神明HDの投資ファンドが生産法人2社に出資、「運転資金のサポート」「集荷・販売のサポート」「農業全体の収益増」など目的に
運転資金・販路拡大・農業経営全体の収益向上支援で、担い手の生産拡大目指す神明ホールディングス(藤尾益雄社長)は9月9日、都内で会見を開き、同社と日本公庫が共同出資するあかふじファームイノベーション投資事業有限責任組合(以下、あかふじファームファンド)が、大規模な稲作の農業法人2社に投資を実施したと発表した。
対象の生産法人はアグリーンハート(青森県黒石市、佐藤拓郎社長)と、川口グリーンセンター(宮城県栗原市、白鳥正文社長)。投資額は各3,000万円、投資日は9月2日としている。
あかふじファームファンドは2020年3月設立、「稲作の規模拡大を支援する目的」で神明HDと日本戦略投資(佐々木美樹社長)が共同で立ち上げた。同年4月には農林水産省から「農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置」に基づいた承認を受け、日本公庫からの出資が認められた。
生産法人に投資を行うのは初のことで、藤尾社長は会見でその目的について、〈1〉運転資金のサポート、〈2〉集荷・販売のサポート、〈3〉農業全体の収益を増やす――の3点を挙げた。
「自治体は離農者の農地の受け皿に困っているが、60haの生産者が80~100haに拡大したときに困るのが販路だ。生産者からすると生産がまず第一で、『我々が全部買いますよ』とすれば、生産者も安心して生産できる」「稲作シーズン以外に野菜や果物を作付けてもらうことで、生産者にもコングロマリット(複合企業)な経営を目指していただきたい。そうすれば従業員にも安定した給料を支払うことができ、人財の確保にも繋がる」などとし、また「現在、主食用米の集荷・販売は全農以外が全体のおよそ7割を占めている。神明グループとして生産者を支援・育成して生産や集荷量の向上を目指し、発信力や存在感を高めることが、ひいては日本の農業や食を守ることに繋がる」と述べ、生産者支援に積極的な姿勢を示した。
今回の対象となったアグリーンハートは2017年設立。黒石市の平地と中山間で延べ65haを作付けている。平地では低コストで量産型、中山間では有機や減農薬など高付加価値型といった両極端の営農モデルが特徴だ。低コスト化に向け、スマート農業も積極的に導入。直播は時期や手法を変えて5パターン実施、自社で水位センサーや温度センシングを作成するなど、取り組みは多岐にわたる。また効率よく有機に取り組めるというメリットもあり、中山間の休耕地再生にも取り組んでいる。
川口グリーンセンターは、米の作付(86ha)から販売、米粉の販売、苗・花きの生産など多角的な事業が特徴。海外におにぎり店を出店する企業を通じ、ニューヨークやパリに米の輸出も行っている。米粉関連では「米粉事業部」を設け、自社製造の冷凍生地を使用した米粉パンのFC事業を全国20店舗で展開中だ。
資金の用途について、アグリーンハートの佐藤社長は「やはり販路拡大。ここで繋がれたご縁を活かして、邁進していきたい」とし、川口グリーンセンターの白鳥社長は「米は収穫してから翌年の秋まで在庫として保管しなければならず、そこにも経費が発生する。運転資金の余力として役立てたい」とした。
あかふじファームファンドの今後の方針として、藤尾社長は「今回2社に実施した投資をさらに広げていきたい。現場では離農する生産者から後継者に次々へと農地が来るが、資金や販路からなかなか広げられないのが現状。我々の支援によって生産者が農地を受け入れ、生産を拡大できるような関係を築いていきたい」と、意気込みを語った。
〈米麦日報2022年9月12日付〉