「和食文化を世界に発信!」=神明・藤尾社長 「米卸は努力をしていない。精米して売るだけ」

既報(「米麦日報」10月16、17 日付)の通り、“日本の食品”輸出EXPOが開かれた。11~13 日に展示の他、多数のセミナーを実施。本紙では㈱神明の藤尾益雄社長(写真)による「和食文化を世界に発信!~神明グループの海外戦略」を紹介する。

初めに当社の紹介を。当社は神戸に本社を置く米卸で、2017年3月期は連結ベースで売上高1,824億円。1902(明治35)年に創業し、今年で115周年を迎えた。

約10年前に「私たちはお米を通じて、素晴らしい日本の水田、文化を守り、おいしさと幸せを創造して、人々の明るい食生活に貢献します」という企業理念を作った。それまで、当社には企業理念がなかったが、「社員のベクトルを一つにしたい」と考えてのこと。

当社グループには色々な会社がある。子会社では、神明きっちんが精米事業を、ShinmeiDelicaが弁当や総菜事業を、東果大阪は野菜の荷受けをしていて、年間で450億円くらいの青果がここを通る。神明亞洲は香港で食糧や加工食品の販売、成都栄町食品は中国で日本の食品を販売している。神明アグリは農産物卸で子会社の神明ファームは農業を行う。物流の神明ロジスティクス、無菌包装米飯製造のウーケ、水産の神戸まるかん、ゴダック、農業や地方創生を行うナチュラルアートもある。SHINNMEI USA CORPORATION はカリフォルニアでライスバンズの生産・販売を行う。他の孫会社も含めて30社くらいが当社グループのメンバーだ。

釈迦に説法かもしれないが、日本の農業について。農業産出額を見ると1984(昭和59)年には11.7 兆円あったものが、2015(平成27)年には8.8兆円。約3兆円減った。米でいえば1984 年の3.9兆円が2015年に1.5 兆円と1.4兆円減少している。まさに米の一人負けというところ。農業従事者は1980(昭和55)年には約700万人いたのが2016(平成28)年には192万人と500 万人以上減っている。2050年には108万人になり、その3割が85歳以上だという。85歳以下が70~80万人という予想。この生産力の低下は問題視している。耕作放棄地は2015年に42.4万ha で、これは富山県の面積と同じくらい。現在、日本の主食用米の作付面積が140万ha を切っていることを考えると、ものすごい面積だ。

米の生産量は1960(昭和35)年辺りがピークで、年間の生産量は1,300万tを超えていたが、現在は約800万tと500万t減っている。消費も同じで1962(昭和37)年には1人当たり年間の米消費量は約120 ㎏で、1か月当たり10㎏食べていた。しかし、現在では54.6㎏と半分以下に。その間、小麦はごくゆるやかではあるが伸び続けている。米は減った。これは努力の違いだ。例えば、ベーカリーショップを覗けば、楽しそうで、美味しそうなパンがあり、ついつい買ってしまう。そこには演出もある。米卸は努力をしていない。精米して売るだけだ。それがパンとの差になっている。

カロリーベース自給率は1965(昭和40)年の73%から落ちて、最近は39%で来ていたが、直近の2016 年(平成28)年には38%まで落ちた。これは危機的な数値だ。段々下がっていて、米の影響も大きくなっている。

日本の食卓を見ると、米は自給率100%になるが、野菜で80%、海藻で70%くらいで、後は輸入が大半を占める。危機感を感じている。いかにして国内の食品の生産力を付けていくかは、食に関わるものの課題だ。

四大穀物といわれる米、小麦、トウモロコシ、大豆では、米は自給できていても、小麦は85%が輸入、トウモロコシは100%、大豆は94%。食物の中で大切な穀物についても輸入に依存している。

農産物の輸出を見てみると、水産物と加工食品が多くを占める。やはり加工食品分野で力の入れ方がすごい。米も伸びてはいるが、2016年の輸出額は27億円。だいたい1万tだ。国は2020 年に置いていた農林水産物と食品の輸出目標1兆円を1年前倒しにした。うち、コメ・コメ加工品については600 億円。今は221億円で約400億円足りない。

〈米麦日報2017年10月19日付より〉