第47回食品産業技術功労賞祝賀パーティで「受賞の言葉」5氏
(株)神明代表取締役社長、藤尾益雄氏
〈国際部門〉コメ輸出と寿司店の海外展開
食品産業新聞社主催の第47回食品産業技術功労賞を授賞していただきまして、大変ありがとうございます。実は当社は第46回も授賞していただいておりまして、その際は「10分ごはん」(高速小型炊飯器poddi+ソフトスチーム米)が対象でした。そのときも当然、非常に嬉しかったのですが、私自身は実は、この第47回のほうが大変喜んでおります。
と申しますのは今回、国際部門でいただきました。当社はコメの輸出を手がけて10年ほどになります。当初、10年前に輸出したときは、社内でも業界内でも「なんでコメの輸出なんかするんだ?」などと、ほとんど賛成の声がありませんでした。しかし、「将来につなげていくんだ」と、オーストラリアに20~30tだけ輸出したのが最初です。2010(平成22)年には全米輸(全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会)という団体も立ち上げたんですが、そのときも会員にまだ全く入っていただけなかった状態でして、新潟・秋田の農協(単協)さんと細々とスタートしました。それから10年。今やオールジャパンで、昨年度はコメの輸出が1万tというところまで来ました。そのなかで当社は3,000t扱わせていただいています。今年、齋藤(健)農相が「10万t」という大きな輸出目標を掲げまして、そのなかで当社は3万tの目標を掲げさせていただいています。
また今回の受賞は「寿司店の海外展開」にも及んでいます。これもすごく思い入れがあります。当社が6年前、元気寿司に出資したとき、まだ88店舗くらいでした。それが現在は11か国170店舗まで増えてるんですね。これも6年間、当社と元気寿司がしっかりと組んで、海外でどんどん出店活動をしていった結果として、また、そのクォリティの高さ、日本文化の素晴らしさ、日本食の健康、こういったものが海外で認められて、170店舗にまで至っております。
このような思いがありましたので、今回の受賞は非常に私自身が喜んでおります。また来年も是非3期連続の受賞をめざしていきたいと思います。
オリエンタル酵母工業(株)代表取締役社長、中川真佐志氏
〈商品・技術部門〉おにぎり品質向上剤「ナイスライス結(ゆい)・快(かい)」
本日は食品産業技術功労賞をいただきまして、大変ありがとうございます。当社は日清製粉グループ本社の事業会社の一つでございまして、(日清)製粉が粉を作って、当社が酵母を作って、日本のパン産業を支えようということで、1929(昭和4)年に作られた会社です。
それなのに、今回の受賞の製品はナイス“ライス”。なんで酵母屋がナイス“ライス”なのかと、いろんな疑問もあるかと思いますが、これは開発の人間がですね、おにぎりが大好きでして。特に赤飯のおにぎりとか、炒飯のおにぎりとか、好きだったんですけれども、どうも赤飯は硬いなあと。炒飯は食べようとするとポロポロ落ちてしまう。というような、全く個人的な「望み」から、「熱意」から、生まれた製品でございます。この製品からスタート致しまして、多分来年も受賞させていただけるんじゃないかなといったものが、いくつか出揃ってきておりますので、また頑張っていきたいと思います。
オリエンタル酵母といますと酵母、だいたいシェアが50%強あるんですが、「見えないところ」でトップシェアの位置にあります。例えば、鹹水(かんすい)。中華麺に使う、添加量は少ないですが、これがないと中華麺にならないというようなもの。それから私どもはバイオ事業をやっていまして、全く見えないですよね。
酵母は、まだしも何となく見えますよね。ところが細胞レベルといった世界になっていきますと……。例えば京大の山中(伸弥)先生と一緒にノーベル賞をとられたiPS(細胞)の仕事をしたり、昨年ノーベル賞をとられた大隅(良典)先生のオートファジー用の酵母などで一緒にお仕事させていただいたり。今「きぼう」という名前の宇宙ステーションが地球の周りを回ってます。そこでマウスを使った実験が行われております。そのときに使われる実験動物用の飼料……「そんなことをやっている会社なんてあるのかな?」というような、そういうことばかりやっている会社です。本当に見えないところでいろんなことやっておりますので、また来年も皆さんが「なんでオリエンタル酵母なんだ!?」というようなものを持ってきて、何とかまた受賞できるように頑張りたいと思います。
(株)はくばく代表取締役社長、長澤重俊氏
〈マーケティング部門〉大麦の普及・消費拡大
本日は第47回食品産業技術功労賞のマーケティング部門を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
当社、はくばくという名前は、「白い大麦」という意味でありまして、1941(昭和16)年の創業以来76年になるんですが、ずーっと、ひたすら、大麦の消費拡大を願ってコツコツやってきた会社です。そういう意味では今回の「大麦の普及・消費拡大」に対する賞は「どまんなかの賞」ということで、社員一同大変喜んでおります。
もちろん、当社は76年、ずっと大麦にこだわり続けたわけですけれども、その先人の努力、また社員の努力ではありますが、特に3人の人間に、この賞を捧げたいと思っております。
一人は創業社長であります長澤重太郎、私の祖父ですが、かつて200万tあった大麦の需要が、今2万tに減少しております。そういう激減する消費のなかで、ひたすら、大麦こそ健康の源と信じて、それをやり続けた創業社長のお陰で今の当社があると思っています。
