令和5年産主食用米10月指針「4年産と同水準の作付面積」が目安、6月末在庫は来年「191~197万t」、再来年「180~186万t」/農林水産省食糧部会
農林水産省は10月20日、5年産主食用米の生産量を「669万t」に“設定”した。
同日の食料・農業・農村政策審議会の食糧部会(部会長=大橋弘東大副学長)で、いわゆる10月指針(基本指針=米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針=の改定)を審議、了承を得たもの。
「669万t」は4年産主食用米生産量(9月25日現在)をわずか1万t下回る水準で、4年産と同水準の面積を前提とした。また、令和4/5年(2022年7月~2023年6月)の需要見込みは「691~697万t」で、前年同期(702万t)比▲5~▲11万tにあたる。
需給見通しはまず、2022年6月末の民間在庫量を7月指針から1万t(正確には2,000t)上方修正の「218万t」と確定した上で、9月25日現在の4年産主食用米生産量670万3,000tを当てはめた。
また、令和4/5年の需要見込みは今回も幅を持たせて提示した。「下限」にあたる691万t(690万9,000t)は、2018年の11月指針以降採用している手法を踏襲。過去の需要実績をその年ごとの人口で除して割り出した1人当たり消費量をトレンド(回帰式)で推計した(55.4kg)上で、更新された人口推計値(2022年9月1日現在)を乗じて算出した。
一方の需要見込み「上限」は、昨年に引き続き卸が対象の販売動向調査結果を活用。今年7~9月の販売量99万1,000tは前年同期比「+1.6%」にあたる。そして令和3/4年の市場流通見込み「578万t」の販売量が1.6%増加すると仮定すれば、「+約9万t」の需要増に相当する。なお、農水省は増加要因を「行動制限が長期化した昨年と比べると、特に中食・外食などで一定程度の回復が見込めるほか、インバウンドの増加、物価高の中で小麦価格の上昇なども影響を与える可能性がある」(農産局企画課・三野敏克課長)と推測している。
前年通りの算定方法ならば、この+9万tにあたる700万tをそのまま上限として設定していたが、今回は価格変動も考慮した。相対取引価格は4年産(9月末時点)が13,961円、対する3年産(年間平均)が12,819円で、+1,142円という4年産の上昇が需要量に与える影響を推計すると、「▲約3万t」の見込み。そこで、下限の691万tに「+9万t」「▲3万t」を加減し、「697万t」を上限として設定した。この結果、来年(令和5年)6月末在庫は「191~197万t」となる見通しだ。
そして、ここから先の算出はやや異なる。例年は再来年(今回なら令和6年)6月末在庫を「200万t」などと仮置いた上で、そこから逆算して翌年産生産量を導き出していた。しかし今回、トレンド需要減の約10万tを考慮すると、5年産が「4年産と同水準の作付面積」になると仮定しても生産が需要を10万t超下回るため、在庫よりも先に、「4年産と同水準の作付面積」にあたる5年産生産量「669万t」を設定。令和5/6年の需要量見込みは、従来通り1人当たり推計消費量と総人口推計減少率から「680万t」と導き出した。これによって、再来年(令和6年)6月末在庫は自動的に「180~186万t」となる。
なお、4年産の作付面積を5年産に援用しているにも関わらず生産量に±1万tの差異がある(4年産670万t・5年産見込669万t)のは、算出に用いた単収が異なるため。4年産は9月25日現在1.7mm収量、5年産は平年収量で、豊凶変動の影響を回避する目的とみられる。
4年産と5年産の作付面積を同水準と仮定したことについて、三野課長は前日の記者向け説明会で、「4年産の内訳をみると、例えば新市場開拓用米(主に輸出用米)は伸びておらず、麦・大豆も定着性・収益性・輸入依存度を考えると(さらに)しっかり伸ばす必要がある。4年産ではかなりの面積に取り組んでいただいたが、5年産でも同水準の転換をするのはそう簡単ではない」と話し、“同水準”が気の緩みに繋がることへの警戒感を示した。
また食糧部会では、備蓄運営・輸入方針についても例年通り了承された。
会計検査院から見直しを求められている備蓄米の政府買入とTPP11(豪州)枠SBSとの関係(9月21日付既報)だが、直近の5年産備蓄買入でのCPTPP枠設定は通常通りの模様だ(今後の見直しの詳細は「検討中」)。来年6月末までに約13~21万t(主に平成29年産在庫)をエサ処理し、来年6月末備蓄米在庫は91~99万tを維持する。また、SBS輸入予定数量は、WTO枠10万tを継続、TPP11枠は6,480t(前年度比+240t)に増える。
〈米麦日報2022年10月21日付〉