〈米穀VIEW〉先物はコメ生産・流通円滑化に「必要かつ適当」か「最後の」本上場検証(5) 「当業者の参加割合」に死角なし

〈第4回〉〈米穀VIEW〉先物はコメ生産・流通円滑化に「必要かつ適当」か「最後の」本上場検証(4) クリアできている「十分な取引量」

本上場の最初のハードルである「十分な取引量」は、クリアできていることが分かった。だが過去に試験上場の延長を認可した際、2013年(平成25年)と2015年(平成27年)の「(食料産業)局長通知」、2017年(平成29年)に横槍を入れた自民党の申入書のなかには、単純に「十分な取引量」にとどまらない、言わば「追加要件」が登場する。その一つは「取引参加者層の厚み」(特に生産者を中心とする当業者のボリューム)だ。

だが、この要件、受け止め方によってどうとでも解釈が可能だ。それは、〈1〉単純に「当業者(現物の取扱業者)と非当業者(投資家)との参加割合」といった程度の意味なのか、〈2〉取引量に占める会員別シェアに偏りがないかとの問いかけなのか、あるいは〈3〉当業者の最大勢力であるJA系統の参加なしに認可はまかりならん、という意味なのか、だ。

まず当業者の割合だが、その現況を知る術はない。かつての東京穀物商品取引所(現・東京商品取引所)なら明確に当業者・非当業者割合という統計があったが、現在の大阪堂島商品取引所では、いわゆる「7分類」しか統計が存在しないためだ。だが、堂島の「コメ試験上場検証特別委員会」が過去3度にわたってとりまとめた報告書には、明確な記述がある。

「コメの総建玉に占める当業者の割合(平成23年8月以降の各月末平均値)」は、2013年版で「平成25年5月末までの実績で21%となっている。他の農産物では、とうもろこし30%、一般大豆28%、小豆32%、粗糖43%となっており、海外市場、例えばシカゴ商品取引所においては、小麦21%、とうもろこし28%、大豆28%となっている」、2015年版で「平成27年6月末までの実績で19.3%となっている。他の農産物では、とうもろこし25.1%、一般大豆29.5%、小豆55.3%となっており、海外市場、例えばシカゴ商品取引所では、小麦20.1%、とうもろこし26.4%、大豆30.9%となっている」、2017年版で「平成29年6月末までの実績で17.6%となっている。他の農産物では、とうもろこし24.5%、一般大豆26.2%、小豆64.0%となっており、海外市場、例えばシカゴ商品取引所では、小麦16.8%、とうもろこし28.5%、大豆34.9%となっている」とある(食品産業新聞注=2019年は検証委が開かれなかった)。

6年間で当業者割合は低下傾向にあるものの、問題なのは他の商品や海外市場との比較だ。報告書では2013年版、2015年版、2017年版いずれも、「これらのことから、コメ先物市場に参加している当業者の割合は、他の商品や海外市場に比べて、大きな違いは見られなかった」と結論づけており、この点では問題ないものとみられる。

次に「取引量に占める会員別シェアに偏りがないか」だが、これも報告書に記述がある。「会員の取引参加状況については、取引開始からしばらくの間、大阪堂島商品取引所の理事長が代表権を有する特定の会員が取引の大多数を占めており、多数の参加を得た市場とは言えないのではないかとの指摘もあった」との箇所だ。この点、「建玉に占める会員別のシェアの推移をみると、平成24年6月には、東京コメ、大阪コメを合わせて1社が総出来高数の86.3%を占めていたが」、2013年版「平成25年5月末現在では、その割合は28%にまで低下している」、2017年版「平成29年6月現在では、その割合は20.9%にまで低下している」とあり、確実にそのシェアが落ちているのが分かる。報告書では「これらのことから、一定の時期に特定の会員が高い割合を占めていた事実はあるが、徐々に他の会員のシェアも拡大し、現時点ではそのような傾向は認められない」としており、こちらも問題なさそうだ。

問題なのは、JA系統の参加だ。2019年版まで、報告書には特段の記述がなかった。だが2016年(平成28年)10月21日、新商品「新潟コシ」の登場によって、明らかに「風向きが変わった」。詳細なり実名は明らかにしていないが、複数の生産者が参加していることは、堂島も認めている。また大潟村農協(秋田)のような“異端児”だけでなく、複数の単協が参加していることが明らかになっている。つい先般、北蒲みなみ農協(新潟)が自ら参加していたことを表明したばかり。もちろん全国団体(例えば全中)が「諸手を挙げて賛成」でないことは周知の事実。だが、かつてのような「何が何でも反対」姿勢から、「(先物が)あっても無視する」程度には軟化した、かのように見える点は、要件に合致しているかどうかはともかく、少なくとも前進ではある。

〈米麦日報2021年4月15日付〉