民間が「新潟市農業の将来ビジョンに関する政策提言」とりまとめ
(公財)食の新潟国際賞財団(理事長=池田弘アルビレックス新潟会長)内に設けられた「新潟市農業将来ビジョン研究会」はこのほど、「新潟市農業の将来ビジョンに関する政策提言」をとりまとめ、新潟市の篠田昭市長に提出した。「危機的状況から発展経路への転換に向けて」とサブタイトルを附した提言では、基本方向を、〈1〉米の生産性向上と需要に応じた供給体制の整備、〈2〉園芸生産の導入による水田農業の確立、〈3〉農業と食品産業の有機的連携による高付加価値産業化――の3点に据えている。
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提言では、新潟市農業が抱える課題を、〈1〉米需要は、今後一層変化する(高齢化と少子化の進展による人口減少のさらなる加速化、米の需要は量、質ともに変化/年間8万t減の拡大の恐れ、家庭用の減、業務用・加工用の伸展)、〈2〉主食用米生産への過度な依存(青森や秋田は、主食用米生産に依存した農業構造から園芸複合への転換に取り組み農業産出額が増大)、〈3〉市内に賦存するポテンシャルの不十分な活用(集積された食品産業と、広大な農地と意欲的な経営者による農業との連携不足)と整理した上で、「国の政策に対する要請」として以下の3点を掲げている。〈1〉米の需要に対応した弾力的供給の確保と水田農業の経営安定の確保(水田農業経営の安定のための収入《又は所得》に着目した支援措置の導入、業務用・加工原材料用の需要に対応した10a所得の最大化、オープンな現物市場の育成、米の輸出拡大に向けた環境整備)、〈2〉家族経営から雇用労働力を中心とした農業経営への転換の円滑化、〈3〉地理的条件等によるコスト要因の解消に対する支援。
一方で「新潟市が構築すべき政策」を、〈1〉「米王国」にふさわしい実力発揮と競争力をもった産地の創生(実需ニーズの的確な把握と実需・消費地との結び付き、低コスト化・競争力強化のための圃場整備、ICT等省力化技術の導入、米の輸出基地形成に向けた取組み)、〈2〉水田農業経営の構造転換を通じた所得確保(園芸団地の形成と市場・販路拡大及び民間企業とのプラットフォームの構築)、〈3〉新潟市の農業発展とまちづくり振興の両立のための措置(農地を含めた土地の有効活用を図るため『まちづくり』の観点から、農業の振興と地域住民の定住環境の整備を一体的に推進する仕組み、低平地に市街地と農地が形成されている新潟市の水路・水利施設が農業や市民生活の面等で果たす役割を踏まえた地域マネジメントのあり方)と整理した上で、「市長直属の検討体制を整備し、1年以内に結論を得て実行に移すべき」と提言している。
食の新潟国際賞財団は、「食の新潟」の精神と情熱を次世代に継承し国内外に発信するため、県内各分野の有志によって2009(平成21)年に設立されたもの。財団のファウンダー・特別顧問である古泉肇氏(新潟市国家戦略特区推進協議会会長、亀田製菓(株)名誉顧問、元全国米菓工業組合理事長)が市長に対し、「将来に向かって新潟市農業が発展するための方策を検討すべき」と提案したところ、「ならば民間サイドからの政策提言を行ってはどうか」との示唆がなされた。これを受けて財団内に設けられたのが「新潟市農業将来ビジョン研究会」。研究会は昨年10月24日から4回の会合を経て今月19日、提言のとりまとめと提出に至っている。研究会のメンバーは以下の通り(敬称略)。
〈座長〉
▽武本俊彦(野村アグリプランニング&アドバイザリー(株)顧問、元農林水産政策研究所長)
〈座長代理〉
▽安藤光義(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
〈委員〉
▽阿部貴美(国際総合学園新潟農業・バイオ専門学校長)
▽伊藤忠雄(新潟大学名誉教授)
▽清野誠喜(新潟大学農学部教授)
▽鮫島信行(鹿島建設(株)顧問)
▽鈴木孝男(事業創造大学院大学教授)
▽平石武(ソリマチ(株)取締役)
▽松本裕志((株)エイケイ社長付特命担当役、元関東農政局食糧部長、元全国米菓工業組合専務)
▽吉田俊幸(《一財》農政調査委員会理事長、元高崎経済大学学長)
〈アドバイザー〉
▽渡辺好明(《公社》全国農地保有合理化協会会長、新潟食料農業大学学長、元農林水産事務次官)。
〈米麦日報 2018年3月26日付より〉