家庭用個食冷凍パスタ市場 2年連続微増で踊り場感 第1四半期も前年並前後で推移
2015年度の家庭用の冷凍個食パスタ市場は、金額ベースで1%台の伸びと見られ、踊り場に差し掛かっている。同市場は、特に東日本大震災後の2011~2013年度にかけて、3年連続で15%から20%以上の高い伸長率で推移し、市場は10年前の2倍以上へと拡大した。一方、14年度以降は踊り場に差し掛かり、市場は2年連続で微増となったと見られる。すでに市場規模が400億円前後見られ、ある程度拡大してきたため、伸長率が鈍化することはやむをえない面もあるが、停滞感が出ているのは事実だろう。
今年第1四半期(4~6月)も動きは鈍く、市場は大手メーカーの推計でも3%減~3%増程度と、マイナスと見立てるメーカーもあった(容量ベース、金額ベースなど、捉え方によっても異なる)。要因はいくつか考えられる。冷凍米飯の伸長の影響を受けたとみられる点だ。昨秋、味の素冷凍食品が「ザ・チャーハン」を発売して以降、冷凍炒飯市場が活性化し、相乗効果で多くの商品が伸長することとなった。本紙で参照するPOSデータ(KSP-SP調べ)においても、今年1~6月累計の市販用冷凍米飯市場は金額ベースで前年比18.4%増と伸長しているのに対し、冷凍個食パスタが4割近くを占める市販用冷凍麺市場は0.3%減と微減となっている。「胃袋の大きさが変わらない中で、同じ主食タイプの商品として、米飯が伸びればパスタは影響を受ける」(メーカー)との見方が出ている。
もう1つは、個食パスタとキャラクターが近い冷凍汁なし中華麺カテゴリーの伸長だろう。大手メーカーの推計によれば、4~6月の冷凍中華麺カテゴリーは2ケタ増、中でも汁なし中華麺(汁なし担々麺やジャージャー麺等)は大きく伸長しているという。「個食パスタ市場は各社が多くの商品を投入し、それまでカテゴリー数品のみが売場に並ぶ従来の冷凍食品と異なり、買い回りで選ぶ楽しみもあって伸長してきた。その買い回りの範囲が、レンジ調理のみで食べられるという性質が似ている汁なし中華麺にも波及してきている」(メーカー)と見られる。この市場はまだ30~40億円規模ながら、15年度は前年の2倍以上に伸長したと見られる。
一方で、大手メーカー各社とも、冷凍個食パスタ市場はまだ伸びるという見方では一致している。「この市場は間口が狭く、喫食経験率はまだ5割にも届いていないが、一度食べた人がリピーターとなることで奥行きが深くなり伸びてきた」(メーカー)という通り、まだ間口を拡げる余地があり、それができればさらに伸びるポテンシャルを持っていると言えよう。メーカー各社も喫食率の低い男性や高年齢層など、新たなユーザーに手を伸ばしてもらうことを意図した商品投入を行う方針だ。
もう1つ注目されるのがCVsの存在だ。これまで冷凍個食パスタの主戦場はsMであり、量的には現在もそれに変わりないが、伸長率では近年、CVsが大きく伸ばしている。しかも、CVsの主要顧客にはsMに足を運ばない男性や高年齢層など、まさに間口を拡げるべきターゲット層が含まれている。PB中心の商品展開という足かせはあるものの、冷凍個食パスタ市場全体にとっては、市場拡大の鍵を握る存在かもれない。