明治用水漏水事故、第1回復旧対策検討委員会が初会合、東海農政局「パイピング現象確認できたものの原因は不明」「老朽化も否定できず」
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委員長は農業土木学が専門の三重大学・石黒覚名誉教授。ほか5人の有識者が委員を務める。今回は検討委員会に先立ち、現地調査を実施。委員らは橋の上から状況を確認したのち、漏水箇所を視察した。
検討委員会では、水の通り道ができるパイピング現象が起こっていることは確認したものの、水が通っているルートや事故発生の原因などについては不明で、今後調査・検討していくとした。6月中旬に第2回を開催し、詳細な調査・解析方法を議論する予定だ。第3回以降は、「一定のデータが得られた段階で開催する」とした。
検討委員会後、石黒委員長らは会見を開き、議論の内容を報告した。「検討委員会の目的は事故原因の分析と本復旧対策の検討」としたうえで、「漏水発生のメカニズムと原因は分けて考える必要がある。発生メカニズムとしては、水の通り道ができ、パイピング現象が発生したと考えられる。一方、原因は今後解析を行う必要があるが、造成から60年以上経過していることから、経年変化は無視できないという印象だ」とした。
明治用水頭首工は、堰(せき)の全長が167.3m、受益面積は安城市ほか7市の4,759ha(水田4,730ha、畑29ha)。最大取水量は農業用水が毎秒30.00立方メートル(1秒間に30tの水を取水)、工業用水は毎秒4.02立方メートル。1951~1957年にかけて造成され、1978~1983年に改修工事が行われた。さらに、2017~2022年にかけて耐震化工事が行われていた。
今年5月15日に漏水が確認され、17日には漏水量が増加。堰の上流側水位が低下したため、取水が停止した。仮設ポンプの設置を進め、19日に工業用水の取水を再開(通常の3割程度)した。さらに漏水箇所の周囲を土のうで囲む止水対策も実施。25日には農業用水の試験通水を開始し、30日に通水(4ブロック順、1日通水・3日断水)を開始した。6月2日現在、設置済のポンプは162台(毎秒取水量約7.8立方メートル)。水位を上げるため、右岸側に矢板(板状の杭)・土のうを設置する応急対策が始まった。
現地調査は明治用水の水門(堰柱・ゲート設備)周辺で実施。一番上の写真は、水門の上流側を左岸から見た様子。手前が漏水箇所で、奥に仮設ポンプが設置されている。水門の上部は矢作川の左岸と右岸を結ぶ橋でもある。まず、水源管理所のある右岸上流側の仮設ポンプと、全体の状況を確認した。
水源管理所のある右岸上流側の仮設ポンプ/明治用水頭首工(愛知県豊田市)
周辺ではショベルカーを使い、土砂でポンプや土のう設置作業の足場を造成していた。川に降りて作業する職員の姿もあった。下流には、湧水によって流れ出たと思われる土砂が堆積。橋をさらに進むと、左岸上流側に漏水箇所が確認できた。土のうはおよそ4段積まれていたが、水はせき止められず、常に勢いよく水が流れこんでいた。委員らは岸へ降り、現場に近づいて状況を確認した。
明治用水漏水箇所
〈米麦日報2022年6月6日付〉