小麦粉二次加工の品質を決めるグルテン構造を可視化する=工学院大・山田教授①
工学院大学の山田昌治教授(写真)は2日、埼玉産小麦ネットワークの研修会で、講演「小麦粉二次加工の品質を決めるグルテン構造を可視化する」を行った(7面に関連記事)。山田教授は京大修了後、川崎重工業㈱、秋田大助手を経て日清製粉㈱入社。生産技術の研究に取組み、研究所所長も務めた。2010年から現職。本紙では連載で紹介する。初回は研究分野について。
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小麦粉グルテンの基本的な話と、現在進めている研究について話をしていく。まずは自己紹介で、今は食品分野の研究員だが、元々は食品とは縁もゆかりもない専門を学んでいた。京大で化学反応を利用したプロセス工学という分野を勉強し、1979年に川崎重工業の神戸造船所に就職した。造船技師になったが、この時代はものすごい造船不況。船の受注がなく、4年間在籍したが一度も船の設計をしたことはなかった。その後、たまたま秋田大で助手の公募があり採用された。「これで一生研究者をやっていくぞ」と思ったが、研究費がなく、毎年数十万の予算で学生10人ほどを卒業させていかなければいけなかった。そこで、改めて1988年に日清製粉㈱に就職した。
これが当たり、生産技術の研究所で実績をあげ、海外の工場長を担当、本社に戻り研究所を立ち上げる仕事をし、食品の基礎研究をする部署を作った。その後、工学院大学工学部で食品分野の教授公募があった。最近は工学部で食品を研究することは少ない。ずっと、日清製粉でパン、麺、二次加工品の研究しており、現場の課題を抱えていたこともあって応募した。
現在は研究室で小麦粉に限らず広く研究をしている。メインは食品の「におい」について。これは日清製粉にいた頃からの研究テーマ。現在も埼玉県産業技術総合センターと一緒にうどんのフレーバーの研究をしている。何故かというと、食品の美味しさは色と食感と味とにおいだと思うが、そのうち色、食感、味はほとんど研究しつくされている。私のように後発の人間では研究する余地がない。ところがにおいは分析できるようになって、たかだか10年くらい。新しい分野で数値化出来ていない部分が多い。幸い大学に来たときに世界で一番感度の良いにおい分析装置を買ってくれたので、これを使って研究をしている。
以前から研究しているパンでは、一番重要なのは混捏(ミキシング)のところだと思う。パンは単純に言えば混捏して、発酵させて、焼くというもの。実際はそんなに簡単ではないが。この、捏ねるというところに興味を持った。生地の中に酵母が均一に分散してくれないといいパンができない。その分散状況を数値化したいと考えた。工学部の人間なので色々な現象を数値化して制御するということにすごく興味がある。ところが、パン生地も中の酵母も両方とも色が白いので見えない。見えるようにしようと酵母に遺伝子組み換えで表面にGFP(緑色蛍光タンパク質)を生やして、酵母自身が見えるようにした。そうすると分布が手に取るように分かる。現在は発酵の方に移って研究をしている。
詳細は本紙をご覧ください。