養豚・養鶏事業者、コープデリ連合会の取組紹介=飼料用米シンポ(2)

(株)木村牧場・木村洋文社長
〈「飼料用米普及のためには、流通と保管こそが課題」(株)木村牧場・木村洋文社長〉
当社は青森・つがる市の養豚事業者だ。2010(平成22)年、アメリカの干ばつに起因した国内配合飼料価格の高騰をきっかけに、アメリカ産トウモロコシに依存した配合飼料の依存に限界を感じ、検討を重ねて2012(平成24)年から飼料用米の利用を開始した。県内生産者から調達しているが、2015(平成27)年から急増、2016(平成28)年には144戸と契約、受入実績は5,000t以上だ。ある年から飼料用米が暴落したことで想定以上の量が集まり、保管が課題になった。当初は外部倉庫を借りていたが、フレコンで3~4段積む作業は危険が伴い、フレコン代や金倉もかかる。玄米・フレコンと仮定すると、コストは1tあたり1.3~1.5万円の一方、アメリカからトウモロコシを輸入しても1t2.7万円ほど。

保管と流通だけで1.5万円ならば続かないと思い、2016(平成28)年に飼料用米専用倉庫を建造した。これはアメリカで使用されているトウモロコシを保管するための巨大なビニールハウスをモデルにしている。幅約40m×奥行き約75m(3,000平方m)、高さ約13mで、ベルトコンベアを完備し、搬送能力は毎時20~30t。籾米保管でバラ積みしており、投入はチェーンコンベアで上から落とし、山のようになる。搬出も地面に設置しているチェーンコンベアで可能だ。フレコンだと運送屋が1袋ずつトラックから降ろし、袋を開いて中身を出し、それをたたむ作業が必要だったが、今は4t車や10t車でのバラ積みが可能となった。現在はほぼ同スペックの2号棟を建設中で、来年秋を目途に稼働する。

豚に給与する飼料約1.1万tのうち、メインは飼料用米約4,500tと食品残渣約3,000tで、約7割が為替に左右されないエサとなった。正直言えば、海外飼料を使用していたときは地域から「出て行け」と言われることもあったが、150軒近い農家と付き合っている今は、地元の人たちからの理解も得られている。飼料用米普及が進まない原因は生産コスト低減という話があるが、私は流通と保管こそが課題だと思っている。物流費がこれからさらに上がるかもしれないなか、運賃をかけずに穀物を保管していくことも必要だろう。

〈「『お米育ち豚プロジェクト』利用を広げる取り組みについて」コープデリ生活協同組合連合会CSR推進室・岩佐透室長〉
飼料用米を給与した豚のブランド「お米育ち豚」が2018年度で10周年を迎える。お米育ち豚プロジェクトでは出荷前の2か月間に飼料用米15%を配合した飼料を豚に給与しており、2017年度で飼料用米数量1,915t、豚7万7,400頭の予定。約7.8万頭というのはコープデリ連合会が取り扱う国産豚肉の総販売数量の約半分だ。

コープデリ生活協同組合連合会CSR推進室・岩佐透室長

コープデリ生活協同組合連合会CSR推進室・岩佐透室長

プロジェクトのきっかけは、組合員から食料自給率について心配する声があり、2008年ごろから生産者に飼料用米を作ってもらい、家畜に給与する取組を開始した。販売は宅配事業が2009年、店舗事業が2010年スタート。

販売数量が半分まで伸びた要因は、美味しさと価格、ちょっと社会に役立っている、という3点だ。美味しさは理屈では中々理解されないが、実際に食べてもらうと評判が良い。価格は普通の産直豚肉と比べて100gあたり20円、約10%程度プラスして販売している。そして組合員も倫理的消費を求めている。米の消費減少、耕作放棄地の増加を不安視する組合員も多いが、単に米を食べようという運動をしても奏功しないので、米を食べた豚を食べることで少し社会に役立つという考えだ。

当会が扱う産直豚肉の全量をお米育ち豚にするという目標がある。そのために、2018年度では産直豚肉のうち約70%の10万頭をお米育ち豚にしていきたい。また、今は生産者の顔が見える取組ということで、パッケージに生産者が紹介されることも多いが、今後は飼料用米生産者と食肉生産者両方を売場で紹介することも考えている。

〈「飼料用米を活用した耕畜連携と銘柄卵確立」(農)会田共同養鶏組合・上村博文組合長〉
我々は長野・松本市の養鶏組合で、成鶏約17万羽を飼育している。そのうち、建物の中で放し飼いにする「平飼い飼育」は約6.5万羽だ。

(農)会田共同養鶏組合・上村博文組合長

(農)会田共同養鶏組合・上村博文組合長

当組合の特徴は、飼料がNon-GM(遺伝子組換無し)、PHF(ポストハーベストフリー=収穫後農薬散布無し)という点のほか、今申し上げた通り平飼い鶏舎・開放鶏舎といったアニマルウェルフェア飼育を行い、農場HACCP認証も取得している。

2008年から、国の「国産飼料資源利活用促進総合対策事業」を活用し、地元の稲作農家と飼料用米の推進協議会を立ち上げた。世界的な穀物価格の高騰などが背景にある。農家からは専用品種を使い、立毛乾燥にチャレンジしたいという要望があったので、べこあおば、ほそおもて、ふくおこし(信交507号)の試験栽培と、圃場乾燥の実証試験を実施した。飼料用米の付加価値をいかに高めて販売できるかも課題であったため、鶏糞を堆肥に活用する循環型農業にも挑戦した。

トウモロコシとの栄養価比較試験では、玄米・籾米ともに蛋白質は遜色ないものの、粗繊維は籾米で高い値が出たため、配合割合で問題になる恐れがあった。また、代謝エネルギーも籾米は低い数値を示しており、カロリー補正が必要と考えた。しかし、採卵鶏への給与実験を行うと、玄米・籾米に関わらず採食性は良好で、加工しない籾米でも給与は可能であるという結果が出た。ただし、卵黄色が薄いレモンイエローになる問題が浮上したため、自然酵母を使ったカラー補正を行い、この問題を解決した。

そして2013年から、籾米を8%給与した鶏による鶏卵を、主に生活クラブ生活協同組合長野に供給し始めた。現在は飼料用米専用サイロと倉庫も建設し、配合率も20%まで引き上げている。しかし、籾米を20%にしたことで繊維質が増え、鶏が水を多く飲み、軟便になるという新たな問題が出てきた。試行錯誤した結果、成鶏段階ではなく、育成段階から飼料用米を給餌することで問題をクリアした。また、籾米の給餌によって、採卵鶏の砂肝の筋肉が良く発達するなどの効果も出ている。現在は全ての鶏に籾米20%配合のエサを給餌しており、飼料用米の購入実績も2016年で1,824tまで来ている。

〈米麦日報 2018年3月15日付より〉

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