第3回穀粒判別器検討チーム、条件次第で機器単体使用・目視併用へ
農林水産省は去る8月1日、第3回穀粒判別器に関する検討チームの会合を開いた。焦点はこれまでの会合を踏まえた検査機器の精度について。条件に応じて穀粒判別器単体の使用を認めるケースと、検査員による目視を併用するケースの整理が行われたほか、次回は「実際に農産物検査に関わる方や流通に関わる方を呼んで、農産物検査制度の検証へと議論を移す」(穀物課・堺田輝也課長)こととなった。(以下、特筆ない限り穀粒判別器の測定について)
【前提】
〈1〉品種・産地などで測定結果に差が生じないか、〈2〉明確に正しい値(真値)がある場合に正しく測定できるか、〈3〉単体機器で繰り返し測定した場合のブレはどの程度か、〈4〉3社の機器間のブレはどの程度か、〈5〉ブレが等級間の基準値の差より小さいか(ブレ幅は等級判別に影響を与えるか否か)、〈6〉機器と目視との差はどの程度か――というのが、第1~2回の議論を踏まえた検証事項。
【データ】
上記前提に対し農水省は、死米・胴割粒・砕粒・着色粒の4種類ごとに品種・混入割合が異なる120パターンの試料に加え、1~3等の基準値程度に死米・胴割粒・砕粒を加えた15パターンの試料を準備し、3社の機器を使ってデータを収集した。
【検証方法】
粒数の測定結果に基づいた「合成された標準偏差(標準誤差の2乗と標準偏差の2乗の和の平方根=測定結果の信頼性を表す標準偏差)の2倍」という計算によって、約95%のブレ幅を把握することができる。これと死米・胴割粒・砕粒では±0.5%(1,000粒中5粒)、着色粒では±0.05%(1,000粒中0.5粒)という基準と比べて、合成された標準偏差の2倍が小さければ機器に一定の信頼性があるといえる。なお、±0.5%・±0.05%の根拠は、農産物検査規格の基準値が1%単位、0.1%単位であるため、より小さな範囲と比較すれば誤判定はほぼ起きないことから。
【結果】
〈1〉品種・産地などで測定結果に差は生じていない。〈2〉~〈4〉死米・胴割粒・砕粒の割合が1,000粒中1~10粒の場合、3社の測定結果は目視と同程度かそれ以上の精度。ただ、死米・胴割粒が多い場合は3社のいずれも基準以上にブレがあった(以下、基準超過)。砕粒が多い場合はA社のみ良好な結果で、B社・C社は基準超過。着色粒の場合もA社のみ良好な結果だった。〈5〉死米・胴割粒・砕粒・着色粒のいずれも、機器のブレは等級間の基準値の差より小さかった。〈6〉死米・胴割粒は目視以上の精度を示した。砕粒は、混入率の低いケースではA社が目視以上、B社が目視と同等、C社が目視未満の精度。混入率が高いケースでは3社のいずれも目視未満の精度となった。
【論点】
上記を踏まえ、論点は4つに絞られた。▽(Ⅰ)検証方法=そもそも測定結果の許容範囲を定めるために基準が必要(本紙「米麦日報」註:上記【検証方法】で言及したので、結論省略)。▽(Ⅱ)死米・胴割粒・砕粒=混入率が低いケース、高いケースそれぞれで機器をどう利用するか、▽(Ⅲ)着色粒=農産物検査では死米等よりも厳格な基準になっているなか、機器をどう利用するか、▽(Ⅳ)重量比=機器は粒数の測定で高い精度を持つが、重量比に換算した場合は精度が急激に落ちる。これをどう考えるか。
【結論】
▽(Ⅱ)死米・胴割粒・砕粒=1,000粒中1~10粒と混入率が低いケースでは、機器単体で使用して問題ない。混入率が高く検査等級の境界領域に相当する(1~2等、2~3等の基準値ギリギリの混入数の)ケースは、機器と目視を併用すべき。▽(Ⅲ)着色粒=混入数が「ゼロ」ならば機器単体の使用に問題ない。1粒以上の混入はメーカー間の精度差も踏まえ、次回、農水省がメルクマール(指標)を提示する。▽(Ⅳ)重量比=機器が粒数→重量比に換算する際に用いる重量換算値は2001(平成13)年の農産物規格規程を基本としているため、重量換算値の見直しが必要。
最終的に着色粒の混入数が1粒以上の対応は次回に持ち越されることとなったが、今回は一部条件で機器単体の使用を認める方向に着地した。このほか、委員からは「目視の結果が良すぎる。かなり綺麗な米の中に不良粒を少量混ぜているから判るが、実際の現場では他の様々な米も混ざっているので誤判定が起きるのではないか」「着色粒は3社の精度差があるので、それぞれで単体使用の基準を決める選択肢もある」(田中秀幸委員=産総研)、「1種類の不良粒が等級判定に影響を与えるほど混入するケースは稀」「そもそも着色粒の基準自体が厳しい」(杉山隆夫委員=農研機構)などの意見が出た。
〈米麦日報 2019年8月5日付〉