〈米穀VIEW〉先物はコメ生産・流通円滑化に「必要かつ適当」か「最後の」本上場検証(4) クリアできている「十分な取引量」

〈第3回〉〈米穀VIEW〉先物はコメ生産・流通円滑化に「必要かつ適当」か「最後の」本上場検証(3) 明確な数量要件が存在しない「十分な取引量」

本上場の最初のハードルである「十分な取引量」とは、取組高でなく「出来高」で、実t数でなく「枚数」が、〈1〉他の先物商品が本上場した際の取引量(出来高枚数)と、〈2〉コメの過去の取引量(出来高枚数)を上回っていることが要件――と整理した。そこで、コメ先物のここまでの出来高枚数(試験上場期間である2年ごと)を一覧にした。

試験上場期間中の取引高(単位=枚)

試験上場期間中の取引高(単位=枚)

 
「他の先物商品が本上場した際の出来高枚数」と比べてみよう。比較対象は「とうもろこし」(当時は東京穀物商品取引所)だ。とうもろこしは1992年(平成4年)4月20日から試験上場を開始。わずか2年後の1994年(平成6年)4月5日から本上場が始まっている。
 
月間出来高は、1992年4月で6万4,552枚、1993年4月で9万9,676枚、本上場後の1994年4月で22万7,571枚だ。つい先月、過去最高の月間出来高を更新(2021年3月、12万5,705枚)したコメと比べると、1993年を上回り、1994年に見劣りする。とうもろこしが2年で20万枚台に乗せたのに対し、コメは10年かけて10万枚台。実数の上では優劣が明らかなように見えるが、実はこれはかなり不公平な比較だ。
 
端的に言って、とうもろこしが上場された頃と今とでは「時代が違う」のである。商品先物取引所法(現在の商品先物取引法)改正によって、いわゆる「不招請勧誘」が禁止されたのが2007年(平成19年)。それ以前と以後では、商品先物業界の景気がまったく異なるし、取引員の数も取引所の数も全く違う。むしろ総体の国内商品先物が(世界的には急増しているのに)冷え込んでいるなかにあっては、健闘しているとすら言える。
 
試みに、国内商品先物全体に占める出来高の割合を弾き出してみよう。1994年のとうもろこし0.75%(227,571÷30,481,313)に対し、2020年(令和2年)のコメは0.83%(125,705÷15,161,095)だ。優劣が明らかというなら、これ以上のものはない。
 
もう一つの要件、「コメの過去の出来高枚数」と比べてみよう。2019年(令和元年)8月8日から現在までのコメ先物の出来高枚数が、いかに抜きん出ているかが分かる。また2017年(平成29年)8月8日〜2019年8月7日の2年間(つまり前回の試験上場期間)の出来高枚数が、いかに不認可にならざるを得なかったほど少なかったかも一目瞭然だ。
 
これはつまり、大阪堂島商品取引所が、この2年間、いかに努力を積み重ねてきたかの成果だとも言える。それは、各種セミナーや個別相談会の開催といった地道なものが結実し、特に新潟コシが抜きん出て出来高枚数を稼いだわけだが、加えてこのところ月一度開催されてきた受託会員同士の営業担当者会議によって意志統一と意志確認を繰り返してきたことも大きい。
 
3月22日からスタートした新商品・新潟コシEXW(輸出米)が未だ出来高・取組高ともにゼロで推移しているのが残念ではあるが、それでも現在のペースを続けていれば、どう穿った見方をしても「十分な取引量」要件をクリアすることは、認めざるを得まい。
 
〈米麦日報2021年4月14日付〉