「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会」農産物検査の銘柄証明で目視廃止、令和4年産から書類審査へ/農林水産省
農林水産省は3月24日、第7回「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会」を開催した。今回の目玉は銘柄証明での目視検査廃止だ。案では、令和4年産から目視鑑定に代わり、書類審査に移行する。また、現行の都道府県別「産地品種銘柄」(都道府県名+品種名=例えば「新潟県産コシヒカリ」)に加え、全国一律の「品種銘柄」(品種名のみ)を順次設定する方針だ。
〈目視から書類へ〉
現行の銘柄証明は目視による鑑定が原則だが、令和4年産から種子購入伝票、栽培記録などの書類で審査する。農水省は今年中に必要書類を具体的に明示する見通しで、現行の検査でも鑑定前に参考として収集しているものを想定している。
目視廃止のそもそもの背景には、新品種開発の加速によって品種数が増加し、「目視による銘柄鑑定の困難度が増している」(農水省)ことがある。委員からは書類審査への移行に賛同の声が相次いだが、唯一、真っ向から異を唱えたのが、全国25%以上の登録検査機関を擁するJAグループだ。
全農の栗原竜也米穀生産集荷対策部長は、「生産者が大規模化し品種も増加するなか、(目視で)銘柄を誤って鑑定することも想定されうるのが実情」とは認めつつも、「万が一(書類上で)銘柄の過失(申請ミス)があると、検査の信頼失墜に繋がる。せめて、各県の必須銘柄・選択銘柄のうち、必須銘柄は目視鑑定も可能としてはどうか」と要望。
しかし農水省は、「現在でも書類に不備があったり品位検査で明らかに品種が異なったりする場合は品種の証明がなされていない」「必須銘柄には目視も、という提案については、また色々と伺いながら実情がどうなのかを踏まえつつ、考えさせていただきたい」と玉虫色の回答に終始し、目視存続には消極的な姿勢を見せた。
〈全国一律の「品種銘柄」〉
農産物検査規格規程には「産地品種銘柄」(都道府県名+品種名)、「品種銘柄」(品種名のみ)などの区分が規定されているが、現状、「品種銘柄」は指定されておらず、全て(約870銘柄)が「産地品種銘柄」扱いだ。また、銘柄証明は産地(都道府県)によって証明対象銘柄(品種)が異なり、毎年産ごとに決めている。県内すべての登録農産物検査員が目視できなければいけない「必須銘柄」と、県内に最低1つの登録農産物検査機関が目視確認できればいい「選択銘柄」があるわけだが、明らかにコシヒカリであってもその産地の証明対象銘柄でなければ、検査証明書の銘柄欄には「-」と記載されることになる。
今回の案では、「品種銘柄」も積極的に設定していく方針だ。「産地品種銘柄」の品種は“原則として”「品種銘柄」としても指定することになる一方、「品種の許諾が特定の都道府県に限定され育成者権の保護に配慮すべき」(例えば銀河のしずくのような県オリジナル品種)ものについては、「品種銘柄」に設定しない。生産者から「品種銘柄」の検査を申し込まれた登録検査機関は原則として検査を行うことになるが、先述の書類審査に移行した場合でも、検査機関にとっては従来よりも審査(鑑定)対象品種が増大することは間違いない。そのため農水省は、品種の特徴などを検査機関に提供するなどしてフォローするとしている。なお、これに伴う各種改正は今年から順次始めるとしている。
また現在、新たな「産地品種銘柄」設定には、2年間の栽培試験と「目視鑑定が可能」などの要件が存在しているが、栽培試験期間を1年間に短縮し、(書類審査に移行するので)目視要件も廃止する。さらに検査機関の負担軽減を目的に、年間検査実績が1t未満の「産地品種銘柄」「品種銘柄」は基本的に廃止する。
なお、先述の通り「品種銘柄」は銘柄証明のみで、産地証明は対象外だが、表示について委員から問われた農水省は、「新潟では『にこまる』が産地品種銘柄に設定されていないが、(仮に『にこまる』が品種銘柄に設定された場合)まず銘柄証明を受けたものについては、農産物検査で『にこまる』という銘柄が証明され、(米トレサ法を遵守していれば)米トレサ情報に基づく『新潟県産』という産地情報が伝達されることになる。これを併せると、農検法と米トレサ法によって『新潟県産にこまる』という表示が可能になる。確認方法の表示は消費者庁と連携しつつ対応していきたい」と答えた。
現行案通りに進めば、「産地品種銘柄」はある種の「地域銘柄」、「品種銘柄」は「全国銘柄」と捉えることができる。極端な例ではあるが、産地段階の検査対象銘柄設定手続きを経ずとも「北海道産ヒノヒカリ」や「鹿児島県産あきたこまち」が量販店に並ぶ可能性もあるということだ。
〈米麦日報2021年3月26日付〉