二人目は父・長澤利久です。大麦の全国団体であります全麦連という団体の会長を10年ほど務めておりまして、この間ひたすら大麦の需要拡大に努めてきたわけでありまして、この二人にこの賞を捧げたいと思います。
もう一人は、この人物がいなければ、この賞はいただけなかったと思っておりますけども、当社の広報担当の山下(奈々)であります。彼女一人が自分の私心を乗り越え、献身的な情熱で大麦の普及をはかろうと、その思いにほだされた外部の知識人の方々、またマスコミの方々が、彼女の情熱に同意され、そこで我々がマーケティングとして、パブリシティとして、いろんな情報番組に大麦が乗るようになったという意味で、本当に彼女の活躍抜きではこの賞はなかったと、心から彼女に感謝しております。
とはいえ、大麦はまだまだ200万tの消費が2万tに落ちて、今年1万tくらい増えて3万tくらいになった状態でありまして、まだ拡大の始まりだと思っております。我々も本気で「大麦で国民の健康に寄与したい」と思っておりまして、そういう意味では50万tとか100万tとか、そのくらいの大麦の消費にならないと一人あたりの食物繊維量は増えないなと。1g、2g、大麦から主食を知ってもらえるように、当社がこれから、まさに技術開発をして、おいしさであったり、簡便性であったり、その弱点であります大麦の食べにくさを、我々はくばくとして技術革新をして、また今度は「技術」功労賞を頂戴したいと思います。そういった技術開発をして、大麦が国民の健康に本当の意味で寄与できるように、これからまた我々もますます精進してまいりたいと思います。
明星食品(株)代表取締役社長、松尾昭英氏
〈マーケティング部門〉即席麺市場における低糖質麺の普及
このたびは結構な賞をいただきまして、誠にありがとうございます。昨今は健康食品といえどもおいしくなきゃいけません。
昔は――青汁の宣伝を皆さん憶えていらっしゃるかと思いますが、どこかの会社で「マズいっ!」って言って売ってたんですね。今の青汁は「うまい」って言って売っています。やはり身体のためといっても、マズいものは食べないんです。そこで今回の受賞商品ですが、これは人のためではなく、私が自分のために作った商品です。
酒呑んで帰ってきてラーメン食べると、嫁さんにエラい怒られるんです。「ラーメンメーカーの人間がなんでラーメン喰ったらいかんのだ」って言ったら、「なら酒をやめろ」って言われたんで、「酒を呑んだ後でも食べられるラーメンを作ろう」と、なりました。最初は蒟蒻麺を作ったんですけど、やっぱりマズい。それで、やはりおいしいものをと思って作ったのが、この低糖質麺「はじめ屋」のシリーズです。まさに「必要は発明の母」だという通りで、他人のためではない、自分のための商品が一番、需要としては可能性があるということでしょう。
スーパーさんにも色々お話してるのは、まだ普通のカップ麺に比べると、それほど動きがとれないので、できるだけコーナー化を勧めております。その趣旨にあったお店に並べていく、こうした専門紙の方も、そういう形を啓蒙していっていただきたいと思います。もう少し経つと人口の3分の1余が65歳以上になります。まさに我々などがそうなりますけど、さらにもう少し経つと4割くらいが高齢者になってくるわけです。でも、そういう棚構成に店はなってないと思います。是非ともこうした業界紙の方の力も借りて、そういった商品も置かなきゃダメなんだと。でないと高齢者が買い物に行くところがないんだということを、商品サイドではなく、もっとデモグラフィック的なところを、新聞で書いていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。
(株)むらせ代表取締役社長、村瀬慶太郎氏
〈商品・技術部門〉「むらせ ライスグラノーラ」
1971(昭和46)年からだそうですから、私が生まれる前から続いている食品産業技術功労賞を受賞させていただきまして、まずもって御礼申し上げます。ありがとうございます。
食品の名だたる大手メーカーさんが沢山いらっしゃるなかで、我々は中小の米卸として、大正15年(1926年)から今年で91年目を迎えますが、米一本でやってきた米屋です。
先ほど神明の藤尾社長も言われてましたが、米の消費が減り続けてきたなかで、我々は今まで、ただの卸問屋でしたが、扱っているお米に価値をつけたり、いろんなマーケットを作ったりするなかで、米の消費を拡大することが、あまり大それたことは言えませんが最終的に生産者のためになるのではないか、いわゆる米屋には、そのような責任があるのではないかということで、当社としても初めて、一から加工食品に携わったのが、今回の商品です。
米に限らず、朝食マーケットは、朝食そのものの欠食率も含めて問題になっていたかと思います。そのなかでグラノーラのマーケットが、ちょうど新たな朝食マーケットとして広がってきていました。ところが、そのなかで残念ながらお米が使われていなかった。そこで我々は米屋として、そういったマーケットに挑戦していこう、というのが今回ライスグラノーラ開発のきっかけになりました。
まだまだメーカーとしては生まれたばかりの、技術的にも未熟な会社ではありますが、受賞させていただいた表彰楯には「食品産業に貢献」ということが書いてあります。改めて、本当の意味で食品メーカーとなって、米の消費拡大、最終的に日本の自給率向上にも寄与できるような、そんな企業になれたらと思っています。まだまだ小さな若輩企業ですが、引き続きご指導・ご鞭撻のほどを宜しくお願い致します。本日はどうもありがとうございました。
〈米麦日報2017年11月10日付より〉