランドを新規に投入。「sMの売り方が変化する中で、ラインナップの幅を拡げ、売り方に合ったものを選んでもらうという考え方。そういう意味では、小売店の販売方法によりアイテムが動く」(日本製粉・宮田執行役員)という。

そして、食シーンの幅を拡げるため、今春、日清食品冷凍がパスタ・前菜・デザートをセットにした「日清ソロッタ」シリーズを、日本製粉がハンバーグとパスタをセットにした「オーマイよくばりプレート」シリーズを投入。新市場の開拓を目指している。

「個食パスタ市場は即席麺などと比べ市場はまだまだ圧倒的に小さい。味はもちろん、価格や簡便性など比較しても他のインスタント食品に引けをとらないが、依然喫食率は50%ほどにとどまっている。冷食の良さを伝えノンユーザーを取り込めば市場の更なる拡大は十分できる」(同)という声を多く聞く。大手CVsが冷食販売に積極的なのも新規ユーザーの獲得にはプラスだ。

こうした打ち手が実を結んだ時、冷凍パスタ市場は再上昇に転じるのは間違いなさそうだ。