【米穀VIEW982】漂流する米政策 Ⅵ 平成30年産に向けて 鳴り物入りで発足した全国組織、「公開」めぐり「足並みの乱れ」

米麦日報 2018年3月30日付
「いわゆる減反廃止」元年である平成30年産。国が生産数量目標の配分をやめるのは、(生産調整を実施するか否かを)「生産者の自主的判断」に委ねるためだが、「需要に応じた生産の取り組み等を推進する」ことを目的とした民間団体「全国農業再生推進機構」(いわゆる全国組織)が鳴り物入りで発足してしまった。「せっかく国が配分をやめたのに、それを代行する機関を作ってどうする!?」といった類いの厳しい声に対して、「あくまで需要と産地のマッチング支援“等”が主眼だ」といった表現で、火消しにやっきになっている、かのように見える。実は、同機構のホームページ(http://www.zenkokusoshiki.jp/)が密やかに開設されており(所属団体の全てがリンクを張っていない)、そのなかで第1回(昨年12月21日)、第2回(今年1月17日、書面)、第3回(2月16日)と、これまで3度に及ぶ「総会」の議事概要あるいは議事録が「公開」されている。そのなかで明らかになったのは、まさしく「公開」をめぐる「足並みの乱れ」だ。第3回総会の議事概要には、以下の件りが登場する。

▽米穀機構「(略)議事の公開について。公開するかどうかは利害得失もあり、いろいろ意見があると理解しているが、心配しているのはこの会が世の中からどう見えるかということだ。1月17日の日経新聞に記事が出た。揶揄的な表現もあり、『非公開で実施した』『独自に入手した議事録によると』『参加を留保している団体も少なくない』というように、憶測のような事も含めて出ている。業界紙ならともかく、日経新聞であり国民の相当が見ている。こうした憶測記事が出るのであれば、むしろ公開したほうが良いのではないか。せっかく(略)公明正大にやっているのに、隠れてやっているという印象を与えることは問題。あらためて公開をお願いしたい」

▽全中「まだ機構は立ち上がったばかりであり、どういう議論が進むか分からない段階。決して公開しないと言っているのでは無く、どういう仕事ができるのか見たうえで、対応についてみなさんのご意見を聞いていきたい。性急に物事は進めたくない。なお、公開にはリスクがあると思う。またマスコミを呼ぶという事は、事務局の負担や費用など様々な負担がかかる。様々な事を検討したうえで対応してまいりたい」。

▽日本炊飯協会「(略)我々も公開すべきだと思っている。冒頭、事務局の説明で、多数が賛成でないとあったが、本当にそうなのか。我々は公開したほうが良いと表明している。他にもいらっしゃるはずだ」

▽事務局「団体名は伏せるが、7団体程度から公開すべきでないとの意見をいただいた。一方で賛成は3団体から。まだ正式に全団体へ確認したわけではないが、設立総会の後、年末の時点でお聞きしたところ、そうした意見をいただいている」

▽全中「公開を単純に否定しているのではなく、よく検討した方が良いと考えている。皆さんの発言が審議会と同様に、ひと言ひと言が責任ある話になり、ICで録音され、それはあとで修正できない。また、外部の相当な大きさの会議室を用意したり、費用がかかる。大手マスコミが来ると、TVカメラも入ってくるし、結構大がかりなオペレーションになる。こうしたことも含めて幹事団体で議論させていただきたい。費用の問題など様々な課題を検討しないと、オープンにやるというのは、そう簡単ではない。団体を代表する発言になるので、そういう事も含めて皆さんが理解・納得した上でやるのであればできる。再度、幹事会で相談させてほしい」

▽全国農業会議所「公開が必要という意見は理解するが、まずは議事録で協議の経過等について、プレスリリースも含めて公開することから始め、体制が整えばそうしたことも考えてもよい。まずは議事録を、確認を取りながら公開していくことから始めてはどうか」。

▽国産米使用推進団体協議会「基本的には公開すべきだと考えている。機構の活動目的にもあるが、それぞれの課題や問題を関係者で共有することも意味のある場だと思っている。今後どう課題を解決していくか、生産者も含めて良い環境にすべく議論するわけだから、ガラス張りにすべき。発言内容に責任を負うことを懸念する意見もあるが、それぞれの代表で出席している以上、誰から聞かれても読まれてもよいよう、きちんとした考えを持って発言する。ぜひ公開する方向で検討してほしい」

▽全中「そうしたことも含め、幹事団体で議論したい」

〈米麦日報 2018年3月30日付より〉

【関連記事】
〈需給俯瞰〉産地ごとに占う30年産米の行方〈1〉 第1回作付動向は前年並み
30年産米の産地別「生産量目安」721万4,789t、45道府県中25県が前年シェアを踏襲
30年産米の検査対象銘柄、うるち新規設定は52銘柄
2018年度の食糧用小麦需給見通し、総需要573万t、内麦82万t=農水省