「日パラオ農業協力」スタート、タスクフォース設置
農林水産省とパラオ共和国農業・漁業・環境省は5月21日、「日パラオ農業協力に関する覚書」の署名式を開いた。署名式後、両国の農業協力を促進するため設置した「日パラオ農業協力促進のためのタスクフォース」を開始。今後の計画について議論した。
「日パラオ農業協力に関する覚書」では、
〈1〉食料安全保障の強化及び栄養改善に向けた連携
〈2〉生産力向上と持続性とを両立させる農業の実現
〈3〉官民セクターによる知見及び専門知識の交換
〈4〉投資促進に向けた課題の特定及びこれに対処するために必要な取組の実施
――について協力するとし、その促進に向けてタスクフォースを設置した。
日本側は農林水産大臣政務官、パラオ側は農業・漁業・環境大臣が監督者を務める。協力の優先分野としては、
△パラオにおける新鮮、高品質及び安全な野菜及び果実の安定供給
△パラオにおける畜産業の発展
――とした。
署名式はWeb会議形式で実施。野上浩太郎農相、柄澤彰駐パラオ日本国大使、三重県の鈴木英敬知事、パラオのスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領、パラオの農業・漁業・環境省ら農業協力の関係者が出席。三重県はパラオと友好提携を結んでいる。
野上大臣は「パラオの美しい花『ルー』(パラオの国花)のように、農業の連携をできることを祈っている。近いうちにパラオで、あるいは日本で顔を合わせて話ができるのも楽しみにしている。6月の『第9回太平洋・島サミット』も楽しみにしている」と挨拶した。
柄澤大使は「日本とパラオは、歴史的・文化的・地政学的に『トクベツ』(パラオ語)な関係にある。第二次世界大戦以前には、パラオの人口を上回る数の日本人がパラオに入植し、その日本人によって、2,000haを超える農地において農業が営まれ、パイナップルのように缶詰工場で加工されて海外へ輸出されるものすらあった。第二次世界大戦以降は、農業生産は大幅に減少し、パラオは現在多くの食料を輸入に頼っている状況。COVID-19(新型コロナウィルス肺炎)に対しては、依然パラオは世界でも数少ない感染者ゼロの国の一つだが、他方でCOVID-19禍の中で食料の輸入依存への不安が高まり、国内農業の重要性が見直されている」とした。
また、「2年前に在パラオ日本国大使を拝命して以来、パラオの農業をいかに発展させることができるに努めてきた。これまでの農業協力の成果の一部として、2020年2月に官民農業ミッションを日本からパラオに派遣。その後、無償資金協力により、トラクター等の農業機械をパラオ政府農務局及びコロール州政府に供与した。さらに、パラオにおける土壌改良試験や野菜の市場調査を実施した」とも。
スランゲル・ウィップス・ジュニア大統領は「我が国では2,000haの農地が日本人によって開墾されていたが、現在は100haもない。食品のほとんどを輸入に依存しており、約90%が輸入されたもの。あまり健康的なものではないと考えている。我が国の生産を拡大していく必要があり、食料安全保障も担保しなければならない。そして、有機食品などの健康的な食事をとらなければならない、多くの人に農業に従事してもらわなければならないと思っている。資源を生活に役立つように使用していかなければならないが、これを単独で行っていくことはできない。パートナーが必要だ」と述べた。
握手をする柄澤大使とウィップス大統領
〈米麦日報2021年5月25日付〉