【スポット解説】2018年4月期麦価3.5%引上げ
既報(7日付)の通り、農林水産省は輸入小麦の2018年4月期売渡価格を5銘柄平均で3.5%引上げる。
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輸入小麦の政府売渡価格の算定(改定)は、〈1〉過去の一定期間の輸入価格の平均値(今回の改定では2017年9月第2週~2018年3月第1週)に、〈2〉マークアップ(現行ではkg当たり18円程度と言われている)を上乗せした価格として、計算式に基づき半ば“自動的”に導き出される。この算定の主要要素は、小麦の国際相場、フレート(海上運賃)、為替相場の3つが主なもので、これらの前期比の変動率が改定価格算定に反映されている。
今回の改定算定における各要素の変動を見ると、ある特徴が現れている。小麦の国際需給は、世界的に潤沢な在庫や供給量を背景に軟調に推移しており、事実、国際的な小麦相場の指標とされているシカゴ商品取引所の小麦相場は、今回の算定期間平均で1ブッシェル当たり4.3ドルと、前期(2017年10月期)算定期間平均の4.4ドルから、僅か(‐0.23%)だが下落している。
一方で、日本の輸入量が多いハード系小麦の指標であるミネアポリス相場は、米国産ハードレッド・スプリングの生産量が前年比大幅減となったことから価格が高止まりしており、2018年4月期算定期間平均で6.4ドルと前期算定期間平均(6.3ドル)から僅か(+1.58%)に上昇した。これを見るだけでは、シカゴ微下げ、ミネアポリス微上げで均せば横ばいに近いと思えてしまうが、日本向けの小麦輸出には、品質要素も加わってくるので、単純な話にはならない。
小麦の日本向け輸出価格(実際の取引・調達価格)は、今回の算定期間平均でt当たり265ドルであり、前期算定期間平均(258ドル)対比で2.7%上昇している。これは、北米の新穀のタンパク質が低い傾向にあり、日本が求める高タンパク質小麦が減少する懸念から価格が上昇している。さらに、麺用等の主力銘柄である豪州ASWにおいても、主要構成銘柄のヌードル小麦価格が、収穫の遅れから上昇している。つまり、国際的な小麦相場は大きな変動はなかったが、日本向け小麦の価格は、それに比べると相対的に大きく変動していたということだ。
さらに、今回の算定期間中に大きく変動したのがフレート(海上運賃)だ。2017年9月第2週~2018年3月第1週の平均価格はt当たり46ドルで、前期算定期間平均(42ドル)に比べ9.5%も上昇していた。その理由は「燃料油価格の上昇」にあったとされている。つまり、今回の改定で3.5%引上げとなったのは、日本向け輸出価格の上昇とフレートの上昇に主な要因があったと言うことができよう。なお、為替は、2017年10月以降円安傾向で推移しており、今回の算定期間平均は1ドル113円で、前期算定期間平均(112円)に比べ+0.89%の変動率だった。
また、輸入小麦の政府売渡価格は年2回(4月期。10月期)改定されるが、4月期の3.5%引上げ(t当たり5万4,370円)は3期連続となり、連続引上げ前の2016年10月期(5銘柄平均t当たり4万8,470円)と比べると、実に12.2%も上昇していることになる。一方で、小幅改定(引上げ)になったことで、相場連動制の趣旨に基づき製粉各社や小麦粉卸は小麦粉二次加工業界等と改定交渉に入るが、「パン1斤、うどん1杯で1円に満たない改定交渉は困難を極める」との声が圧倒的だ。小幅改定時対策が求められる。
〈米麦日報 2018年3月8日付より〉
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