農研機構、高CO2条件下で米の収量を増やす手法を開発
農研機構は10日、CO2濃度が高い条件下で米の収量を増やす研究成果を公表した。
この研究では現在の1.5倍のCO2濃度(50年後を想定)で、多収品種(タカナリ)が持つ籾数を増やす遺伝子「AP01」をコシヒカリに人工交配、DNAマーカー選抜した。通常のCO2濃度では登熟歩合が低下し、増収率も5%に留まるが、高CO2濃度の条件下では登熟歩合が低下せず、増収率は16%まで伸びた。
光合成で生成された成熟期の稲の茎部にある増収物質の量は、コシヒカリ・人工交配コシヒカリともに増加した。しかし、通常のコシヒカリは穂まで増収物質の増加分が流れない一方、人工交配コシヒカリは穂まですぐに流れ、明らかな増収に結びつくことが判った。つまり、高CO2の環境では、通常のコシヒカリでも増収に結びつく物質が生成されるが、籾数が足りずに穂までは達しない。人工交配コシヒカリは籾数が増える遺伝子を持つため、穂までしっかり増収に結びつく物質が行き渡る、ということになる。
今回の籾数を増やす遺伝子「AP01」の人工交配、DNAマーカー選抜はコシヒカリだけではなく、既存品種にも容易に導入ができる。農研機構は「将来的に予想されている大気CO2濃度が上昇した環境に向いた多収品種の育成に貢献できる」とし、今後は温暖化に伴う気温上昇に適応した多収品種の育成研究も進めるとしている。
〈米麦日報 2018年8月13日付より〉